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新生児スクリーニング検査

概要

新生児スクリーニング検査とは、生後4~6日目のすべての赤ちゃんから少量の血液を採取し、先天性代謝異常や内分泌疾患など、症状が現れる前に治療可能な病気を早期発見するための検査です。
発症前に治療を開始することで症状を抑えることに繋がるため、早期の診断・治療を受けることが大切です。

先天性代謝異常等検査(公費検査)

先天性代謝異常等検査は、日本全国で一律に公費で受けることができる新生児向けの重要な健康検査です。
1977年(昭和52年)より厚生労働省の指導のもと、各自治体が主体となって実施している公的事業で、 日本で生まれたすべての赤ちゃんが対象として受けることができる検査です。この検査により、 外見ではわからない先天性の難病を早期に発見し、適切な治療につなげることが可能となりました。
京都府下においても2025年度からは、国の実証事業として「重症複合免疫不全症(SCID)」と 「脊髄性筋萎縮症(SMA)」も新たに検査対象に加わり、公費負担にて追加検査として 無料で受けることができます。

 

アミノ酸代謝異常
フェニルケトン尿症(PKU)
メープルシロップ尿症(MSUD)
ホモシスチン尿症(HCU)

尿素回路異常症
シトルリン血症Ⅰ型(Cit・I)
アルギニノコハク酸尿症(ASA)
 
有機酸代謝異常
メチルマロン酸血症(MMA)
プロピオン酸血症(PA)
イソ吉草酸血症(IVA)
メチルクロトニルグリシン尿症(MCG)
ヒドロキシメチルグルタル酸血症(HMG)
複合カルボキシラーゼ欠損症(MCD)
グルタル酸血症Ⅰ型(GA・I)

内分泌疾患
先天性甲状腺機能低下症
先天性副腎過形成症

糖質代謝異常
ガラクトース血症

脂肪酸代謝異常
中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(MCAD欠損症)
極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(VLCAD欠損症)
三頭酵素欠損症(TFP欠損症)
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼⅠ欠損症(CPTⅠ欠損症)
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼⅡ欠損症(CPTⅡ欠損症)
重症複合免疫不全症等(SCID等)
脊髄性筋萎縮症(SMA)

 

検査体制について

当社の新生児スクリーニング検査は、行政、採血医療機関、検査施設、精密検査施設(大学病院等)との連携のもとに実施されています。
保護者への説明や採血は産科医療機関で行われ、検体は当社の検査施設で分析されます。異常が疑われる場合は、行政と連携し、診断・治療へとつなげる体制を整えています。
安心して検査を受けていただけるよう、地域の医療ネットワークと協力しながら取り組んでいます。
 

新生児スクリーニング検査の体制

衛生検査所での検査の流れ

医療機関で出生されたお子さまの新生児スクリーニング検査は、以下の流れで実施しています。

衛生検査所での検査の流れ

新生児マススクリーニングで見つかる病気について(保護者の方へ)

検査によって発見される疾患の特徴をご紹介します。

● アミノ酸代謝異常症(5疾患)

アミノ酸は体の材料ですが、一部の赤ちゃんはそれをうまく処理できません。
体にたまりすぎると、発育や知能に影響が出ることがあります。

疾患名 主な症状 主な治療法
フェニルケトン尿症 知的障害、けいれんなど 特定のアミノ酸を制限した食事療法
メープルシロップ尿症 甘いにおいの尿、けいれん、昏睡 特別ミルクでのたんぱく制限
ホモシスチン尿症 発達の遅れ、骨の異常、血栓 食事療法とビタミン補充
シトルリン血症Ⅰ型
アルギニノコハク酸尿症
発達の遅れ、けいれん、 高アンモニア血症 食事療法と薬による代謝コントロール

● 有機酸代謝異常症(7疾患)

たんぱく質を分解する過程で作られる「有機酸」が体にたまる病気です。
突然ぐったりする、けいれんを起こすなどの症状が見られます。

疾患名 主な症状 主な治療法
プロピオン酸血症/メチルマロン酸血症 嘔吐、呼吸障害、意識障害 食事療法、薬で有害物質の排出促進
イソ吉草酸血症 特有の体臭、呼吸障害 たんぱく制限、薬による代謝改善
グルタル酸血症Ⅰ型
メチルクロトニルグリシン尿症
筋肉のこわばり、感染などによるけいれん・脳症、意識障害 タンパク制限や特定栄養素の制限、ビタミン補給
複合カルボキシラーゼ欠損症 意識障害、頑固な湿疹 ビオチン(ビタミン)の投与
3-ヒドロキシメチルグルタル酸血症 低血糖、嘔吐 脂肪制限食、糖の補給

● 脂肪酸代謝異常症(5疾患)

脂肪からエネルギーを作る働きがうまくいかず、空腹時や熱が出たときに症状が出ます。
放置すると突然死につながることもあります。

疾患名 主な症状 主な治療法
中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(MCAD) 低血糖、けいれん 食事療法、ブドウ糖の補給
極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(VLCAD) 心筋障害、肝障害 食事指導、特別ミルクの使用
三頭酵素欠損症 筋力低下、低血糖 食事指導、ブドウ糖の補給
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼⅠ・Ⅱ欠損症 意識障害、低血糖 食事療法、必要成分の補助療法

● 糖代謝異常症(1疾患)

母乳やミルクに含まれる「乳糖」は、赤ちゃんの大切なエネルギー源です。
しかし、糖の一部を体内で分解できず、放っておくと肝臓や目に影響が出ることがあります。

疾患名 主な症状 主な治療法
ガラクトース血症 黄疸、体重減少、白内障 乳糖除去ミルクへの切り替え

● 先天性内分泌疾患(2疾患)

ホルモンの分泌に問題がある病気です。早期治療が大切です。

疾患名 主な症状 主な治療法
先天性甲状腺機能低下症 元気がない、発達の遅れ 甲状腺ホルモンの補充
先天性副腎過形成症 脱水、女児の性器異常、 男児の早期男性化 ホルモン補充治療、電解質の管理

● 原発性免疫不全症(2疾患)

ホ私たちの体には、ウイルスや細菌から身を守る「免疫」の仕組みがあります。
原発性免疫不全症は、生まれつきその免疫の働きに異常がある病気です。

疾患名 主な症状 主な治療法
重症複合免疫不全症
B細胞欠損症
感染症を繰り返す、生ワクチン接種による重篤な副反応 抗菌薬の使用、免疫グロブリンの補充、造血幹細胞移植

● 脊髄性筋萎縮症(SMA)

筋肉を動かす命令を伝える「運動神経」がうまく働かなくなる、遺伝性の神経の病気です。
生まれてから徐々に筋力が低下し、寝返りや手足の動きが弱くなったり、呼吸に使う筋肉まで影響を受けることがあります。

疾患名 主な症状 主な治療法
脊髄性筋萎縮症(SMA) 筋力低下、運動発達の遅れ、呼吸障害 進行を抑える治療薬の早期投与、呼吸や栄養のサポートなど

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