PFASスクリーニング|TF・AOF・EOFとTOP Assay
PPWR(EU包装規則)のPFAS規制|3つの限度値と適合確認
概要
2026年8月12日からEU市場へ初めて投入される食品接触包装にPFASの濃度制限がかかりました。EU包装・包装廃棄物規則(PPWR、規則(EU) 2025/40)第5条(5)によるものです。適用日前にすでに市場投入された包装は撤去不要ですが、適用日以降に初めて市場投入される包装は、製造時期にかかわらず限度値への適合が必要です1。
対象は食品に触れる包装のすべてです。箱や袋だけでなく、蓋、シール材、ラベルも包装に含まれるため、制限値はこれらを合わせた包装全体にかかります2。また、規制されるのは食品へ溶け出す量ではなく、包装そのものに含まれる濃度です1。
3つの制限値
次の3つをすべて満たす必要があります1。ひとつでも超えるとEUで販売できません。
3つの制限値は、それぞれ対象が異なるため、確認に使う分析も異なります。
| 制限値 | 測るもの | 用いる分析 |
|---|---|---|
| 25 µg/kg | PFAS 1物質あたりの濃度 | 個別分析 標準物質のある物質を、LC-MS/MSで物質名ごとに定量します。 |
| 250 µg/kg | 測定したPFASの合計 (前駆体を分解させた分を含む) |
個別分析+TOP Assay TOP Assayは、試料を酸化して前駆体をPFASに変えてから測る手法です。 |
| 50 mg/kg | 包装に含まれるフッ素の総量 (フッ素樹脂を含む) |
総フッ素 包装を燃やし、出てきたフッ素をまとめて測ります。物質名は分かりません。 |
µg/kg は10億分の1、mg/kg は100万分の1にあたる単位です。25 µg/kg は0.025 mg/kg にあたります。
PPWRは、測るべき物質を指定していません
25 µg/kgの条文は、対象を「いずれか1物質のPFAS」と定めています。どの物質を測るかは、依頼者と試験所が決めます。
実務ではPFOA・PFOS・PFHxSなどを中心に据えることが多いものの、測定項目は試験所ごとに異なります。項目が違えば同じ包装でも結果が変わるため、どの物質を測ったのかを技術文書に残しておく必要があります。
フッ素樹脂(PTFEなど)は、上の2つの対象外です。分子が大きく、個別分析では検出できないためです。ただし燃やせばフッ素として出てくるので、総フッ素では検出されます。
意図して加えたPFASだけでなく、意図せず混入したPFASも対象です1。規制されるのは、包装に含まれている量そのものです。
確認の手順
PPWRは、食品に触れる包装に含まれるPFASについて3つの限度値を定めています1。統一された分析法がまだないため、欧州委員会はガイダンスで、適合を確認するための段階的な手順を示しています2。まず総フッ素(TF)を測定し、50 mg/kg未満であれば、現時点の知見では適合とみなしてよい、という内容です2。
当社では、第1段階の総フッ素から始めることを基本としています。
図1:段階的アプローチ。各段階の判定条件と出口を示す。2
第1段階:総フッ素(TF)
包装に含まれるフッ素を、燃焼イオンクロマトグラフ(CIC)でまとめて測定します2。PFASなどの有機フッ素だけでなく、無機フッ素も含めた値です。総フッ素が50 mg/kg未満であれば、ガイダンス上は適合とみなされ、ここで確認を終えます。50 mg/kg以上であれば、第2段階に進みます2。
第2段階:有機フッ素と無機フッ素の切り分け
第1段階で総フッ素が50 mg/kg以上だった場合、そのフッ素がPFASによるものか、無機フッ素によるものかを確認します。ガイダンスでは熱分解GC/MSなどが例示されています2。有機フッ素が50 mg/kg未満であれば、ガイダンス上は適合とみなされ、ここで確認を終えます。50 mg/kg以上であれば、第3段階に進みます2。
第3段階:個別分析とTOP Assay
第2段階で有機フッ素が50 mg/kg以上だった場合、個別分析とTOP Assayで25 µg/kgと250 µg/kgの限度値を確認します2。250 µg/kgの条文には、必要に応じて前駆体を分解してから測る、という記載があります1。前駆体とは、環境中や試験の条件でPFOAやPFOSなどに変わる物質のことです。TOP Assayでは、試料を酸化して前駆体をPFASに変え、増えた分から前駆体の量を見積もります4。
第1段階で止めてよいのか
総フッ素が50 mg/kg未満であれば、ガイダンスはそれ以上の測定を求めていません2。
ただし、規則が求めているのは、包装に限度値以上のPFASが含まれていないことです1。何段階まで測ったかは問われません。当局が独自に測定し、個別のPFASが25 µg/kgを超えていれば、第1段階で止めていたとしても不適合になります。
第1段階で止める場合、測っていない範囲に問題がないという判断は、事業者自身が行うことになります。
「使っていない」でも混入する箇所
PPWRは、PFASが生じうる工程そのものを禁じてはいません。意図して使っていなくても制限値を超えることがあり、供給者の「意図的に使用していない」という確認だけでは適合を示せません2。ガイダンスは次の箇所に注意を促しています2。
図2:包装のどこにPFASが混入しうるか。意図して加えていなくても、加工や原料に由来して含まれることがある。2
| 箇所 | 内容 |
|---|---|
| 耐水・耐油の紙、板紙 | ピザ箱、ポップコーン袋、紙トレイなど。PFASの側鎖がポリマーに結合した形で使われることがあり、この側鎖は本体から外れて食品へ移りうると指摘されています。 |
| 印刷インキ | こすれに強くするためPTFEワックスが使われる場合があります。包装表面に印刷されていれば対象です。 |
| ポリエチレンフィルム | 押出成形の摩擦を減らす助剤としてPFASが使われることがあります。 |
| HDPE容器のフッ素化処理 | 中身が漏れにくくするため内面にフッ素ガスを作用させる処理です。この工程で低分子のPFASが生じ、食品へ出うると報告されています。添加物ではなく工程で発生します。 |
