PFAS分析・測定|有機フッ素化合物の含有調査・受託分析
PFASスクリーニング|TF・AOF・EOFとTOP Assay
概要
PFAS(有機フッ素化合物)は数千種以上あるとされますが、個別分析(LC-MS/MS等)で一物質ずつ定量するには、物質ごとに標準物質(濃度が既知の基準サンプル)が必要です。標準物質が入手できるPFASはごく一部にとどまるため、個別分析だけでは、試料に含まれるPFASの全体像を捉えきれないという課題があります1,2。
この課題を補うのが、燃焼イオンクロマトグラフ(Combustion Ion Chromatography:CIC)などを用いたスクリーニング手法です。本ページでは、個別分析を補完する2つのアプローチをご紹介します。
① いま存在するフッ素を、総量で捉える(TF/AOF/EOF)
② 将来PFOA・PFOSなどに変わる前駆体を捉える
まずは、お気軽にご相談ください
TF・AOF・EOFとは
全フッ素(TF)から有機フッ素へと対象を絞り込み、その有機フッ素をどう捕集するかでAOFとEOFが分かれます。
| TF 全フッ素 Total Fluorine |
試料に含まれるフッ素を、有機・無機まとめて総量として測定する指標です。 まず全体像を把握するための入口となる測定です。有機・無機の区別はしません。 主な用途:フッ素の有無・総量の初期確認 |
| AOF 吸着性有機フッ素 Adsorbable Organic Fluorine |
有機フッ素を活性炭(GAC)に吸着させて捕集し、その活性炭を測定する指標です。 試料水を活性炭に通し、吸着した有機フッ素を燃焼イオンクロマトグラフ(CIC)で一斉に評価します。 捕集の担い手:活性炭(吸着) / 主な適用例:排水・地下水・環境水 など |
| EOF 抽出性有機フッ素 Extractable Organic Fluorine |
有機フッ素を固相抽出(SPE)して捕集し、その抽出液を測定する指標です。 試料をSPEカートリッジ(WAX等)に通し、溶媒で溶出した有機フッ素を同じくCICで一斉に評価します。活性炭を取り出す工程がなく、抽出液を個別分析へ回せる利点があります6。 捕集の担い手:SPE(抽出) / 主な適用例:製品・樹脂・土壌、水試料 など |
測定の流れ
全フッ素(TF)は「有機/無機」に大別されます。このうち有機フッ素を対象とし、活性炭に吸着させれば AOF、固相抽出(SPE)で抽出すれば EOFとして、いずれも燃焼イオンクロマトグラフ(CIC)で測定します。捕集の入口が違うだけで、その後の測定は共通です。
図:有機フッ素の捕集経路。活性炭に吸着させる場合はそのまま燃焼させ、固相抽出(SPE)の場合は溶媒で溶出した回収液を用います。捕集の手順は異なりますが、燃焼イオンクロマトグラフ(CIC)で測る点は共通です。
試料別の考え方
捕集方法(吸着/抽出)は自由に選べますが、実務では試料の性状と規格適合から、下図のような使い分けが目安になります。ご相談内容に応じて適した指標をご提案します。
図:典型的な使い分けの目安。無機フッ素は対象外。有機フッ素は、水試料なら活性炭吸着でAOF、固体試料なら溶媒抽出でEOFとするのが一般的です。※EOFは水試料にも適用できます。
| 調査したい内容・試料 | 主な指標 | 考え方 |
|---|---|---|
| 排水・地下水・環境水などにPFASが含まれないかを面的に確認したい | AOF | 水系試料の有機フッ素を一斉にスクリーニング。個別PFAS定量の前段として有効です。 |
| 製品・樹脂・部材・土壌などにPFASが含まれないかを調べたい | EOF | 固体から抽出した有機フッ素を評価。製品含有調査に適します。 |
| まずはフッ素の総量をおおまかに把握したい |
TF | 有機・無機を合わせた総量として測定します。 |
| PFOS・PFOAなど個別物質の濃度を定量したい | 個別分析 (LC/MS等) |
AOF/EOFは総量指標のため、物質ごとの濃度は個別分析で対応します。スクリーニングで陽性を確認後、個別分析へ進む流れが効率的です。 |
試料と目的に応じて適した手法をご提案します。お気軽にお問い合わせください
規格・位置づけ
水試料でAOFが選ばれるのには理由があります。活性炭を用いるAOFは、水系試料を対象に各国で標準化が先行しているためです。
関連する主な規格・方法(いずれも水系試料を対象)
DIN 38409-59(2022) 発行済
US EPA Method 1621(2024年1月) 発行済
ISO 18127:2026 2026年2月 発行
一方、EOFでは、水試料中の有機フッ素をSPE(WAX等)に保持させ、溶媒で溶出して測定する方法が一般的です。ターゲット分析と共通性の高い前処理を用いるため、ブランクを低く管理しやすいという利点があります。製品・樹脂・土壌などの固体試料では、試料中の有機フッ素をあらかじめ溶媒で抽出する必要があるため、EOFに基づく前処理が採用されます3。
なお、これら総フッ素系の指標(AOF/EOF)は「有機フッ素の総量」を捉える網羅的な手法であり、個別物質の特定はできません。目的に応じて個別分析(LC-MS/MS等)と組み合わせることで、より包括的な評価につながります1,2。
前駆体まで捉える TOP Assay
AOF/EOFが「いま存在する有機フッ素の総量」を捉えるのに対し、TOP Assay(酸化性前駆体総濃度分析)は「将来PFOA・PFOSなどに変わりうる前駆体」を評価するための手法です。とくに、AFFF(泡消火薬剤)・繊維・紙・撥水撥油処理品など、前駆体を多く含む試料で威力を発揮します4,7。
なぜ「前駆体」を測る必要があるのか
