background image background image

ポリ塩化ナフタレン(PCN)

概要

 ポリ塩化ナフタレン(以下、PCN)は、難分解性、高蓄積性であり、人や高次捕食動物への長期毒性を有することから、2015年5月に開催されたPOPs条約第7回締約国会議(COP7)で、 塩素数が2以上のものについて新たに同条約の附属書A(廃絶)及び附属書C(非意図的放出の削減)に追加されることが決定されました。日本においても、対象物質の廃絶に向けた 取組や焼却炉等からの非意図的な放出の削減に向けた取組が始まっています。  PCNは、ダイオキシン類と同様に、廃棄物等の焼却過程で、非意図的に生成し、排ガス中に排出されます。また、過去には、潤滑油及び切削油、木材用の防腐剤、防虫剤、 かび防止剤、塗料等に用いられ、絶縁油中にPCNが含まれている事例等も確認されています。
 当社はさまざまな媒体中のPCNの分析法を確立しています。排出ガス中のPCNの測定方法(※)の策定にも関わっています。環境や生体中のモニタリング、絶縁油中や各種製品中の含有量調査、 無害化処理法の技術開発などを分析で支援します。
 PCNの分析はぜひ当社にご用命ください。

 ※「排出ガス中のPOPs(ポリ塩素化ビフェニル、ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロロベンゼン、ポリ塩化ナフタレン、ヘキサクロロブタジエン)の
   測定方法マニュアル」(平成31年3月 環境省水・大気環境局大気環境課)
    http://www.env.go.jp/air/osen/manual2/pdf_rev201903/03_chpt3-2.pdf

PCNとは

 ポリ塩化ナフタレン(PCN)はナフタレンの1 つ以上の水素原子が塩素と置換した化合物の総称です。化合物は75 種存在します。

18_img01

 PCNは、潤滑油及び切削油、木材用の防腐剤、防虫剤、かび防止剤、塗料(防腐用,防虫用又はかび防止用のもの)等に用いられてきました。
 ポリ塩化ビフェニル(PCB)とよく似た構造で、化学的、熱的に安定なことや電気絶縁性があるなどの特性を持つため過去に絶縁油等にも用いられ、絶縁油中にPCNが含まれている事例等も確認されています。
 また、ダイオキシン類と同様に、廃棄物の焼却過程や非鉄金属の精錬過程等において、非意図的に生成することも示されています。

 ※ポリ塩化ビフェニル(PCB)の分析については業務案内の「PCB廃棄物の処理に伴う分析」「絶縁油中の微量PCB分析」をご覧ください。

法規制・規格

PCNの規制について

 日本では、塩素数が3以上のPCNは昭和54年8月14日に、塩素数が2のPCNは平成28年4月1日に化審法の第一種特定化学物質に指定され、製造や輸入、使用が原則禁止されています。また、塩素数が1の1-クロロナフタレンが、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化学物質把握管理促進法)の第2種指定化学物質に指定されています。
 なお、平成27年5月に開催されたPOPs条約第7回締約国会議(COP7)で、塩素数が2以上のものについて新たに同条約の附属書A(廃絶)及び附属書C(非意図的放出の削減)に追加されることが決定されました。 今後、国際的に協調して製造・使用等の廃絶等に向けた取組や焼却炉等からの非意図的な放出の削減に向けた取組等が必要となります。

 http://www.env.go.jp/press/101318.html [環境省HPへ]

当社におけるPCN分析の優位性について

 当社は各種試料中のPCNの測定に関し、国内外の有識者とともに分析方法の確立に取り組み、各媒体(絶縁油中、環境中、生体中、製品中、排気ガス中など) におけるGC-HRMSによる分析方法を確立し、すでに多くの受託分析の実績があります。特に排ガス中PCNの測定については測定方法マニュアルの策定に携わるなど豊富な実績があります。
 絶縁油のPCB分析では、測定機器としてGC/ECD(ガスクロマトグラフ/電子捕獲型検出器)を用いた場合、PCNが混入している場合にはPCBとPCNの分離が難しく 、高度な分離分析技術が必要です。当社ではこのよう場合にも含め、すべてGC-HRMSを用いて対応しています。
 なお、GC-HRMSを用いた場合でも、POPs農薬の一つであるクロルデン類とPCNの精密質量が全く同じであるため、その妨害により正確な定量が困難な場合があるなど、 前処理も含め測定時には技術と経験が必要です。

関連情報

分析技術開発したPCN関連の論文と学会発表

Takasuga,T., Inoue,T., Ohi,E., Ireland,P., Suzuki,T., Takeda,N.:
Determination of halogenated aromatic and polycyclic aromatic hydrocarbons formed during MSW incineration.
Organo Halogen Compounds, 19, 41-44 (1994)
Takasuga,T., Inoue,T., Ohi,E., Umetsu,N., Ireland,P., Takeda,N.:
Development of all congener specific, HRGC/HRMS analytical method for Polychlorinated Naphthalens in environmental samples.
Organo Halogen Compounds, 19, 177-182 (1994)
Takumi Takasuga, Tsuyoshi Inoue, Etsumasa Ohi, Kurunthachalam Senthil Kumar:
Formation of Polychlorinated Naphthalenes, Dibenzo-p-Dioxins, Dibenzofurans, Biphenyls, and Organochlorine Pesticides
in Thermal Processes and Their Occurrence in Ambient Air.
Arch. Environ. Contam. Toxicol., 46, 419-431 (2004)
高菅卓三,中井勉,中村明広,大井悦雅,井上毅,劒持堅志:
ポリ塩化ナフタレン(PCN)のGC-HRMS高感度分析技術とその課題,
第17回環境化学討論会, 神戸市, 6月, 講演要旨集, 538-539 (2008)
高菅卓三,松神秀徳,嶽盛公昭:
GC-HRTOFMSによる環境試料の高感度・高精度スクリーニング分析の有用性評価,
第18回環境化学討論会, つくば市, 6月, 講演要旨集, 580-581 (2009)
高菅卓三,中野 武,柴田康行:
塩素化パラフィンの非意図的POPs 汚染 -生産量急増の化成品の不純物の課題-
環境化学23 (3),115-121(2013)


 その他、POPs条約の対象物質(POPs、New POPs)についても、当社はGC-HRMSやLC-MS/MSを用いた高感度、高精度の分析法を確立
しています。

 ※POPs、New POPsの分析については業務案内の「POPs」をご覧ください。

 

20201018