概要


LC-ICP-MS/MS法による出汁中の形態別ヒ素、セレンの同時分析
2016年08月23日更新
概要
食品に含まれる有害物質は消費者の関心が高く、確実に監視することが求められています。
有害な元素の中でも、ヒ素、セレンは海産物に豊富に含まれる一方で、その化学形態により毒性が大きく異なる元素として知られています。
今回、魚介系出汁(昆布出汁、いりこ出汁、鰹節出汁)中の、ヒ素化合物およびセレン化合物をLC-ICP-MS/MS法により分析し、 総ヒ素、総セレンの測定結果と比較しました。
試料
市販の昆布、煮干し、鰹節の乾物に超純水を加えて沸騰寸前まで加熱し、放冷後、上澄みをろ過し、測定検液としました。
分析・試験方法
LCのカラム出口とICP-MS/MS装置のネブライザーを直結し、LCで分離された成分を溶離液と共にICP-MS/MS装置に直接導入し、下記の条件でLC-ICP-MS/MS分析を行いました。
■分析・試験条件
・LC | ・ICP-MS/MS | |||||||||||||||
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・LC | |||||||||
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・ICP-MS/MS | |||||||||
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分析・試験結果
■LC-ICP-MS/MS 形態別ヒ素、セレン分析クロマトグラム
無機ヒ素 | As_Ⅴ:ヒ酸、As_Ⅲ:亜ヒ酸 |
---|---|
有機ヒ素 | As_MMA:モノメチルアルソン酸、As_DMA:ジメチルアルシン酸、As_ArB:アルセノベタイン |
無機セレン | Se_Ⅵ:セレン酸、 Se_Ⅳ:亜セレン酸 |
![]() 形態別ヒ素標準品 クロマトグラム |
![]() 形態別セレン標準品 クロマトグラム |
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●昆布出汁 |
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![]() 形態別ヒ素 クロマトグラム |
![]() 形態別セレン クロマトグラム |
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●いりこ出汁 |
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![]() 形態別ヒ素 クロマトグラム |
![]() 形態別セレン クロマトグラム |
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●鰹出汁 |
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![]() 形態別ヒ素 クロマトグラム |
![]() 形態別セレン クロマトグラム |
■分析結果
表1 形態別ヒ素分析結果 | 単位ng/mL | ||||||
試料 | 総ヒ素 | 無機態 | 有機態 | Unknownピーク | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
ヒ酸 | 亜ヒ酸 | モノメチルアルソン酸 | ジメチルアルシン酸 | アルセノベタイン | |||
昆布出汁 | 1700 | Trace | 7 | Trace | N.D. | 1200 | あり |
いりこ出汁 | 240 | Trace | 2 | N.D. | Trace | 190 | あり |
鰹出汁 | 100 | N.D. | N.D. | Trace | Trace | 82 | なし |
表1 形態別ヒ素分析結果 | 単位ng/mL | |||
試料 | 昆布出汁 | いりこ出汁 | 鰹出汁 | |
---|---|---|---|---|
総ヒ素 | 1700 | 240 | 100 | |
無機態 | ヒ酸 | Trance | Trance | N.D |
亜ヒ酸 | 7 | 2 | N.D | |
有機態 | モノメチルアルソン酸 | Trance | N.D | Trance |
ジメチルアルシン酸 | N.D | Trance | Trance | |
アルセノベタイン | 1200 | 190 | 82 | |
Unknownピーク | あり | あり | なし |
※ヒ素の毒性: 亜ヒ酸 > ヒ酸 > 有機態
表2 形態別セレン分析結果 | 単位ng/mL | |||
試料 | 総セレン | 無機態 | Unknownピーク | |
---|---|---|---|---|
セレン酸 | 亜セレン酸 | |||
昆布出汁 | 38 | N.D. | N.D. | なし |
いりこ出汁 | 32 | N.D. | Trace | あり |
鰹出汁 | 64 | N.D. | Trace | あり |
表2 形態別セレン分析結果 | 単位ng/mL | |||
試料 | 昆布出汁 | いりこ出汁 | 鰹出汁 | |
---|---|---|---|---|
総セレン | 38 | 32 | 64 | |
無機態 | セレン酸 | N.D | N.D | N.D |
亜セレン酸 | N.D | Trace | Trace | |
Unknownピーク | なし | あり | あり |
※セレンの毒性: 亜セレン酸 > セレン酸
魚介系出汁からは、国内の飲料水基準の10ng/mLを超える総ヒ素100~1700ng/mL、総セレン32~64ng/mLが検出されました。
形態別ヒ素、セレン同時分析の結果、ヒ素化合物は毒性が低いArB(アルセノベタイン)が、検出された総ヒ素の内70~80%を占めました。また、毒性が高い無機ヒ素は僅かでした。昆布出汁といりこ出汁では同定には至りませんでしたが、ヒ素糖(有機態)などと推定されるヒ素化合物が確認出来ました。
セレン化合物は、昆布出汁は、今回の条件では検出に至らず、詳細は不明でした。 いりこ出汁、鰹出汁は少量の亜セレン酸を検出しましたが、同定に至らなかった有機態を確認しました。
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