概要


TOC固体試料測定システムによる金属ワイヤの残留油分等の定量
概要
金属材料に加工油や洗剤が残留すると、製品の品質低下を招く可能性があります。全有機体炭素計(TOC)+固体試料燃焼装置を使用し、金属材料に付着残留した油分等を直接燃焼させ、炭素量として把握することが可能です。
特長・用途
● 試料ボートに入る大きさであれば、抽出等の前処理操作なしで測定できます。
● 油分等の有機物を酸素ガス中で加熱分解し、炭素量として測定します。
● 金属材料の品質管理や洗浄方法の検討などに役立ちます。
分析・試験装置

図1 TOC固体試料測定システム
分析・試験方法
表1の測定条件で、グルコース水溶液 (炭素濃度2000 μg/mL)を試料ボート中の石英ウール(加熱処理済み)に 5、10、20、50、100 μL(炭素量として10、20、40、100、200 μg)添加・測定し、検量線を作成した後、試料を測定しました。

図2 全炭素 検量線
表1 測定条件
分析装置 | 全有機体炭素計TOC-L+固体試料燃焼装置SSM-5000A (島津製作所 製) |
---|---|
測定項目 | 全炭素(TC) |
測定方法 | 燃焼触媒酸化(TC炉温度:900 ℃) |
測定可能なサンプルサイズ | 試料ボートに入る大きさ (長さ3 cm、幅0.7 cm程度以内) |
キャリアガス | 酸素ガス 500 ml/min |
検量線試料 | グルコース |
分析・試験結果

図3 試料ボートに入れた銅線

図4 ピークプロファイル(銅線)
市販の金属ワイヤ(ステンレス線、銅線)を3 cm程度に切断し、試料ボートに測りとりました。
これを固体試料燃焼装置SSM-5000A内にセットし、酸素ガス中で加熱して有機物を分解し、全炭素量の測定をしました。
次に、切断したワイヤをエタノールで超音波洗浄して乾燥後、試料ボートに測りとり、同様に全炭素量の測定をしました。
検出されたピークの面積値から検量線により全炭素量(μg)を求め、1 g当たりの全炭素量(μg)に換算しました。全炭素量は、残留する油分や汚れの目安となり、洗浄の効果を確認できます。
なお、金属材料自体に炭素が含有される場合は残留油分との識別はできません。
TOC固体測定システムを用いると、金属材料に付着残留した油分等を直接燃焼させて前処理なしに炭素量として定量することが可能です。
表2 金属ワイヤの炭素量測定結果
試料名 | 測定 | 重量 (g) |
全炭素量 TC(μg) |
1g当たりの全炭素量 (μg) |
|
---|---|---|---|---|---|
ステンレス線(0.45mmΦ) 洗浄前 |
1回目 | 2.011 | 15.8 | 7.9 | 7.6 |
2回目 | 2.016 | 14.8 | 7.4 | ||
ステンレス線(0.45mmΦ) 洗浄後 |
1回目 | 1.994 | <10 | <5 | <5 |
2回目 | 2.006 | <10 | <5 | ||
銅線(0.28mmΦ) 洗浄前 |
1回目 | 1.003 | 127 | 127 | 130 |
2回目 | 1.006 | 135 | 134 | ||
銅線(0.28mmΦ) 洗浄後 |
1回目 | 1.002 | <10 | <10 | <10 |
2回目 | 1.004 | <10 | <10 |