概要


イオンクロマトグラフを用いた医薬品添加剤中の亜硝酸イオン測定
概要
近年、サルタン系医薬品やラニチジンなどの医薬品から発がん性物質であるN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)などのニトロソアミン類が検出され、一部の製品が自主回収されるなど問題となり、厚生労働省からニトロソアミン混入の自主点検の通知が発出されています。
ニトロソアミン類は酸性条件下でアミン類と亜硝酸塩が反応して生成することが知られています。原薬の合成過程で用いる亜硝酸塩が残留した場合や、製剤に用いる添加剤に亜硝酸が混入していた場合にはニトロソアミン類の生成する可能性が高まるため、製造過程での亜硝酸塩のモニタリングはニトロソアミン類混入のリスクを低減させる手段となり得ます。
今回、亜硝酸塩の混入リスクの評価を目的として、医薬品添加剤中の亜硝酸塩の測定についてご紹介します。
対象化合物
亜硝酸イオン NO2-
分析・試験装置
-
サプレッサ型イオンクロマトグラフィー
イオンクロマトグラフ Prominence HIC-SP -
イオンクロマトグラフ Prominence HIC-SP
試料
①でんぷん(トウモロコシ由来)
②D-マンニトール
③ステアリン酸マグネシウム(植物由来)
分析・試験方法
試料を水に溶解または抽出し、イオンクロマトグラフ(IC)を用いて亜硝酸イオンとして検出します。
分析・試験結果
亜硝酸イオン標準試料のクロマトグラムと検量線

図1 標準試料のクロマトグラム
表1 下限値および再現性
成分名 | 下限値(mg/L) | 面積値再現性(n=6) | ||
検出下限S/N=3 |
定量下限S/N=10 | 濃度 mg/L |
%RSD | |
NO2- | 0.001 | 0.003 | 0.002 | 3.6 |

図2 検量線
レベル |
濃度(mg/L) |
面積 |
1 | 0.002 | 403 |
2 | 0.004 | 862 |
3 | 0.01 | 2223 |
4 | 0.02 | 4501 |
各試料のクロマトグラムと分析結果
医薬品添加剤として用いられる①でんぷん、②D-マンニトール、③ステアリン酸マグネシウム(試料①~③は当社購入品を使用)の分析例を以下に示します。
いずれの試料についても良好な添加回収率が得られました。
-
図3 ① でんぷん (とうもろこし由来)
- 試料溶液
標準添加試料溶液
NO2-標準試料溶液
-
図4 ② D-マンニトール
- 試料溶液
標準添加試料溶液
NO2-標準試料溶液
-
図5 ③ ステアリン酸マグネシウム (植物由来)
- 試料溶液
標準添加試料溶液
NO2-標準試料溶液
-
表2 医薬品添加物中の亜硝酸イオン
試料名 *含有量
µg/g標準添加量
mg/L添加回収率
%でんぷん
(とうもろこし由来)**0.01 0.004 105 D-マンニトール <0.06 0.004 103 ステアリン酸マグネシウム
(植物由来)<0.15 0.004 103 <:検出下限値未満
*:粉末試料中の含有量
**:定量下限値以下のため参考値
※GLP非対応
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2023.09.14 336