概要
水銀圧入法における疑似細孔の判別と排除
概要
水銀圧入法は、水銀の高い表面張力を利用し、加圧時の圧力と圧入量の関係から細孔径分布を測定する手法です。
ほぼあらゆる固体材料に適用できる汎用性の高い方法であり、電池材料、建材、吸着材など、多様な材料の細孔評価に広く用いられています。
本手法では、数百 µmから数 nmまでの広い範囲の細孔径分布を測定できます。しかし、測定下限付近の微細孔を評価するためには、400 MPaを超える高圧を印加する必要があります。
このような高圧条件下では、比較的軟らかい樹脂材料が圧縮され、その変形に起因する体積変化が疑似細孔として細孔径分布に現れる場合があります。
本事例では、単体では形状を保持できず樹脂基材上に塗布して使用される多孔質材料を対象としました。
基材由来の疑似細孔を判別してその影響を補正・除外することで、多孔質体本来の細孔径分布を算出した事例を紹介します。
分析・試験方法
装置:細孔分布測定装置 オートポアV 9620(マルバーン・パナリティカル(旧マイクロメリティクス)社製)
試料:樹脂材料の基材に塗布された多孔質体、樹脂材料の基材単体
方法:水銀圧入法
測定項目:細孔分布
測定範囲:Φ0.003~50 μm
測定時圧力:約25 kPa~414 MPa
分析・試験事例
多孔質体を塗布した試料と樹脂基材のみの2種類の試料について、水銀圧入法による細孔分布測定を行い、両者の侵入曲線(Intrusion curve)や細孔径分布を比較しました。
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樹脂材料の基材に塗布された多孔質体 
樹脂材料の基材単体 -
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図1 測定全範囲
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図2 図1の
で示す範囲を拡大
その結果、多孔質体を塗布した試料には、0.2 μm以下付近と1~4 μm付近に細孔が確認されました。
また、樹脂基材からは0.2 μm以下付近細孔が確認されました。細孔を持たない基材単体を測定した場合にも、0.2 μm以下に不連続な分布が確認されたことから、この領域は樹脂材料の基材が圧縮されることで生じた疑似細孔に由来すると判断しました。そのため、これらの影響を除外し、0.2 μm以上の範囲で細孔分布を算出しました。
| 樹脂材料の基材に 塗布された多孔質体 |
細孔 体積 (mL/g) |
細孔 表面積 (m2/g) |
メディアン径 (体積基準) (μm) |
モード径 |
気孔率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 測定全範囲 (0.003~50 μm) |
0.415 | 17.7 | 4.28 | 4.82 | 33 |
| 疑似細孔を除外した 範囲 (0.2~50 μm) |
0.388 | 0.4 | 4.42 | 4.82 | 30 |
基材を測定するだけで疑似細孔か否かを判別できます。
疑似細孔が確認された場合は、疑似細孔を除外した多孔質体のみの細孔分布データを算出できます。
同じ基材に塗布された多孔質体であれば、種類や配合が変わっても同様のデータが算出できます。
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