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土壌中の全有機体炭素(TOC)の定量 (TOC固体試料測定システム)

概要

土壌中の有機物は、農作物の生育向上に不可欠なものです。しかし、その一方で、分解されて大気中に放出されると二酸化炭素の排出源にもなります。そのため、地球温暖化対策の一つとして農地による炭素貯留の取り組みが進められています。土壌中の炭素含有率を把握することは、土壌炭素貯留の研究にもご活用いただけます。
全有機体炭素計(TOC計)の固体試料測定システムを使用すれば、全炭素(TC)と無機体炭素(IC)を各々定量でき、その差(TC-IC)より全有機体炭素量(TOC)を求めることができます。

特長・用途

 土壌などの固体試料のTCを燃焼酸化により直接定量できます。抽出などの前処理操作が不要です。
 酸を添加してICを測定できます。
 TOCをTC-ICにより算出できます。

分析・試験装置

TOC固体試料測定システム

図1 TOC固体試料測定システム

分析・試験方法

表1の条件にて検量線試料および土壌の測定をしました。TCの定量では、酸素ガス中で加熱して有機物を分解します。ICの定量では、装置内で酸を添加します。いずれも発生した二酸化炭素を検出します。
TC検量線の作成にはグルコース粉末(炭素濃度40%)、無機体IC検量線の作成には炭酸ナトリウム粉末(炭素濃度11.3%)を使用しました。

 

表1 測定条件

分析装置 全有機体炭素計TOC-L + 固体試料燃焼装置SSM-5000A(島津製作所 製)
測定項目 全炭素(TC)、無機体炭素(IC)
測定方法 TC: 燃焼触媒酸化 (TC炉温度:980℃) IC:酸性化 (IC炉温度:200℃)
試料量 100mg
キャリアガス 酸素ガス 500mL/min
検量線試料 TC:グルコース粉末 IC:炭酸ナトリウム粉末
  • 図2 全炭素(TC)検量線

    図2 TC検量線

  • 図3 無機体炭素(IC)検量

    図3 IC検量線

図4 試料ボートに秤量した土壌

図4 試料ボートに秤量した土壌

土壌A、B、C、Dを2mmのふるいに通し、105℃で2時間乾燥した後、乳鉢ですり潰しました。
土壌A・Bは畑より採取した土、土壌C・Dは市販の培養土です。
これらを試料ボートに秤量し、測定に用いました。

分析・試験結果

TC、ICの定量結果は、表2の通りです。その差からTOCを求めました。

 

表2 定量結果

試料名 全炭素(TC)
(%)
無機体炭素(IC)
(%)
全有機体炭素
TOC=TC-IC(%)
土壌A 2.5 0.23 2.3
土壌B 3.3 0.46 2.8
土壌C 18 <0.1 (0.05) 18
土壌D 8.2 <0.1 (0.02) 8.2

・定量結果は、有効数字2桁の表示としました。
・ICについては報告下限(0.1%)を下回る結果を参考として括弧書き(有効数字1桁)で示しています。

 

このように、TOC固体試料測定システムを使用すれば、土壌中のTCとICの定量ができ、その差からTOCを求めることができます。
土壌中の炭素含有率を把握し、地球温暖化対策としての土壌炭素貯留の研究にご活用ください。

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