概要


セメント中のCO2吸収量評価 (TOC固体試料測定システム)
概要
近年、地球温暖化対策・カーボンニュートラルの実現に向けて、二酸化炭素(CO2)の分離・回収に関する研究が盛んに行われています。当社所有の全有機炭素計(TOC)の固体試料測定システムでは全炭素と無機体炭素の定量ができます。このシステムを用いて、セメントやコンクリートに吸収・固定化されたCO2を無機体炭素としてTOC測定することで評価可能です。CO2の回収技術の研究などにお役立てください。
特長・用途
TOC固体試料測定システムを活用したCO2吸収量測定

図1 装置外観(TOC固体試料測定システム)
● 粉末試料を直接測定することが可能です
● 塊状試料については、乾燥・粉砕により均質化してから測定します
● 固体試料燃焼装置内で酸性化し、試料中の炭酸塩を分解してCO2を発生させTOCで測定します
● 得られた無機体炭素の含有量から、CO2相当量を算出します
分析・試験方法

図3 無機体炭素の検量線
表1 測定概要
分析装置 | 全有機体炭素計TOC+固体試料燃焼装置SSM-5000A (島津製作所 製) |
---|---|
測定項目 | 無機体炭素 (IC) |
測定方法 | 試料を酸性化後、IC炉にて加熱 |
必要なサンプル量 | 約100 mg |
キャリアガス | 酸素ガス |
検量線試料 | 炭酸ナトリウム |

図2 磁製ボートに入れたセメント粉末
分析・試験事例
分析例1
ポルトランドセメント粉末をシャーレに入れ、フタを開けた状態で放置しました。
開始日、10日後、42日後に無機体炭素(IC)を各2回測定しました。
無機体炭素の量は、開始時から日が経つにつれて増加していることが確認できました。増加の要因は大気中のCO2を吸収したためと推測されます。
表2 セメント無機体炭素(IC)測定結果 (開始日、10日後、42日後)
ポルトランドセメント試料 | 無機体炭素(IC) | CO2換算値 | ||
---|---|---|---|---|
開始日 | 1回目 | 0.02 |
0.02 |
0.06 |
2回目 | 0.02 | |||
10日後 | 1回目 | 0.24 | 0.25 |
0.91 |
2回目 | 0.26 | |||
42日後 | 1回目 | 0.44 |
0.44 |
1.6 |
2回目 | 0.45 |
(単位:wt%)
分析例2
開封直後のセメント粉末(市販品)と 当社で数年間保管していた各種セメント粉末(蛍光X線分析用標準試料:ICの値なし)について、無機体炭素(IC)を各2回測定しました。
Aは開封直後、B、C、Dは数年間保管後のものです。
保管試料については、分析例1と同様に無機体炭素の量の一定の増加が推察される結果となりました。
試料 | 無機体炭素(IC) | CO2換算値 | ||
---|---|---|---|---|
セメントA 開封直後 (市販品) |
1回目 | 0.11 |
0.11 |
0.40 |
2回目 | 0.11 | |||
セメントB 保管試料 (ポルトランドセメント) |
1回目 | 0.77 | 0.77 |
2.8 |
2回目 | 0.77 | |||
セメントC 保管試料 (高炉セメント) |
1回目 | 0.28 |
0.28 |
1.0 |
2回目 | 0.27 | |||
セメントD 保管試料 (高炉セメント) |
1回目 | 0.38 | 0.40 | 1.5 |
2回目 | 0.41 |
(単位:wt%)
今回は粉末試料での無機体炭素分析事例を紹介しましたが、塊状試料の吸収されたCO2量を極力変化させない条件での乾燥・粉砕等の前処理や、全炭素・全有機体炭素の分析にも対応しています。
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