多くのPFASは、環境中で微生物分解や加水分解を受けても、最終的にペルフルオロカルボン酸(PFCA)やペルフルオロスルホン酸(PFSA)にたどり着き、そこで分解が止まります。炭素とフッ素の結合が非常に強く、これ以上は変換されないためで、環境分解というプロセスの終着点(ターミナル)です。PFOA・PFOSはその代表例です。PFASが「Forever Chemical(永遠の化学物質)」と呼ばれる理由は、PFCAやPFSAの安定性にあります8。
問題は、その手前にいる物質です。PFCA/PFSAではない有機フッ素化合物は、環境中で微生物がスルホン酸部位を代謝したり、アミド結合が加水分解したりして、少しずつ形を変えながら分解していき、その分解の果てにPFOAへ行き着くものが「PFOA関連物質」、PFOSへ行き着くものが「PFOS関連物質」です9。これらは製品にもともと含まれていたり、環境中で徐々にPFOA・PFOSを生み出したりします。
図:多様な前駆体は、環境中で少しずつ形を変えながら、最終的にPFOAなどのPFCA・PFSAへ収束する。この「行き先」から逆算して束ねた呼び方が「PFOA関連物質」。
「関連物質」は数え上げられない
「PFOA関連物質」とは、「分解するとPFOAになる物質」をまとめた呼び方です。行き先であるPFOAのほうから決めた呼び名なので、枠は決められても、その枠に入る物質を初めからすべて挙げることはできません。前駆体は種類が膨大なうえ、組成が非公開の製品も多く、環境中でどんな物質が存在するかを個別に特定するのは、原理的に困難な逆問題だからです2。
そこで発想を逆転させます。一つずつ物質を突き止める(順問題)のではなく、環境で起きる酸化的な分解を実験室で強制的に再現し、前駆体をまとめてPFCAへ変換してしまう。変換後に増えたPFCA量を測れば、「PFOAになりうるものが、どれだけあったか」を束として評価できます。これがTOP Assayの考え方です。
測り方:酸化の前後を比べる
試料を2つに分け、一方はそのまま、もう一方をアルカリ性・加熱条件で酸化剤(ペルオキソ二硫酸塩)により処理します。両者の個別PFAS(PFCA)濃度を測り、その差分を「酸化によってPFCAへ変換された前駆体の量」とみなします4,10。
図:酸化前は前駆体(点線)が個別分析では見えないが、酸化するとPFCAに変わって棒が上に伸びる。この伸びた分が、もともと試料にいた前駆体の量にあたる。
ここに注意:TOP Assayは、環境で長い時間をかけて起こる分解を、実験室の強い酸化によって短時間で再現する手法です。実際の環境よりも分解が進みやすいため、得られる値は「前駆体が最大でどれだけPFCAを生みうるか」に近い数字になります。
また、酸化の条件(温度・時間・酸化剤の量)によって結果が変わります。前駆体がPFCAに変わりきらずに残ることもあれば、酸化の過程で炭素鎖が途中で切れて、想定より短いPFCA(PFHxA・PFPeA等)が生じることもあります7,10。同じ試料でも条件が違えば値が変わりうる点にご留意ください。
なお、前駆体の変換先は系統によって異なります。フルオロテロマー系(FTOH等)は炭素鎖が削れながらPFOAやより短鎖のPFCAへ分岐するのに対し、電気化学フッ素化(ECF)由来のスルホンアミド系(EtFOSE等)は鎖長を保ったままPFOSへ収束する傾向があります10。「PFOA関連物質」は、主にテロマー系の前駆体を念頭に置いた呼び方です。
TOP Assayは、AOF/EOFのような総フッ素系の網羅性と、個別分析の選択性の中間を埋める手法です。総フッ素系が「フッ素の総量」を、個別分析が「特定物質の濃度」を捉えるのに対し、TOP Assayは「前駆体を含めた、PFCA/PFSAとしての潜在量」を捉えます。目的に応じてこれらを組み合わせることで、PFAS汚染の全体像により近づくことができます1,2。EU飲料水指令のテクニカルガイドラインでも、TOP Assayはターゲット分析を補完する評価手法の一つとして位置づけられています7。
前駆体を含めた評価が必要か迷われる場合も、試料と目的をうかがって最適な組み合わせをご提案します
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出典・参考資料
- Shelor CP, Warren C, Odinaka CV, Dumre K. Comprehensive review of combustion ion chromatography for the analysis of total, adsorbable, and extractable organic fluorine. Journal of Separation Science. 2024;47(15):e2400235. DOI: 10.1002/jssc.202400235 燃焼イオンクロマトグラフ(CIC)によるTF・AOF・EOF分析を概観した総説。個別分析が全有機フッ素の一部しか捉えられない背景と、サムパラメータ法の位置づけを整理。
- McDonough, C. A.; Guelfo, J. L.; Higgins, C. P. Measuring total PFASs in water: The tradeoff between selectivity and inclusivity. Curr. Opin. Environ. Sci. Health 2019, 7, 13–18. https://doi.org/10.1016/j.coesh.2018.08.005 PFAS総量を測る各手法を、網羅性(inclusivity)と選択性(selectivity)のトレードオフとして比較した論文。
