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環境化学物質3学会合同大会(第30回環境化学討論会他) 参加報告

学会発表・論文 学会参加報告 環境化学討論会

環境化学物質3学会合同大会(第30回環境化学討論会他) 参加報告

開催期間:2022年6月14日-16日
開催地:富山国際会議場(富山市)

第30回環境化学討論会、第24回環境ホルモン学会研究発表会、第26回日本環境毒性学会研究発表会の合同大会


 

<当社の研究成果発表内容>
 https://www.shimadzu-techno.co.jp/news/gakkai/news220711.html
<環境化学物質3学会合同大会の情報>
 https://j-ec.smartcore.jp/M022/forum/touron30/ 
<第30回環境化学討論会の情報>
 http://www.j-ec.or.jp/conference/30th/index.html

6月14日-16日、富山国際会議場において、環境化学物質3学会合同大会が開催されました。本大会は第30回環境化学討論会、第24回環境ホルモン学会研究発表会、第26回日本環境毒性学会研究発表会の合同大会で、環境汚染物質に関わる3学会が合同で開催する初めての大会となりました。(共催:一般社団法人日本環境化学会、日本環境毒性学会、環境ホルモン学会(正式名:日本内分泌攪乱化学物質学会)、一般社団法人セタックジャパン)

会場

会場(富山国際会議場)

昨年の環境化学討論会に引き続き、新型コロナウイルス感染症対策としてハイブリッド形式(Web参加と会場参加)で開催されました。登録参加者は約650名でしたが、毎日入場時の検温・マスクの着用・こまめな消毒を徹底した上で、大部分の方が会場で参加され、コロナ禍前に戻ったかのような大変盛況な大会となりました。

当社は連名も含め、5題の研究成果を発表しました。
大会の概要や主な研究報告、講演の内容などをレポートします。

総発表演題数は365題で、会場での口頭発表やポスター発表に加え、動画を上映するオンデマンド発表などオンライン形式でも開催されました。

本大会は、環境中化学物質の分析と挙動を把握する学問(環境化学)、環境化学物質の人健康や生態系に対する影響の機構を解析する学問(環境ホルモン)、化学物質の生態系における影響を解析・評価する学問(環境毒性学)の、3領域の分野横断的な議論と、交流を深めるために5つのセッションが重点テーマセッションとして特別に組まれていました。近いながらも異なる専門知識を持った研究者同士が、ディスカッションを重ねる大変有意義な大会となりました。

◇重点テーマセッション

・新興&レガシーPFAS研究の最前線
・プラスチックと関連化学物質の排出・動態・影響・管理
・複合曝露・複合影響
・PPCPsほかの新興化学物質
・環境化学・環境毒性学の融合による共同研究-LaMerの成果と展望

<主な発表内容>

対象物質としては、既存の化学物質ではダイオキシン類などのPOPs関係、臭素系難燃剤、有機フッ素化合物(PFC)等の有機ハロゲン化合物の発表が多く、全体の約30%を占めました。特にPFCの発表は総数43件と対象物質群としては最も多く、当社からも「廃棄物中PFOS及びPFOA分析方法の確立」と題した発表を行いましたが、聴講者が多く、活発な質疑応答が行われるなど、3学会を通して関心の高さが伺えました。

さらに、マイクロプラスチックを含むプラスチック関連の発表も全体の11%、総数で41件ありました。プラスチック中の添加剤など、新たな汚染に関する発表が増えており、注目度が依然高いことが感じられました。

また、大型バスにおける換気と感染対策に関わる研究など、コロナ禍のニーズに対応する発表も注目を浴びていました。
ほかにも、炭化水素・PAHs、農薬、VOC、PPCPs、紫外線吸収剤、重金属・微量元素など、多くの対象物質について発表がありました。

テーマとしては分析技術(網羅分析・機器分析・サンプリング・前処理)が81件と最多で、特に網羅分析に関する発表が注目されていました。自由集会でも“ノンターゲット分析とデータサイエンスに触れよう~環境化学をどこまで紐解けるか~”の演題でセッションが組まれており、一斉分析や未知化合物分析に対する関心の高まりが感じられました。また、毒性影響やリスク評価、生態影響など、合同大会ならではのテーマも数多く発表されていました。 

 

<その他の企画内容>

主な企画は、環境化学物質3 学会合同公開シンポジウム、特別講演、特別企画、企業展示、ランチョンセミナー、高校環境化学賞(ポスター発表)、自由集会(5テーマ)、ハイライトセッション、エクスカーション(富山県立イタイイタイ病資料館見学)など盛りだくさんの企画がありました。

会場の様子

会場の様子(特別講演)

環境化学物質3 学会合同公開シンポジウムは大会に先立ち、6月13日に一般公開で開催されました。
「2030 アジェンダおよび将来の化学物質管理に向けた科学と政策の活動」と題し、国際機関と我が国の化学物質管理に関する歴史的経緯、マイクロプラスチックや新興化学物質の問題と研究成果等についての講演と、科学と政策の連携を踏まえた総合的な討論が行われました。
UNEP設立50周年、日本環境化学会30周年の節目に、国際機関と我が国の環境科学研究の歴史も踏まえた記念的なシンポジウムとなりました。

特別講演では、イタイイタイ病研究の歴史や有害性多環芳香族炭化水素等による大気・海洋汚染をめぐる近年の動向、さらにエコチル調査に関する最新の知見ついて講演がありました。今日の環境化学研究の礎である、四大公害研究を通して、実地調査や観察の重要性、文化的・多面的に物事を洞察していくことの必要性を再認識する機会となりました。

 また、特別企画は、「ゼロ・ポリューション:環境科学のこれから」、「未来の環境保全に向けた新興化学物質リストとは?」、「環境医薬品研究の最新動向に関するシンポジウム」と題したセッションが企画され、それぞれ3学会関連分野のホットトピック・将来課題に係る最新のトピックスについて、情報の提供と活発な討議が行われました。

本大会を通じて、従来の環境化学研究だけでなく、環境毒性学や環境ホルモン研究など生体影響研究にも触れることができ、“多様な化学物質の複合曝露影響を、様々な要因を考慮して考えることの難しさと奥深さ”を知ることができました。こうした経験は3学会合同大会ならではだと感じました。

来年2023年は徳島市のあわぎんホールで5月30日(火)~6月2日(金)(予定)に開催されます。
本年同様に3学会合同大会となり、国内外の研究者や、他分野のスペシャリストとのネットワークも構築でき、3領域の分野横断的な情報交換を行うことができる場となると思います。

当社はこの討論会に毎年、複数題の研究発表を行っています。実行委員として運営側にも関わっています。
今後も本学会への参加を通じて、環境化学物質研究のさらなる活性化を目指して分析機関の一員として、研究・分析技術支援を継続し、社会貢献していきたいと考えています。