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プラスチックに吸着した化学物質の調査

概要

プラスチックには環境中の化学物質を吸着しやすい性質があるため、生物がマイクロプラスチックを飲み込むことによる様々な影響が懸念されており、プラスチックが媒介する化学物質曝露の影響が調査されています。

化学物質の運び屋としての機能

図1.プラスチックが媒介する化学物質曝露の一例
(ベクター効果:「化学物質の運び屋」としての機能)

プラスチックに吸着した化学物質を調べる

マイクロプラスチックに吸着・含有している化学物質を調べることが可能です。

  • 分析対象の化学物質を絞ったターゲット分析
  • 化学物質の種類を調べるノンターゲット分析

 など、お客様の課題に適した分析プランをご提案します。

生物影響を調べる

プラスチックに吸着した化学物質が生体内でどの程度離脱するのか、実験的に調べることが可能です。
当社は、「海洋プラスチックごみ問題」の解決の一助とすべく、市場導入が進められている海洋生分解性プラスチックのベクター効果(図1)について、研究しています。

【ベクター効果を調べる実験フロー】

(1)化学物質を添加した水の中にプラスチックを入れ、プラスチックに吸着する化学物質の量を調べます。
(2)化学物質が吸着したプラスチックを人工消化液(魚の消化液を模したもの)に移し、化学物質がどのくらい脱離するかを調べます。

 

  • プラスチックに収着する化学物質の量を調べる





  • 矢印
  • 化学物質が収着したプラスチックを疑似消化液に移し、どのくらい脱離するかを調査

図2. 実験の概念図

(3)(1)と(2)からベクター効果の程度を解析します。

 当社では、これらの結果を

  • バージン材(分解前)と分解途中の海洋生分解性プラスチック(図3)を比較
  • 海洋生分解性プラスチックと非分解性プラスチック(ポリエチレン等)を比較

した研究を進めており、生分解性プラスチックのライフサイクル全体を考慮した情報のご提供が可能です。
生分解性プラスチックは、分解過程で化学物質の吸着特性が変化する可能性があります。

  • 光学顕微鏡で観察したバージン材(分解前)の生分解性プラスチック

    バージン材(分解前)の生分解性プラスチック





  • 矢印
  • 学顕微鏡で観察した分解途中の生分解性プラスチック

    分解途中の生分解性プラスチック
    (生分解で浸食された凹凸が多数観察される)

図3. 光学顕微鏡を用いて観察した分解前後の生分解性プラスチック

分析装置
分析装置

図4 使用する分析装置の一例
左:トリプル四重極型ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS/MS)
右:高速液体クロマトグラフ-質量分析計(LC-MS/MS)

関連情報

実績

  • 八十島 誠、苗田 千尋、藤田 遼、中尾 隆美、峯 孝樹、嶽盛 公昭
    :分解性 / 非分解性プラスチックへのPAHsの吸着と胆汁酸への脱離
    第59回日本水環境学会年会 2025年3月17日~19日
  • Measurement of monomers and oligomers (≤20mer) as intermediates using LC–Orbitrap MS from marine biodegradation of poly(3-hydroxybutyrate-co-3-hydroxyhexanoate) in laboratory
    Makoto Yasojima, Kana Kuroishi-Kawabe, Chihiro Nouda-Ibushi, Ryo Fujita, Takaki Mine, Hiroaki Takemori, Masao Kunioka
    Polymer Degradation and Stability Volume 232, February 2025, 111166
    https://doi.org/10.1016/j.polymdegradstab.2024.111166
    論文の概要(日本語)はこちら
  • 八十島 誠、苗田 千尋、藤田 遼、峯 孝樹、嶽盛 公昭
    :質量分析は海洋生分解性プラスチックの分解を捉えられるか?
    第27回水環境学会シンポジウム 2024年9月11日~13日
  • 八十島 誠、苗田 千尋、藤田 遼、中尾 隆美、峯 孝樹、嶽盛 公昭
    :分解途上の海洋生分解性プラスチックへのPAHの吸着と胆汁酸への脱離
    第27回水環境学会シンポジウム 2024年9月11日~13日
  • 黒石佳奈、苗田千尋、江頭佳奈、峯孝樹、嶽盛公昭、八十島誠
    :海洋生分解性プラスチックの生分解度と分解生成物量の関係
    第26回日本水環境学会シンポジウム 2023年9月20日~22日
  • 黒石佳奈、苗田千尋、江頭佳奈、森岡千香子、峯孝樹、嶽盛公昭、八十島誠
    :生分解度測定法の高度化を目指した海洋生分解性プラスチックの生分解度指標となる分解生成物の探索
    第2回環境化学物質3学会合同大会 2023年5月30日~6月2日
  • 黒石佳奈、苗田千尋、江頭佳奈、森岡千香子、藤原英里奈、峯孝樹、嶽盛公昭、八十島誠
    :質量分析を用いた海洋生分解性プラスチックの分解過程における特性変化に関する研究
    第57回日本水環境学会年会 2023年3月15日~17日
  • 苗田千尋、黒石佳奈、藤原英里奈、江頭佳奈、森岡千香子、嶽盛公昭、八十島誠
    :海洋生分解性プラスチックの分解メカニズムの解明および安全性評価に関する研究
    島津評論、Vol.79[1・2], 39~48(2022)
  • 黒石佳奈、苗田千尋、江頭佳奈、嶽盛公昭、八十島誠
    :生分解メカニズム解明に向けた海洋生分解性プラスチックの分解生成物の定性・定量評価
    第25回日本水環境学会シンポジウム  2022年9月6日~7日
  • 黒石佳奈、苗田千尋、藤原英里奈、森岡千香子、江頭佳奈、嶽盛公昭、八十島誠
    :新たな生分解度測定法の開発を目指した海洋生分解性プラスチックの分解生成物の定量、
    第56回日本水環境学会年会、2022年3月16日~18日
  • 黒石佳奈、森岡千香子、江頭佳奈、嶽盛公昭、八十島誠
    :海洋生分解性プラスチックの分解生成物の定量・前処理条件の検討、
    第24回日本水環境学会シンポジウム、2021年9月14日~15日
  • 江頭佳奈、友野卓哉、嶽盛公昭、八十島誠
    :LC-TOFMSを用いた生分解性プラスチックの分解生成物の探索、
    京都大学環境衛生工学研究会第43回シンポジウム、2021年7月30日~31日
    *優秀ポスター賞受賞

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