技術情報
ご依頼の手順 TEL/FAXでのお問合せ メールでのお問合せ 分析依頼票のダウンロード
トップ > 技術情報 > グリーン調達支援 > GC-MS-MSによるシックハウス関連物質(有機リン化合物)の高感度分析
GC-MS/MSによるシックハウス関連物質(有機リン化合物)の高感度分析
 GC-MS/MSのMRM法は、試料中の測定対象物質と夾雑物をGCで分離後、測定対象物質のイオン化とMSによる質量分離を2段連続して行う定量手法です。
 現在一般的なGC-MSのSIM法と比べて、
  ケミカルノイズなどのベースノイズ低減による高感度化(S/N比の向上)
  測定対象物質の夾雑物に対する高選択化(質量選択性の向上)
 が可能なため、高マトリックス試料(夾雑物の多い試料)を対象とした極微量分析に効果的な定量手法です。
 一例として、シックハウス関連物質の中で低い濃度指針値(環境省)が定められている、有機リン化合物(クロルピリホス、ダイアジノン)を測定対象物質とし、MRM法とSIM法とで比較試験を行いました。

 ※ 環境対策 シックハウス症候群関連調査
  https://www.shimadzu-techno.co.jp/annai/k04-05.html


■標準溶液の検出感度
  試験方法
     クロルピリホスとダイアジノンの標準品を有機溶媒希釈後、1ppb〜10ppb(ng/mL)の検量線溶液を調製し、MRM法とSIM法とで、検出感度の比較試験を行いました。試験装置はGCMS-TQ8030(島津製作所製)を使用し、GC部は同一条件で比較しました。
 まず、検量線の直線性を寄与率(r2値)より評価後、1ppb(ng/mL)溶液を5回繰り返し測定し、得られた実測濃度から変動係数(CV%)を求めました。さらに、1ppb(ng/mL)溶液の測定チャートから、測定対象物質のピークとベースノイズとの強度比(S/N比)を算出し、測定対象物質の検出感度を比較しました。

  試験結果
     標準溶液の測定結果を表1と表2に、1ppb(ng/mL)溶液の代表チャートを図1と図2に示します。
 検量線の寄与率(r2値)は、MRM法とSIM法ともに0.999以上の測定結果が得られ、良好な直線性が確認されました。また、最低濃度に相当する1ppb(ng/mL)溶液のS/N比は、MRM法はSIM法に比べて1オーダー程度向上し、5回繰り返し測定の実測濃度による変動係数(CV%)は大幅に改善しました。
 今回の測定結果より、MRM法はSIM法と比べてベースノイズの低減などにより、非常に高感度な測定結果が確認されました。

  標準溶液 チャート比較 [クロルピリホス1ppb(ng/mL)]   標準溶液 チャート比較 [クロルピリホス1ppb(ng/mL)]
  図1 標準溶液 チャート比較 [クロルピリホス1ppb(ng/mL)]

  表1 標準溶液 測定結果 [クロルピリホス1ppb(ng/mL)]
 
測定方法 MRM法 SIM法
寄与率(r2値)※1) >0.999 >0.999
変動係数(CV%)※2) 4.1 12
S/N比※3) 150 7.3
  ※1) 検量線; クロルピリホス1ppb〜10ppb(ng/mL)
※2) 標準溶液; クロルピリホス1ppb(ng/mL) 5回繰り返し測定より得られた実測濃度の変動係数
※3) 標準溶液; クロルピリホス1ppb(ng/mL) 測定時のS/N比



  標準溶液 チャート比較 [ダイアジノン1ppb(ng/mL)]   標準溶液 チャート比較 [ダイアジノン1ppb(ng/mL)]
  図2 標準溶液 チャート比較 [ダイアジノン1ppb(ng/mL)]

  表2 標準溶液 測定結果 [ダイアジノン1ppb(ng/mL)]
 
測定方法 MRM法 SIM法
寄与率(r2値)※1) >0.999 >0.999
変動係数(CV%)※2) 5.2 13
S/N比※3) 82 6.7
  ※1) 検量線; ダイアジノン1ppb〜10ppb(ng/mL)
※2) 標準溶液; ダイアジノン1ppb(ng/mL) 5回繰り返し測定より得られた実測濃度の変動係数
※3) 標準溶液; ダイアジノン1ppb(ng/mL) 測定時のS/N比

■高マトリックス試料(流動パラフィン含有)の選択性
  試験方法
     前項の標準溶液1ppb(ng/mL)に、流動パラフィンを添加して高マトリックス試料を作成後、MRM法とSIM法とで比較試験を行い、測定対象物質のピークとベースノイズとの強度比(S/N比)から、測定対象物質の夾雑物に対する選択性を比較しました。

  試験結果
     流動パラフィン含有の高マトリックス試料の測定結果を表3および表4に、代表クロマトグラムを図3および図4に示します。
 SIM法では、測定対象物質と共溶出する流動パラフィンの影響により、測定対象物質の検出に至らなかった一方で(S/N比3未満)、MRM法では、2段目の質量分離により流動パラフィン由来のイオンを排除したことで、高い精度で定量可能な選択性が得られ(S/N比10以上)、高マトリックス試料の微量分析に適する試験結果が確認されました。

  流動パラフィン含有試料 チャート比較 [クロルピリホス1ppb(ng/mL)]   流動パラフィン含有試料 チャート比較 [クロルピリホス1ppb(ng/mL)]
  図3 流動パラフィン含有試料 チャート比較 [クロルピリホス1ppb(ng/mL)]

  表3 流動パラフィン含有試料 測定結果 [クロルピリホス1ppb(ng/mL)]
 
測定方法 MRM法 SIM法
S/N比※1) 43 < 3
  ※1) 流動パラフィン含有試料; クロルピリホス1ppb(ng/mL) 測定時のS/N比



  流動パラフィン含有試料 チャート比較 [ダイアジノン1ppb(ng/mL)]   流動パラフィン含有試料 チャート比較 [ダイアジノン1ppb(ng/mL)]
  図4 流動パラフィン含有試料 チャート比較 [ダイアジノン1ppb(ng/mL)]

  表4 流動パラフィン含有試料 測定結果 [ダイアジノン1ppb(ng/mL)]
 
測定方法 MRM法 SIM法
S/N比※1) 37 < 3
  ※1) 流動パラフィン含有試料; ダイアジノン1ppb(ng/mL) 測定時のS/N比


 GC-MS/MSのMRM法は、従来のGC-MSのSIM法と比べて、高選択的かつ高感度な測定が可能です。夾雑物の多い試料(環境・食品・各種材料など)を対象とした微量分析をお考えの際は、ぜひご相談ください。
2014.11.17