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有効数字のお話
以前、「教科書に載らない分析の話」(https://www.shimadzu-techno.co.jp/column/index.html)というコラムを掲載させていただきましたが、その続編です。
 万全の準備を行い、細心の注意を払った試料調製や実験器具、分析機器を取り扱っても、データを数字としてまとめる際に分析者だけが知り得る情報をどの様に報告するか悩むことがあります。その一つに有効数字があります。
 プリン体0.00 %と脂質0 %と表示されたプリン体フリーのビールがあります。
 0.00 %と表示されているのでプリン体の濃度は0.005 %未満であることを謳っていますが、脂質は0 %表示なので0.5 %未満であることを示しています。
 同じゼロの表現でもその背景にある数字の意味は全く違っており、ここではプリン体を限りなく少なくしたビールである事をアピールしています。
 同様にアルコール分の表示では、5.5 %表示なら5.45 %以上5.55 %未満、5 %表示なら4.5 %以上5.5 %未満となります。このように、どこまで確信を持って濃度表示するのか、各社の思惑や苦労が、有効数字という形に滲み出ているのです。
 皆様はどのビールを飲まれるでしょうか。
 
  A社 B社 C社 D社
プリン体 0 0.00 0.00 0.00
糖質 0 0 0 0
アルコール分 5.5% 5.5% 4% 5%
  ビールイメージ図

 現在の分析機器の大部分はデジタルで数字が表示されます。
 筆者の学生時代は天びんも分析機器の出力表示もアナログ、最終の計算手段も計算尺と全くのアナログ時代を過ごしました。このため数字の取り扱いも恣意的な要因があったことは否めません。
 一方、デジタルは一見恣意的な要素は含まない、まっとうな数字のように思われますが如何でしょうか?

 賢明な読者の皆様は、実験操作に使われた器具、試薬、装置にはある不確かさを含んでいるため、これらを考慮した有効数字で表示しなければならないとお気づきのことと思います。
 有効数字はJIS K0211『分析化学用語(基礎部門)』で「測定結果などを表わす数字のうちで、位取りを示すだけのゼロを除いた意味のある数字」であると規定されています。一般にアナログ表示では最小目盛りの1/10までを有効数字とするとされており、デジタル表示の測定器の場合、表示の最小桁まで測定感度があり、最小桁まで有効数字と見なせるとされています。ただし、取扱説明書などで感度を確かめておく必要があります。
 感度とはJIS K0211で「a.ある量の測定において、検出下限で表した分析方法又は機器の性能。b.検量線の傾きで表した分析方法の性能。」と記されていますが、デジタル測定器の感度は、「a.ある量の測定において、検出下限で表した分析方法又は機器の性能。」を指します。

  計算尺   電卓

 有効数字とは対象となる数値の精度に関する表現を意味し、有効数字の幅を最小桁で表示する場合と全桁数で表示する場合があります。
 最小桁で表示する場合は「小数第○位まで有効」などと表現します。数値が整数の場合は「1の位まで有効」などと表現します。
 12.3 mgは小数第1位まで有効ですが、最小桁は先に述べたように測定器の感度によって決まります。全桁数で表示する場合は「有効数字○桁」あるいは「○桁が有効」などと表現します。12.3 mgは有効数字3桁となります。全桁数は測定器の感度と測定量によって決まります。


 これらのことを踏まえて、実際の分析現場で注意しなければならないことについて考えてみましょう。
 例えば分析天びんで試料Aを1.23 g、試料Bを234 mg測り取った場合、単位を揃えるために試料Aの秤量値を1230 mgと記載すると、どの様な問題が生じるのでしょうか。
 1.23 gの表示は1.225 g以上1.235 g未満を意味し、0.01 gの幅を持っています。
 一方、1230 mgの表示は1229.5 mg以上1230.5 mg未満となり、その幅は1 mgとなり全く違った意味を与えることになります。試料Aの秤量値は
1.23×103 mgとしなければなりません。あるいは試料Bの秤量値を試料A の秤量値の単位に揃え、0.234 gと表示することになります。
 このように位取りのために末尾のゼロを勝手に書き加えることは、有効数字に異なった意味を持たせることになり、避けなければなりません。

 四則演算の場合ですが、試料Aと試料Bを合わせたときの重量は、
           1.23 g+0.234 g=1.46 g
  あるいは    1.23×103 mg+234 mg=1.46×103 mg

 引き算したときの重量は、
           1.23 g−0.234 g=1.00 g
  あるいは   1.23×103 mg−234 mg=1.00×103 mg

 このように、対象数値中で有効数字の最後の桁が最も大きな位に揃えることが原則となります。
 乗除については、
         ァ12.3×2.3456=28.85088 ⇒ 28.8
         Α12.3÷2.3456=5.24386 ⇒ 5.24

 このように、対象数値中で有効数字桁数が最も少ないものに揃えることが原則となります。
 一連の演算がある場合は都度有効数字の丸めを行うのではなく、最終の演算が終了した時点で一回だけ数字の丸めを実施します。また、12.251を12.25とし、次に12.2と段階を踏んで丸めてはいけません。小数第1位で丸めるならば、12.3としなければなりません。

 数値の丸め方はJIS Z8401『数値の丸め方』に記述されており、原則、四捨五入が用いられます。
 ただし、1.235や1.245のように数値を丸める幅の一つ下の桁が5の場合、この5が明確に5なのか、切り捨てや切り上げられた5なのか判らないと解釈されます。
 そこで、四捨五入による偏りを防ぐために、丸める幅の最後の桁が奇数の場合は切り上げ、偶数の場合は切り捨てとします。すなわち1.235は1.24に1.245も1.24となります。

 参考資料
 1. 日本工業規格 JIS K0211
 2. 日本工業規格 JIS Z8401