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X線光電子分光分析法(XPS)によるポリマー試料の化学結合状態分析

概要

XPSは固体試料全般の表面から10nm程度の深さの定性分析および定量分析が可能です。また、光電子エネルギーのシフトから、化学結合状態を解析することが可能です。化学結合状態の解析によって、有機化合物における官能基付加や、無機化合物における酸化/還元など、様々な化学処理の前後の状態比較ができます。
ここではポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムの分析事例をご紹介します。
 

分析・試験装置

ESCA-3400HSE(島津製作所) 

試料

ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム

分析・試験項目

定性分析、定量分析、化学結合状態の解析

分析・試験結果

定性分析

ワイドスペクトルの取得により、構成元素を調べることができます。285eVにC 1s軌道由来の、532eVにO 1s軌道由来のピークがあることやオージェ由来のピーク(KLL)もあることから、PETにはCとOが存在することが確認できます 。

XPSのワイドスペクトル

定量分析

定性分析で検出された各元素のナロースペクトルを取得し、そのピーク面積と各元素の相対感度係数を用いて定量値を算出できます。PETの場合、Cが71.7atom%、Oが28.3atom%存在することが分かり、化学量論比のC:71.4%、O:28.6%とよく一致しました。

PET定量値

化学結合状態の解析

結合状態により、結合エネルギー値がわずかにシフトします(化学シフト)。PETのCとOのナロースペクトルの波形分離を行い、各コンポーネントのエネルギー値を調べることで、化学結合状態を解析することができます。また分離した各ピークの面積から各成分の比率も算出することができます。

PETの構造式と結合状態(赤字はC、青字はOの結合状態を示す )

PETの構造式と結合状態(赤字はC青字はOの結合状態を示す )  

PETのCとOのナロースペクトル
結果数値

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