概要
生分解性プラスチックの分解過程を視える化する技術
概要
生分解性プラスチックの分解中間物を分析する技術を開発
生分解性プラスチック素材の開発支援を目的として、分解過程で低分子化した分解中間物(モノマーやオリゴマー)を質量分析装置で測定する技術を開発しました。
本技術のフォーカス範囲である分解中間物の情報は、従来の生分解性評価指標である、生物化学的酸素要求量(BOD)や二酸化炭素発生量、重量減少のデータからはわからない「分解メカニズム」の考察に有用です。
図 生分解性プラスチックの分解過程の模式図
測定試料の調製方法として、
・規格に準じた生分解度試験(例:海洋生分解度試験)
の他に、
・植種源として特定の微生物株や酵素を用いた分解実験
・化学分解実験(例:アルカリ加水分解)
など、さまざまな分解実験の試料について分解物の測定が可能です。
本技術は当社独自の技術です(特許出願中)。素材や目的に応じて最適な分析プランをご提案します。お気軽にご相談ください。
当社の取り組みが島津製作所のオウンドメディア「SHIMADZU TODAY」に掲載されました。
世界初!「海洋生分解性プラスチック」の分解プロセスを解明 | SHIMADZU TODAY | 島津製作所
本技術は国際誌(査読付)に受理・公開されました。
Polymer Degradation and Stability Volume 232, February 2025, 111166
(https://doi.org/10.1016/j.polymdegradstab.2024.111166)
タイトル
Measurement of monomers and oligomers (≤20mer) as intermediates using LC–Orbitrap MS from marine biodegradation of poly(3-hydroxybutyrate-co-3-hydroxyhexanoate) in laboratory
ハイライト
- PHBHの海洋生分解によって生じる分解中間物をLC-Orbitrap MSで分析しました。
- 分解途上のPHBHフィルム表面および付着したバイオフィルムから最大11量体までの分解中間物を確認しました。
- 分解中間物におけるモノマー組成から、特定のモノマーの蓄積がないことを確認しました。
- オリゴマーの速やかな酵素分解によって生成したモノマーが、バイオフィルム内に多く存在していることがわかりました。
要約
微生物ポリエステルであるPoly (3-hydroxybutyrate-co-3-hydroxyhexanoate) (PHBH) の海洋生分解における分解中間物をLC-Orbitrap MSで検出・定量しました。
分解途上のPHBHフィルム表面に付着したバイオフィルムを溶媒抽出し、フィルム表面およびバイオフィルムから最大11量体までの分解中間物を確認しました。3回の生分解試験の結果、試験9日目における生分解度と分解中間物量は、1回目の試験では13 %と9.2 g、2回目の試験では30 %と13 g、3回目の試験では52 %と19 gでした。酵素分解と無機化速度に影響を与える微生物叢・量が試験海水間で異なったため、生分解度と分解中間物量が試験間で異なったと考えられます。また、3HBモノマー:3HHモノマー:オリゴマー(3HB換算)の比率(および総量)は、1回目の試験では67:5:28 (9.2 μg)、2回目の試験では69:5:26 (13 μg)、3回目の試験では79:7:14 (19 μg)でした。分解中間物にモノマーが多く含まれていたことから、オリゴマーが酵素分解によって速やかにモノマーまで分解されるものの、モノマーはゆっくりと無機化・代謝されることが示唆されました。間隙水(バイオフィルム内の自由水)中で検出された分解中間物はモノマーのみでした。また、試験海水において検出下限値以上で検出した分解中間物はありませんでした。
分解中間物におけるモノマー組成(3HB:3HH)は、製品中の組成と一致しており、特定のモノマーが選択的に蓄積していないことが示されました。
※この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務(JPNP20008)の結果得られたものです。
委託業務の公開資料はこちら
研究評価委員会「海洋生分解性プラスチックの社会実装に向けた技術開発事業」(終了時評価)分科会 | NEDO
関連情報
実績
- 藤田 遼1・苗田 千尋1・綿野 哲寛2・峯 孝樹1・嶽盛 公昭1・八十島 誠1
1株式会社島津テクノリサーチ、2静岡県環境衛生科学研究所
:生分解過程におけるPBSAの分解中間物測定~低分子化プロセスの解明に向けて~
第74回高分子討論会 2025年9月16日~18日 - 八十島 誠 講演
「海洋生分解性プラスチックの分解過程の可視化と環境安全性の評価~素材開発と市場拡大に向けたヒント~」
第74回高分子討論会フォーカスセッション『サステナブル社会に貢献する分析装置』 2025年9月17日 - 八十島 誠:生分解性プラスチックの分析・評価の最新事例<質量分析での挑戦> 「日本プラスチック工業連盟誌プラスチックス」29-32, (2025.10)
- 八十島 誠、苗田 千尋、藤田 遼、中尾 隆美、峯 孝樹、嶽盛 公昭
:分解性 / 非分解性プラスチックへのPAHsの吸着と胆汁酸への脱離
第59回日本水環境学会年会 2025年3月17日~19日 - Measurement of monomers and oligomers (≤20mer) as intermediates using LC–Orbitrap MS from marine biodegradation of poly(3-hydroxybutyrate-co-3-hydroxyhexanoate) in laboratory
Makoto Yasojima, Kana Kuroishi-Kawabe, Chihiro Nouda-Ibushi, Ryo Fujita, Takaki Mine, Hiroaki Takemori, Masao Kunioka
Polymer Degradation and Stability Volume 232, February 2025, 111166
https://doi.org/10.1016/j.polymdegradstab.2024.111166
論文の概要(日本語)はこちら - 八十島 誠、苗田 千尋、藤田 遼、峯 孝樹、嶽盛 公昭
:質量分析は海洋生分解性プラスチックの分解を捉えられるか?
