物質にX線を照射すると、原子の周りにある電子によってX線は散乱されます。結晶のように原子が規則正しく配列されている場合、散乱されたX線は原子の周期的な配置によって干渉され、特定の方向で強め合う回折と呼ばれる現象を生じます。
 X線回折法(XRD)は、この回折が生じる角度(回折角)と強度を回折パターンとして記録し、物質の結晶構造を調べる手法です。
 最も一般的に用いられるのは粉末X線回折(pXRD)で、データベース検索による試料中の結晶相同定に用いられます。
 当社では5軸ゴニオメーター搭載、高出力9kWのX線回折装置を保有しております。二次元検出器を搭載しており、インプレーン軸により試料面外方向だけでなく試料面内方向にも検出器が可動するのが特徴で、粉末試料のほか薄膜などの結晶方位に配向性のある試料の分析に適しています。
装置外観
 
 
保有装置概要
	
		
			| 型式 | 
			: | 
			リガク製 多目的X線回折装置 SmartLab 9kW | 
		
		
			| X線源 | 
			: | 
			回転陰極式Cuローターターゲット (出力:45kV・200mA、9kW) | 
		
		
			| 光学系 | 
			: | 
			集中法、平行ビーム法 (薄膜法)、集光ビーム法、微小部測定 | 
		
		
			| 検出器 | 
			: | 
			0次元、1次元、2次元検出器(HyPix-3000) | 
		
		
			| オプション | 
			: | 
			X-Y可動ステージ、あおり軸可動ユニット 
			インプレーンアーム(5軸ゴニオメーター) 
			キャピラリー回転ユニット(粉末・液体試料の透過測定) 
			結晶モノクロメーター(高分解能測定) 
			ドーム型加熱ステージ(室温~1100℃) 
			小角・超小角散乱測定ユニット | 
		
	
 
 
 
 
測定項目
● 粉末試料の定性分析
 得られる回折ピークのパターンからライブラリ検索を行い、結晶相の定性・組成分析を行います。定性には蛍光X線分析による元素情報が必要となる場合があります。
 特定の結晶面でへき開する鉱物試料など、反射法による測定では配向性の影響を受ける場合、キャピラリー回転ユニットを用いた透過測定により配向性の影響を抑えた測定が可能です。
● 微小部測定
 微小領域に集光したX線を照射することで、微小部のX線回折パターンについて測定を行います。(垂直入射時焦点サイズ約0.1mm~)
● 薄膜XRD測定
 斜入射測定(2θ/ω)によるOut of Plane測定のほか、インプレーンゴニオメーターを用いたIn-Plane測定に対応致します。
● in-situ 高温XRD測定
 加熱温度を変化させながらXRD測定を行うことで、結晶の相変化などを捉えることができます
● 極点測定
 回折角を固定し、試料を傾斜・回転させながら測定することで特定の回折角に対応する格子面の空間的分布を観測できます。
● X線反射率法(XRR)
 小角入射したX線が膜の内部で屈折・干渉する現象を用いて、設定した試料モデルから薄膜各層の厚さ、密度、ラフネス(表面・界面粗さ)を求めます。
 ● 逆格子マップ測定
 X線反射波の強度分布を逆格子空間で二次元表示する測定法です。
 逆格子空間で表現することにより、視覚的に結晶の格子定数の揺らぎや結晶面の傾きなどを捉えることができます。
● 小角散乱測定(SAXS)
 材料中の微小な空隙・粒子による密度差によって生じるX線の弾性散乱を測定します。設定した試料モデルから、細孔径分布などを推定できる場合があります。