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異物分析

2017年09月29日更新

概要

 いかに厳格な検査や品質管理を行っても、ミスや事故による異物混入などの事象は避けて通れません。輸入品のみならず、国産品においても、大きな問題が発生しています。近年、カメラ付き多機能携帯電話とソーシャルネットワーク(SNS)等によって、様々な異物混入等の情報が広がり、問題が大きくなったことは記憶に新しいところです。

 社内に異物検査用の分析機器をそろえ、日常的に検査していただくことがベストですが、それには、多種の分析機器が必要ですし、これらの適切な操作とデータの解析ができる専門の技術者も必要になります。このような時に、お役に立てるのが当社のような外部の分析機関です。当社では、経験豊富な技術者がその異物に最適な分析機器、最適な分析方法によって、異物が「何か」を迅速に解析します。

 当社では次のような流れで異物分析を行います。

分析・試験方法

1.情報収集

 当社は、異物の性状「これは何なのか?」と、原因究明「どうして発生したのか?」といった情報をいち早くご提供することを目指しています。「短期間」「正確」に解析するためには、効率よく進めることが重要です。異物は微小なものであることが多く、また、1個だけの場合も少なくありません。従って、下記のメニューの中からもっとも適した分析方法を適確にすすめていきます。異物が発生した状況、組成、周辺の環境などの情報が解決への手がかりとなります。
 また、異物の発生しなかった対照品のご提供もその手助けになります。

2.外観観察

 異物解析をする際に、最初に行うのが観察です。目視で異物が確認された検体について顕微鏡による拡大観察を行い、その異物の色、形状、付着状況などを確認します。 異物の存在状態によって、その後に行う機器分析の装置の選択が変わってくることもあるため、注意深く観察を行う必要があります。単に異物の外観を観察するだけでなく、存在している部位に着目することも重要です。 製品の表面、内部にあるのか、付着なのか?擦りつけられたのか?染みこんでいるのか?埋没しているのか?などです。外観観察から、その対象物についての多くの情報を得ることが出来ます。
 面倒な前処理等を必要としないデジタルマイクロスコープでの観察は、分析を開始する前の調査として有効な手段の一つです。

<デジタルマイクロスコープ>

デジタルマイクロスコープ

 一般的な光学顕微鏡とは異なり、画像はズームレンズとCCDカメラでデジタル化され、モニター上でサンプル表面を観察します。このため、「明暗が混在している画像」や「階調が乏しい画像」などをデジタル処理により鮮明に捕らえることが出来ます。

※分析事例はアプリケーションズをご覧ください。
 「食品中の異物(虫)の観察」「電子基板に付着した異物の分析」「薬品中の異物分析

観察例1 細粒中に確認された異物

細粒中の異物 混入が疑われるウレタンフォーム
観察例1

異物

観察例1

表面

観察例1

小片化したもの

 異物は、テトラポッドのような脚がある構造をしています。発泡体の樹脂には、このような構造を持つものがあります。
 混入が疑われるウレタンフォームの一部を切り出して拡大観察したところ、異物の外観と類似していました。

観察例2 PETボトルに確認された異物

観察例2
観察例2

PETボトルに確認された白色異物

観察例2

で切断後に拡大

白色物を含んだPET樹脂の点線部の断面を観察したところ、中央部付近に異物が確認されました。

観察例3 繊維状異物の識別

 繊維は、異物としてよく確認されます。
 異物の外観(形状、質感等)から繊維の判別が可能な場合もあります。

観察例3

綿

観察例3

観察例3

レーヨン

綿には撚りがみられており、麻には節のような構造が確認出来ます。 レーヨンは、表面が平滑な様子が確認されており、
 人工的に造られた化学繊維の様相を示しています。

3.異物の同定

 情報と観察結果をもとに、異物の性状を大きく4つに分け、それぞれにもっとも適した分析方法をすすめていきます。
 異物が混合物である場合も多く、これらの分析方法を組み合わせて、「異物は何なのか」をつきとめます。

3-1.金属片などの無機物(金属、石、ガラス)

 

3-1.金属片などの無機物(金属、石、ガラス)

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金属のような異物
 形態観察の結果、異物が金属であることが予想された場合、下記のEDXなどで元素分析を行います。

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<血液確認試験>

 EDXは試料にX線を照射し発生する蛍光X線のエネルギーを分析することで、試料を構成する元素の種類や含有量を調べる装置です。非破壊で固体・粉体などの元素分析ができます。
 試料がさらに小さい場合、μEDXを用います。微小領域(50μm)のみにX線を照射できます。また、多元素同時マッピングにより元素の分布状態の確認ができます。

 ※分析事例はアプリケーションズをご覧ください。
  「錠剤に付着した異物(無機物)の分析」「薬品中の異物分析

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微小な異物
 異物が微小な場合、EDXを備えた走査型電子顕微鏡で、試料形状を確認しながら元素分析を行います。

