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ICP-MS/MSによる高マトリクス試料中のTiの定量

2013年7月16日

概要

ICP-MS/MSを用いることで、従来のICP-MSで測定が難しかった測定元素とマトリクスの組み合わせにおける測定元素の選択性が向上し、精度よく測定することが可能です。
ここではICP-MS/MS独自の機能であるマスシフト法を用いたチタン(Ti)の定量分析事例を紹介します。

Ti分析の問題点

Ti化合物は難溶解性であり、溶液化には熱濃硫酸による処理が効果的です。しかし、ICP-MS測定溶液の調製に硫酸を用いると、硫黄(S)を含む多原子イオンが生成し、ICP-MS測定時の妨害となります(表1)。
また、48Tiの同重体として48Caが存在するため、従来のICP-MSでは測定が難しい元素でした。
 

表1 Tiの安定同位体比と生成しうる多原子イオン

質量数 46 47 48 49 50
Ti同位体比(%) 8.25 7.44 73.72 5.41 5.18
Ca同位体比(%) 0.004   0.19    
生成しうる
他原子イオン(例)
14N16O2+,
32S14N+
32S15N+ 32S16O+,
34S14N+
32S17O+ 32S18O+,
34S16O+,
36Ar14N+

分析・試験方法​

ICP-MS/MSによるマスシフト法

ICP-MS/MSは、従来の四重極ICP-MSのコリジョン・リアクションセルの前にもう一組の四重極を配置し、検出されるイオンの選択性をさらに向上させた分析装置です。
ICP-MS/MSの特長を生かした測定手法として、前段四重極(Q1)と後段四重極(Q2)とを異なる質量数(m/z)として測定する「マスシフト法」があります(図1)。
マスシフト法では、目的元素と干渉成分の反応ガスに対する反応性の違いを利用し、目的元素のみを反応ガスと反応させて別のm/zで検出します。反応ガスには酸素とアンモニアが主に用いられますが、目的元素と干渉成分の組み合わせによって、ガスの種類を含めた装置条件の最適化が必要です。

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図1 マスシフト法の原理(酸素マスシフト法による48Ti測定の例)

分析・試験事例

模擬試料としてTi標準液に硫酸およびCaを適宜混合した溶液を調製し、酸素またはアンモニアを反応ガスとしたマスシフト法によりTiの定量を行いました。
検量線はTi標準液を希硝酸で希釈した溶液で作成しました。アンモニアマスシフト法では設定値に近い値が得られたのに対し、酸素マスシフト法では硫酸およびCaの添加に伴い見かけ上のTi濃度が上昇しました(表2)。
Tiを含まない硫酸およびCaのみの溶液を同様に測定したところ、酸素マスシフト法では見かけ上のTi濃度がTi標準液の時と同様に上昇したため、酸素マスシフト法では干渉成分も+16にシフトしていることが考えられ、今回の試料の測定にはアンモニアマスシフト法が適していることが分かりました。

表2 マスシフト法によるTi測定結果

測定方法 Q1:m/z=48→Q2:m/z=64 Q1:m/z=48→Q2:m/z=150
マトリクス \ 設定濃度 Ti 10ng/mL Ti 0ng/mL Ti 10ng/mL Ti 0ng/mL
0.1M HNO3 10.0 <0.1 9.3 <0.1
+2%(v/v)H2SO4 11.0 1.0 9.4 <0.1
+2%(v/v)H2SO4 / 20μg/mL Ca 14.0 4.0 9.0 0.1

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