概要


ダイナミック超微小硬度計によるシリコンゴムシートの硬度評価
2020年10月16日更新
概要
ゴムはプラスチックに比べて軟らかいため、試験力を負荷した時のくぼみが大きくなりますが、試験力を除荷すると弾性回復してくぼみが小さくなるため、ビッカース硬度計のくぼみを読み取る方法では硬度測定をすることができません。
ダイナミック超微小硬度計DUH-211Sはくぼみの対角線長さを測定するのではなく、試験力と押し込み深さの関係をリアルタイムに自動計測するので、ゴムの様な弾性体試料の硬度評価に威力を発揮します。
今回は、使用前後のシリコンゴムシートの硬度評価を行った事例を紹介します。
分析・試験方法

図1 試料固定方法(概略図)
試験機 | ダイナミック超微小硬度計 DUH-211S (島津製作所製) |
---|---|
試料 | シリコンゴムシート (新品および緩衝用として数年間使用したもの) |
測定圧子 | 稜間角115°三角錐圧子 (ダイヤモンド製) |
試験の種類 | 負荷・除荷試験 |
最大試験力[mN] | 0.49 |
最小試験力[mN] | 0.049 |
負荷速度[mN/sec] | 0.0150 |
負荷保持時間[sec] | 5 |
除荷保持時間[sec] | 5 |
試験方法 | シリコンゴムシートを適当な大きさに切り、図1に示す薄物用アタッチメント3形で固定し、試験を行いました。 |
分析・試験結果
試験結果のまとめを表1に、「試験力-押し込み深さ」グラフを図2に示します。
硬度評価は、マルテンス硬さ(HMT115)と押し込み弾性率(Eit)にて行いました。
表1 試験結果
シリコンゴムシート | Fmax | hmax | HMT115 | HV* | Eit |
---|---|---|---|---|---|
[mN] | [μm] | [N/mm2] | [N/mm2] | ||
使用前 | 0.48 | 8.056 | 0.274 | 0.065 | 4.29510-2 |
使用後 | 0.49 | 8.903 | 0.0224 | 0.046 | 3.78510-2 |
(注)表中の各記号の意味は、下記の通りです。 | |||
Fmax | : | 最大試験力 | |
hmax | : | Fmaxにおける押し込み深さ | |
HMT115 | : | 115°三角錐圧子によるマルテンス硬さ | |
HV* | : | 換算ビッカース硬さ | |
Eit | : | 押し込み弾性率 |
マルテンス硬さ(HMT115)は、次の式で計算しました。
HMT115= Fmax/(26.43×hmax2)
HMT115は、装置の剛性などによるマシンコンプライアンス補正(Cf補正)と圧子先端の丸み等の影響である面積関数補正(Ap補正)を含んだ値です。

図2 試験力-深さグラフ
表1より、マルテンス硬さ(HMT115)および押し込み弾性率(Eit)の高い試料の順序は次の通りになります。
マルテンス硬さ(HMT115) | ・・・ | 使用前>使用後 |
押し込み弾性率(Eit) | ・・・ | 使用前>使用後 |
今回のシリコンゴムシート試料では、使用に伴い硬度とともに押し込み弾性率の低下も見られました。
■まとめ
ビッカース硬度計では測定が困難な軟らかい試料も、くぼみを読み取る必要のないダイナミック超微小硬度計DUH-211Sを用いた低試験力の硬度測定を行うことで、劣化による試料表面の硬度変化の評価が可能であることを示しました。
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