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高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による食品の分析

概要

 HPLCは、測定モードによって様々な食品の含有成分を分析することができます。
 ここでは、2つの分析事例をご紹介します。
 一つ目は、蒸発光散乱検出器(ELSD)を用いた、グラジエント分析による5種類の希少糖の分析事例です。二つ目は、サイズ排除モードによる食用油脂の分子量の測定事例です。

分析・試験事例

(1)希少糖の分析

 昨今、人々の健康志向の高さから機能性を謳った食品が多く販売されています。糖についても希少糖入りと表示されている食品が見られるようになってきました。各糖について研究も進み、プシコースなどは血糖値上昇抑制作用があるとされています。
 今回、希少糖5種類の分析を行いました。食品中には、グルコース、フルクトースも多量に含まれているため分離が必須です。 蒸発光散乱検出器(ELSD)を用い、グラジエント分析を行うことで各成分の定量が可能となります。
  *「希少糖」とは国際希少糖学会で定義されている「自然界にその存在量が少ない単糖とその誘導体」を指します。

<分析条件>

カラム Imtakt Unison UK-Amino 3mm(4.6 mm I.D.×250 mm L)
移動相 A)水
  B)アセトニトリル
検出器 蒸発光散乱検出器 ELSD
注)本条件では、D体・L体の分離はできません。
図1 標準品のクロマトグラム

図1 標準品のクロマトグラム

市販の希少糖入りシロップを分析しました。希少糖が10%以上含まれていることがわかりました。

図2 希少糖入りシロップ(市販品)のクロマトグラム

図2 希少糖入りシロップ(市販品)のクロマトグラム

表2 測定結果

成分名 g / 100g %
D-プシコース 4.23 6.59
D-タガトース 1.20 1.87
D-アロース 6.08 9.47
フルクトース 20.94 32.6
グルコース 31.75 49.5
64.20  

(2)食用油脂 異なる分離モードでの分析

 日常生活の中で私たちが口にする食用油脂(ココナッツオイル、こめ油、バター、なたね油)を、2つの異なる分離モードで分析しました。 油脂は脂肪酸とグリセリンがエステル結合したもので、結合する脂肪酸の違いで性質が異なります。
 脂肪酸は二重結合の有無で飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸に分類され、一般的に、飽和脂肪酸は動物性油脂に、不飽和脂肪酸は植物性油脂に多く含まれます。

構造式

■逆相モード

 逆相モードはHPLCで最もよく用いられる分析手法であり、疎水性の高いものほどカラムに強く保持されます。 油脂の分析では一般的に、炭素鎖が長いものほどカラムに強く保持されます。 食用油脂を逆相モードで分析した例を示します。

<分析条件>

カラム Cadenza CD-C18
移動相 アセトン/アセトニトリル=7/3(v/v)
検出器 吸光度検出器(UV)、示差屈折率検出器(RID)

逆相モードでは、複数のピークが得られ、標準品を使用することにより油脂の詳しい構成成分を知ることができます。

図3 逆相モードでの食用油脂のクロマトグラム

図3 逆相モードでの食用油脂のクロマトグラム

■サイズ排除モード

 高分子(生体高分子や合成高分子化合物など)の分子量の分布状態を観察するために用いられる、分析手法のひとつです。食用油脂をサイズ排除モードで分析した例を示します。

<分析条件>

カラム Shim-pack GPC-801(8.0 mm i.d. × 300 mm L.)+GPC-8025(8.0 mm i.d. × 300 mm L.)
移動相 テトラヒドロフラン
検出器 示差屈折率検出器 (RID)

 サイズ排除モードでは、よりシンプルなピークが得られ、各試料の大まかな違いをみることができます。
 標準品にポリスチレンを用い、分子量を求めた結果を表3に示します。

表3 測定結果

試料名 数平均分子量 (Mn) 重量平均分子量 (Mw) 多分散度 (Mw/Mn)
ココナッツオイル 980 1010 1.04
米油 1350 1420 1.05
バター 1120 1180 1.05
なたね油 1410 1440 1.03

(ポリスチレン換算分子量)
*試料濃度 ココナッツオイル、こめ油、なたね油:5 g/L、バター:10 g/L

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2016.10.18