<走査型電子顕微鏡(SEM-EDX)>

 試料に電子線を照射した際に発生する2次電子を利用して観察を行い、同時に発生する特性X線を検出して元素の定性分析や、元素の分布状態が確認できます。

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石、ガラスのような異物
 形態観察で石やガラスのような異物と思われる場合、偏光顕微鏡やEDXなどを組み合わせて判断します。

<偏光顕微鏡>

 石、ガラスのような異物の場合は、金属や鉱物用の偏光顕微鏡にて形状を観察し、上記のEDXにてSiを確認します。

3-2.合成物系の有機物(プラスチック、ゴム、繊維)

 

3-2.合成物系の有機物(プラスチック、ゴム、繊維)

 形態観察の結果、樹脂、繊維などの有機物系の異物であると推定された場合、主にFT-IRやラマンによって化合物の同定を行います。

表 FT-IR、ラマンの特徴

  長所 短所
FT-IR
1. ライブラリーが豊富
2. エネルギーが弱いため試料の損傷がほとんどない
1. 吸収が強いため希釈や薄膜化などの試料の前処理が必要なことが多い
2. ガラス容器内の試料を直接測定できない
3. 水分の影響が大きい
4. カーボンの吸収が強いため黒色試料の測定が苦手
ラマン
1. 希釈や薄膜化などの試料の前処理が不要
2. ガラス容器内の試料を直接測定できる
3. 水溶液の測定が可能
4. 黒色異物の測定が可能
5. 空間分解能が高い(1μm程度)
1. ライブラリーが少ない
2. 蛍光の影響を受けやすい
3. レーザーによる試料の損傷の可能性がある

 FT-IRを中心に有機物の定性を行います。

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<フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)>

 フーリエ変換赤外分光法(FT-IR、 Fourier Transform Infrared Spectroscopy)は化合物分子の赤外線吸収スペクトルを利用して化合物を定性・定量する測定法です。
豊富なライブラリーがあるため、プラスチック、樹脂、合成繊維など、様々な有機物の同定が可能です。

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FT-IRスペクトル(異物の同定)

※分析事例はアプリケーションズをご覧ください。
 「錠剤に付着した黒色異物の分析」「電子基板に付着した異物の分析
 「野菜の表面に発生した白色粉の分析
 「繊維状異物の判別」「薬品中の異物分析」 「ガーゼ付着物の分析

 上記のFT-IRの外にラマン分光光度計でも有機物の定性が可能です。
 当社では赤外分光法とラマン分光法の長所・短所を使い分け、的確な方法で異物分析に対応しています。

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<顕微ラマン分光光度計>

  ラマン分光法は物質にレーザーを照射し、散乱される光を分光器によって観測する分析法です。
 非接触・非破壊にて、分子構造解析、結晶構造解析、物質の化学組成の同定などが可能ですので、溶液中の異物分析などに応用されます。

 ※分析事例はアプリケーションズをご覧ください。
  「錠剤に付着した黒色異物の分析
  「錠剤に付着した異物(無機物)の分析

ポリマーの解析には熱分解GC-MSが向いています。

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<熱分解GC-MS>

 熱分解GC-MSは、微量の高分子材料を小型加熱炉内で熱分解後、得られた熱分解生成物をオンラインでGCMS分析する手法です。
熱分解生成物の組成は、元となる高分子構造を反映するため、樹脂種の同定や、高分子構造推定の効果的な分析手段となります。

 ※分析事例はアプリケーションズをご覧ください。
  「熱分解-GCMSによる高分子材料の構造推定
  「熱分解-GCMSによる高分子材料の耐候性評価

3-3.生物系の有機物(毛、血液、カビ)の同定

 

3-3.生物系の有機物(毛、血液、カビ)の同定

毛のような繊維
 繊維の中でも、毛は表面を顕微鏡観察すれば、鱗様の模様が確認できます。さらに断面から動物種を推定することができます。

爪、皮膚片のような異物
 爪、皮膚片など、タンパク質含有量の多い試料ならば、微量で推定が可能です。

カビのような異物
 質量分析装置(MALDI-TOFMS)微生物同定システムにより微生物種を推定します。 「医薬品製造に関わる異物分析

3-4.特定の鑑別目的での解析

 

3-4.特定の鑑別目的での解析

 特定の鑑別目的に合致した各種試験で鑑定を行います。

血液か否かの鑑定
 衣服などに付着したしみが血液か否かをイムノクロマトグラフィにより鑑定します。

<血液確認試験>

 異物が血液であれば、血液のヘモグロビンが抗ヒトヘモグロビン抗体に結合することにより、陽性反応が検出されます。
これにより、異物が血液なのか否かを検査することができます。

加熱されているか否かの鑑定
 異物が加熱されているか否かは、異物がどの段階で混入したのかを推定する重要な情報となります。
 当社ではカタラーゼ試験により異物が加熱段階の前後のいずれかで混入したものかを判断いたします。

<カタラーゼ試験>

 カタラーゼは様々な生物の細胞に存在し、過酸化水素を不均化して酸素と水に変える反応を触媒する酵素です。
この性質を利用し、異物に過酸化水素を添加したとき、泡が発生すれば加熱されていない異物、発生しなければ加熱されている異物と判断できます。

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