概要

近年、合成ペプチドは医薬品や医薬品原料としての利用が増加しています。
このペプチドは、固相合成法によって製造されることが多く、合成後には固定相として用いた樹脂との結合を切断してペプチドを回収します。この際、トリフルオロ酢酸(TFA)が用いられることが多いため、回収されたペプチドはペプチド・TFA塩として存在します。
TFAは生理活性に影響を及ぼす可能性があるため、TFA塩を他の塩に置換する必要があります。
また、N末端アミノ酸および塩基性アミノ酸を持つペプチドでは、電荷のバランスを取るため、カウンターイオン(対イオン)を有することがあります。
ペプチド医薬品として使用する際には、TFAやニトロソアミンの前駆体となりうる亜硝酸の残存、カウンターイオンとして存在する各種陰イオンなど、共存イオンの確認が重要となります。

ここでは、イオンクロマトグラフ(IC)を用いて、合成ペプチド中のカウンターイオンを一斉分析し、カウンターイオンとして存在する塩の確認および回収率を評価した事例を紹介します。

分析・試験事例

市販のアンギオテンシンⅡ、リゾチーム、インスリン(ヒト)、ミオグロビン中のカウンターイオンの分析例です。
様々な種類の有機イオン、無機イオンが確認されました。各イオン類の検出下限、定量下限値については表1をご覧ください。

市販ペプチドの「リゾチーム」・「アンギオテンシンⅡ」・「ミオグロビン」・「インスリン(ヒト)」の分析例です。

図1 標準試料および市販ペプチドの分析結果

2024.10.25 346

表1 検出下限値および定量下限値(単位:nmol/mL)

成分 検出下限値
S/N=3
定量下限値
S/N=10
酢酸 13 43
ぎ酸 1.7 5.6
TFA 9.7 32
F- 0.14 0.48
Cl- 0.12 0.38
NO2- 0.68 2.2
Br- 0.18 0.6
NO3- 0.19 0.62
PO43- 0.39 1.3
SO42- 0.12 0.40

 

 

市販の「副腎皮質刺激ホルモン フラグメント7~38」中のカウンターイオンを分析したところ、TFAのみが検出されました。(図2)
TFAの定量値から算出した理論存在量に対する回収率は94.5 %となり、本試料がTFA塩であることが確認されました。(表2)
カウンターイオンは、N末端アミノ酸および塩基性アミノ酸に付加するため、本試料では1分子当たり8分子相当のTFAが存在すると考えられます。(図3)

図2 標準試料および市販ペプチドのクロマトグラム

図2 標準試料および市販ペプチドのクロマトグラム

 

  • 図3 副腎皮質刺激ホルモン Frag7~38の構造

    図3 副腎皮質刺激ホルモン フラグメント7~38の構造

  • 表2 分析結果

    成分 定量値
    nmol/L
    回収率
    %
    酢酸 N.D. ーーー
    ぎ酸 N.D. ーーー
    TFA 415 94.5
    F- N.D. ーーー
    Cl- N.D. ーーー
    NO2- N.D. ーーー
    Br- N.D. ーーー
    NO3- N.D. ーーー
    PO43- N.D. ーーー
    SO42- N.D. ーーー
    N.D. =Not Detected 
    ※検出下限、定量下限値については表1参照

 

  •  
  • 参考:島津製作所アプリケーションニュース No.L457A、01-00564

2024.10 346