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土壌・地下水汚染評価におけるDomenico式の適用性研究
土壌や地下水汚染の広がりをより正確に予測
環境省の計算ツールなどで使用されているDomenico式を発展させ、予測精度を高めた数理モデルを開発しました
土壌・地下水汚染の調査では、分析値を確認するだけでなく、「汚染がどこまで広がるか」「追加調査をどの範囲まで行うべきか」などを判断する必要があります。当社では、こうした判断を支えるため、分析技術に加えて、汚染の広がりを予測する数理モデルの研究にも取り組み、その成果が学術論文として採択されました。
土壌・地下水汚染評価で求められること
土壌中の有害物質は、雨水や地下水の流れによって移動し、周辺へ広がることが知られています。そのため、土壌・地下水汚染の調査や対策では、現在の汚染濃度を測定するだけでなく、その汚染が将来に渡ってどの方向へ、どの距離まで移動するかを予測・推定する必要があります。
このような予測・推定には、環境省が公開している計算ツールなどが用いられます。このツールでは、地下水の流れ、汚染物質の拡散、土壌への吸着、分解などを考慮しつつ、汚染物質の到達範囲が計算されます。
Domenico(ドメニコ)式とは
Domenico式は、土壌・地下水中で汚染物質が水流に乗って移動しながら、周囲へ広がり、濃度が薄まっていく様子を表す数式です。土壌・地下水汚染の実務では、汚染の到達範囲や濃度低下を予測・推定するために利用されています。
この式の利点は、比較的少ない条件で計算を実行できることです。一方で、地下水の流れが複雑な場所、汚染源のすぐ近く、地層の性質が大きく変化する場所などでは、実際の汚染の広がりを十分に表せないことが知られています。
地表の汚染源から帯水層に到達した汚染物質が、地下水の流れに沿って下流側へ移動・拡散し、距離とともに濃度が低下していく様子を示した概念図です。
本研究で明らかにしたこと
当社は、Domenico式がどのような条件で妥当な近似になるのか、また、どのような条件で注意が必要になるのかを、偏微分方程式の解析に基づいて明らかにしました。偏微分方程式とは、地下水の流れや拡散といった、時間と場所によって変化する現象を表すための方程式です。
Domenico式は、汚染源から十分に離れた場所で、汚染物質の広がりを予測するための近似式として理解できることを明らかにしました。
2. 計算結果に差が生じる理由
汚染物質が地下水の流れ方向だけでなく、横方向だけでなく深さ方向にも広がる現象が、計算結果の差につながることを明確にしました。
3. 汚染源付近での注意点
汚染源のすぐ近くでは、Domenico式の前提となる近似が成り立ちません。この領域を評価するには、Domenico式とは別の評価式を用いる必要があります。
4. 実務で使い分けるための考え方
Domenico式に基づく簡易評価が有効な場面と、更なる精密な評価が必要とされる場面を見極めることが重要です。
研究成果について
本研究論文 “Revisiting the Domenico Plume Formula through Saddle-Point Asymptotics” は、地下水汚染・汚染物質輸送を扱う国際専門誌 Journal of Contaminant Hydrology に掲載されました。当社では、こうした研究成果を、土壌・地下水汚染の分析、調査計画、リスク評価、対策検討に活用していきます。
https://doi.org/10.1016/j.jconhyd.2026.105038
Journal of Contaminant Hydrologyに掲載された論文の概要
https://www.shimadzu-techno.co.jp/news/gakkai/ronbun_3.html
この研究が実務に役立つ場面
土壌・地下水汚染の評価では、分析値を得ることだけが目的ではありません。重要なのは、その結果をどのように解釈し、次の調査や対策にどうつなげるかです。
- 分析結果の意味を整理できます:検出された濃度が、周辺地下水への影響や将来の拡散にどのような意味を持つのかを検討できます。
- 追加調査の位置づけを明確にできます:観測井戸の設置位置、調査範囲、追加サンプリングの必要性を検討する際の根拠になります。
- 簡易評価と詳細評価を使い分けられます:環境省計算ツールなどによる概略評価で十分な場合と、より精密なシミュレーションを検討すべき場合を整理できます。
- 過不足のない対策判断につながります:過小評価によるリスクの見落としや、過大評価による過剰な対策を避けるための判断材料になります。
島津テクノリサーチが提供できること
当社は、土壌・地下水の分析だけでなく、得られた分析値をもとにした評価、調査計画、対策検討までを見据えた技術支援を行います。分析値を「測って終わり」にせず、事業者様の判断に使える情報として整理することを重視しています。
対象物質や規制値、調査目的に応じて、適切な分析方法をご提案します。
調査結果の解釈
濃度分布、地下水流向、周辺環境への影響可能性を踏まえて、結果の意味を整理します。
汚染拡散の評価
Domenico式などの計算モデルを用いた概略評価や、必要に応じた詳細評価を検討します。
対策・追加調査の検討
調査範囲、観測井戸、追加分析、対策方針の検討を技術面から支援します。
よくあるご質問
- この研究は新しい分析方法ですか?
- いいえ。土壌や水を測定する分析方法そのものではありません。分析で得られた濃度データを用いて、汚染がどのように広がる可能性があるかを評価するための数理モデルに関する研究です。
- 環境省の計算ツールと何が関係しているのですか?
- 土壌・地下水汚染の評価で用いられる環境省の計算ツールでは、汚染物質の移動や濃度低下を予測・推定するためにDomenico式に基づく考え方が使われています。本研究は、その式の理論的背景と適用上の注意点を整理し、物質拡散の点で高度化することに成功しました。
- 計算ツールを使えば、どの土地でも正確に予測できますか?
- いいえ。計算ツールは有用ですが、地下水の流れ、地層の不均一性、汚染源の形状、対象物質の性質などによって、計算結果の信頼性は変わります。現地条件を踏まえて結果を解釈することが重要です。
- PFASなどの新しい汚染物質にも関係しますか?
- はい。Domenico式は特定の物質だけを対象にした式ではなく、地下水中で移動する汚染物質の広がりを考えるための基礎的なモデルです。PFASのように地下水を介した移動が問題となる物質についても、評価の考え方として重要です。ただし、物質ごとの吸着性、分解性、規制値などを踏まえた検討が必要です。
- どの段階で相談すればよいですか?
- 調査前の計画段階、分析結果が出た後の解釈、追加調査や対策方針の検討段階など、いずれの段階でもご相談ください。早い段階でご相談いただくことで、目的に合った調査設計がしやすくなります。
関連情報・参考リンク
ご相談ください
土壌・地下水汚染に関する分析、調査計画、分析結果の解釈、地下水への影響予測、今後の対策検討などでお困りの際は、お気軽にご相談ください。対象物質や調査目的に応じて、適切な評価方法をご提案します。
2026.07.07 522