- Gehrenkemper L, Simon F, Roesch P, et al. Determination of organically bound fluorine sum parameters in river water samples—comparison of combustion ion chromatography (CIC) and HR-CS-GFMAS. Anal Bioanal Chem. 2021;413:103–115. DOI: 10.1007/s00216-020-03010-y 河川水試料でAOF・EOF・TFを実測・比較。EOFではWAX等のSPEを用い、対象となるPFASが収着剤で変わることを示す。
- Houtz, E. F.; Sedlak, D. L. Oxidative conversion as a means of detecting precursors to perfluoroalkyl acids in urban runoff. Environ. Sci. Technol. 2012, 46 (17), 9342–9349. https://doi.org/10.1021/es302274g TOP Assayの原法。酸化により前駆体をPFCAへ変換し、酸化前後の差分から前駆体量を評価する手法を確立。
- U.S. Environmental Protection Agency. Method 1621: Determination of Adsorbable Organic Fluorine (AOF) in Aqueous Matrices by Combustion Ion Chromatography (CIC). EPA 821-R-24-002, Office of Water, 2024. https://www.epa.gov/cwa-methods 水系試料中AOFをCICで測定する米国EPAの公定スクリーニング法。粒状活性炭(GAC)を用いることを規定。
- Aro, R.; Eriksson, U.; Kärrman, A.; et al. Combustion ion chromatography for extractable organofluorine analysis. iScience 2021, 24 (9), 102968. https://doi.org/10.1016/j.isci.2021.102968 CICの燃焼効率、校正、マトリクス影響を検討。13種のPFASについて燃焼効率66–110%を報告している。
- Ateia, M.; Chiang, D.; Cashman, M.; Acheson, C. Total oxidizable precursor (TOP) assay─Best practices, capabilities and limitations for PFAS site investigation and remediation. Environ. Sci. Technol. Lett. 2023, 10 (4), 292–301. https://doi.org/10.1021/acs.estlett.3c00061 EPA研究者によるTOP Assayの能力と限界の整理。不完全酸化や短鎖化など、解釈上の注意点を論じる。
- Buck, R. C.; Franklin, J.; Berger, U.; et al. Perfluoroalkyl and polyfluoroalkyl substances in the environment: Terminology, classification, and origins. Integr. Environ. Assess. Manag. 2011, 7 (4), 513–541. https://doi.org/10.1002/ieam.258 PFASの用語・分類の基礎文献。PFCA・PFSA(PFAA)を環境分解の終着点、これを生む物質を前駆体と定義。
- Zhang W, Pang S, Lin Z, Mishra S, Bhatt P, Chen S. Biotransformation of perfluoroalkyl acid precursors from various environmental systems: Advances and perspectives. Environ. Pollut. 2021, 272, 115908.
https://doi.org/10.1016/j.envpol.2020.115908 前駆体の生分解経路の総説。スルホンアミド系(EtFOSE→FOSA→PFOS)とテロマー系(FTOH→PFCA)を整理。 - Göckener B, Lange FT, Lesmeister L, et al. Digging deep—implementation, standardisation and interpretation of a total oxidisable precursor (TOP) assay within the regulatory context of per- and polyfluoroalkyl substances (PFASs) in soil. Environ Sci Eur. 2022;34:52. DOI: 10.1186/s12302-022-00631-1
https://doi.org/10.1186/s12302-022-00631-1 TOP Assayの標準化・解釈。スルホンアミド系は同じ鎖長のPFCAを、テロマー系は幅広い鎖長のPFCAを生じる系統差を示す。
上記の文献は、各手法の特性と位置づけを明らかにするために参照したものです。本ページの数値は参考値であり、実際の測定条件・定量下限は試料および装置構成により異なります。
2026/9/10 522