| 再生紙・再生板紙 | 再生繊維には以前の用途に由来するPFASが含まれるため、食品との直接接触は避けるよう勧められています。再生材の適用除外はありません。 |
紙の原料を段階別に調べた研究では、原料パルプから再生紙まで57試料を分析し、製造のどの時点でPFASが入るかが検討されています5。
原料由来か工程由来かで対策が変わるため、供給網のどこを確認すべきかを絞る手がかりになります。
試験報告書で確認しておくこと
総フッ素の測定には燃焼イオンクロマトグラフ(CIC)を用いますが、この方法は標準化されておらず、対応できる試験所は限られます。総フッ素の測定手法自体は複数あり、比較した研究も報告されています6。
技術的にも注意が要ります。燃焼の条件によって出てくるフッ素の量が変わり、紙やプラスチックの充填剤であるカルシウム塩や、添加剤のタルクが入っていると、結果が高くも低くも出ます3。試験所は通常、方法の詳細を開示しないため、別の試験所の結果と比べることが難しい状況です。
試験を依頼するときに
統一された方法がない以上、どの方法でどう測ったかを技術文書に残せるかが実務上の分かれ目になります。試験報告書に前処理条件・燃焼条件・ブランクの扱いが書かれているかをご確認ください。
まず総フッ素で調べたい、詳しく切り分けたい、どちらの段階からでも承ります。何から手を付けるべきか決めかねている状態でも構いません。
分析のご相談・お見積り
出典・参考資料
- European Parliament and Council. Regulation (EU) 2025/40 on packaging and packaging waste (PPWR), Article 5(5). Official Journal of the EU, 2025. PPWR本文。食品接触包装中PFASの3限度値(個別25 µg/kg・合計250 µg/kg・総PFAS 50 mg/kg)と、2026年8月12日からの適用を規定。
- European Commission. Commission Notice – Guidance document for Regulation (EU) 2025/40 on packaging and packaging waste (C/2026/3084). Official Journal of the European Union, C series, 2026. https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=OJ:C_202603084 PPWRの解釈を示す欧州委員会の告示。案(C(2026) 2151 final)は2026年3月30日に公表され、確定版は同年6月に官報C版に掲載。食品接触包装中PFASの適合確認について、総フッ素→有機・無機フッ素の切り分け→TOP Assayの段階的手順を示し、総フッ素が50 mg/kg未満であれば現在得られている知見に基づき適合とみなしうるとする。法的拘束力はない。
- AGRINFO. Substances of concern in food packaging: Per- and poly-fluorinated alkyl substances (PFAS). COLEAD, June 2026. https://agrinfo.eu/publications/ 欧州委員会ガイダンス(出典2)およびFAQを解説した文書。段階的アプローチ、総フッ素=有機+無機の関係、CICが標準化されていないこと、カルシウム塩やタルクによる測定への影響、供給網のリスク箇所を整理。EU資金による事業として公開。
- Houtz, E. F.; Sedlak, D. L. Oxidative conversion as a means of detecting precursors to perfluoroalkyl acids in urban runoff. Environ. Sci. Technol. 2012, 46 (17), 9342–9349. https://doi.org/10.1021/es302274g TOP Assayの原法。酸化により前駆体をPFCAへ変換し、酸化前後の差分から前駆体量を評価する手法を確立。
- Analysis of per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS) in raw materials intended for the production of paper-based food contact materials: evaluating LC-MS/MS versus total fluorine and extractable organic fluorine. Food Addit. Contam. Part A 2024, 41 (5). https://doi.org/10.1080/19440049.2024.2332334 紙系食品接触材料の原料57試料を、原料パルプから再生紙まで段階別に分析した査読論文。ターゲット分析では既知PFASの1%未満しか同定できないとして、CICによる総フッ素・EOFと比較。混入がどの段階で生じるかを検討。
- Total fluorine measurements in food packaging: How do current methods perform? Environ. Sci. Technol. Lett. 2019, 6 (2), 73–78. https://doi.org/10.1021/acs.estlett.8b00700 食品包装試料に対し、CIC・PIGE・INAAの3手法で総フッ素を測定・比較した査読論文。フッ素マスバランス(説明できないフッ素の割合)を評価する意義を論じる。
本ページは一次情報および査読論文に基づく解説を目的としたものです。規制の解釈および適合の判断は、各事業者の責任において行われるものであり、確定した要求事項については規則本文および各当局の最新の情報をご確認ください。記載の数値・規制状況は参照時点のものです。
2026/9/10 522