第27回水環境学会シンポジウム 2024年9月11日~13日 - 八十島 誠、苗田 千尋、藤田 遼、中尾 隆美、峯 孝樹、嶽盛 公昭
:分解途上の海洋生分解性プラスチックへのPAHの吸着と胆汁酸への脱離
第27回水環境学会シンポジウム 2024年9月11日~13日 - 八十島誠、黒石佳奈、苗田千尋、藤田遼、峯孝樹、嶽盛公昭
:海洋生分解性プラスチック分解中間物の測定および分解メカニズムに関する研究
第3回環境化学物質合同大会 2024年7月2日~5日 - 黒石佳奈、苗田千尋、江頭佳奈、峯孝樹、嶽盛公昭、八十島誠
:海洋生分解性プラスチックの生分解度と分解生成物量の関係
第26回日本水環境学会シンポジウム 2023年9月20日~22日 - 黒石佳奈、苗田千尋、江頭佳奈、森岡千香子、峯孝樹、嶽盛公昭、八十島誠
:生分解度測定法の高度化を目指した海洋生分解性プラスチックの生分解度指標となる分解生成物の探索
第2回環境化学物質3学会合同大会 2023年5月30日~6月2日 - 黒石佳奈、苗田千尋、江頭佳奈、森岡千香子、藤原英里奈、峯孝樹、嶽盛公昭、八十島誠
:質量分析を用いた海洋生分解性プラスチックの分解過程における特性変化に関する研究
第57回日本水環境学会年会 2023年3月15日~17日 - 苗田千尋、黒石佳奈、藤原英里奈、江頭佳奈、森岡千香子、嶽盛公昭、八十島誠
:海洋生分解性プラスチックの分解メカニズムの解明および安全性評価に関する研究
島津評論、Vol.79[1・2], 39~48(2022) - 黒石佳奈、苗田千尋、江頭佳奈、嶽盛公昭、八十島誠
:生分解メカニズム解明に向けた海洋生分解性プラスチックの分解生成物の定性・定量評価
第25回日本水環境学会シンポジウム 2022年9月6日~7日 - 黒石佳奈、苗田千尋、藤原英里奈、森岡千香子、江頭佳奈、嶽盛公昭、八十島誠
:新たな生分解度測定法の開発を目指した海洋生分解性プラスチックの分解生成物の定量、
第56回日本水環境学会年会、2022年3月16日~18日 - 黒石佳奈、森岡千香子、江頭佳奈、嶽盛公昭、八十島誠
:海洋生分解性プラスチックの分解生成物の定量・前処理条件の検討、
第24回日本水環境学会シンポジウム、2021年9月14日~15日 - 江頭佳奈、友野卓哉、嶽盛公昭、八十島誠
:LC-TOFMSを用いた生分解性プラスチックの分解生成物の探索、
京都大学環境衛生工学研究会第43回シンポジウム、2021年7月30日~31日
*優秀ポスター賞受賞 - 藤原英里奈、苗田千尋、嶽盛公昭、八十島誠
:石油系プラスチック及び海洋生分解性プラスチックへの化学物質収着実験条件の最適化並びに収着特性
第29回環境化学討論会 2021年6月1日~6月3日
20231010・20190616・20241010