概要
とろみ調整飲料の粘度測定(温度比較)
概要
摂食嚥下障害(*1)のある方にとって、粘度の低い水やお茶などの飲料は、誤嚥を引き起こすリスクがあります。飲料の嚥下のしやすさは粘度に大きく関係しており、誤嚥を防ぐためには、粘度の低い飲料にとろみ調整食品(とろみ剤)を加えて、適度な粘度に調整することが有効です。
このようにしてとろみを付けた液体食品は、とろみの程度により「薄い・中間・濃い」の3段階に分類されており、それぞれに粘度の基準が設定されています(嚥下調整食学会分類2021)。 これらの粘度基準は20℃での測定値として定められていますが、実際の摂取温度は、食品の種類や摂取状況、調理方法によって異なります。
今回は、とろみ調整食品を用いて粘度を調整した水について、回転式レオメータを用いた粘度測定により評価した事例をご紹介します。
関連するアプリケーションとして、とろみ調整飲料を動的粘弾性測定で評価した事例は、こちらのページでご確認いただけます。
(*1) 摂食嚥下障害(せっしょくえんげしょうがい)は、食べる(摂食)・飲み込む(嚥下)機能に問題が生じる状態を指し、食べ物や飲み物を安全かつ効率的に口から胃へ送る一連の動作のどこかで障害が起きると、むせ、誤嚥(食物や唾液、胃液などが気管に入ること)、栄養不良、脱水、誤嚥性肺炎などのリスクが高まります。
試料
キサンタンガム系のとろみ調整食品を水に添加し、「段階1(薄いとろみ)(*2)」および「段階2(中間のとろみ)(*3)」に相当する粘度にそれぞれ調整した2種類のとろみ水を作製しました。
段階1(薄いとろみ) : 口に入れると口腔内に広がる
段階2(中間のとろみ) : 口腔内ですぐには広がらず、舌の上にまとめやすい
(*2,3) 液体食品は、とろみの程度により「薄い・中間・濃い」の3段階に分類されており、それぞれに粘度の基準が設定されています(嚥下調整食学会分類2021)。
分析・試験方法
図1 装置外観
| 測定装置 | 回転式レオメータ HAAKE MARS60 (サーモフィッシャーサイエンティフィック社製) |
|---|---|
| 温度 | 10、20、40、60℃(ペルチェ式) |
| 測定方法 | 回転測定(せん断速度依存性) |
| せん断速度範囲 | 10-2~103[1/s] |
図2 回転測定イメージ
分析・試験事例
粘度評価として、回転測定によるせん断速度依存性の測定を実施しました。測定は4つの異なる温度条件下で行い、せん断速度(γ’)に対する粘度(η)の変化(フローカーブ)を評価しました。
各試料のフローカーブを図3および図4に示します。各フローカーブには、4つの温度条件の測定結果を重ねて表示しています。
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| 図3 段階1(薄いとろみ)のフローカーブ | 図4 段階2(中間のとろみ)のフローカーブ |
フローカーブの結果から、とろみを付加した水は、せん断速度の上昇に伴い粘度が低下する「せん断流動化挙動(shear thinning)」を示すことが確認されました。
本来、水はニュートン流体の挙動を示しますが、とろみを加えることで非ニュートン流体へと変化しました。
また、すべての温度条件において、「段階1(薄いとろみ)」の方が「段階2(中間のとろみ)」よりも低い粘度を示しました。
これらの結果を踏まえ、温度が粘度に与える影響や、それに伴う食感および嚥下時の”のどごし”について、以下に考察します。
温度による粘度変化の傾向
各試料の温度比較の結果、薄いとろみは中間のとろみと比較して、温度変化の影響を大きく受ける傾向が確認されました。
特に、温度が高くなるほど粘度の低下が顕著に見られたことから、低温でとろみを調整した飲料を加温して摂取する場合には、粘度の変化に注意が必要です。
食感、のどごし
液体が喉を通過する際の流動条件に近いとされる”せん断速度50[1/s]”付近に注目すると、より低いせん断速度域と比較して、温度による粘度変化が小さいことが確認されました。
このことから、温度による粘度の差は、口に入れた瞬間の食感としては差を感じやすい一方で、嚥下時の”のどごし”では差を感じにくくなると考えられます。
回転式レオメータによる粘度測定の結果から、とろみの濃度や温度条件が試料の流動性に与える影響について、重要な知見が得られました。
関連情報
アプリケーションズ
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