概要


GC-MS異臭分析システムを用いたマスクのカビ臭分析
概要
異臭クレームの原因として、原料や製品の物流・保管過程でのダンボール等容器包装材からのにおい移りが知られています。なかでも、カビ臭原因物質の一つである2,4,6-トリクロロアニソールは嗅覚閾値(人間がにおいを感じる最小濃度)がppt(一兆分の一)レベルと非常に低いため、異臭試料中の濃度が微量であることが多く、GC-MS分析でも検出するのが難しい物質です。
今回は、模擬的にカビ臭を添加した不織布マスクを異臭試料として、GC/MS異臭分析システムを用いたGC-MS/MS(MRM)法による測定事例をご紹介します。
GC/MS異臭分析システム
GC/MS異臭分析システム(島津製作所)*1)は、過去の異臭クレームで特定された代表的な異臭原因物質の情報と分析パラメータが登録されたデータベースシステムで、登録物質の検量線情報から推定定量することが可能です。GC-MS/MS(MRM)法で測定することで、従来のGC-MS(SIM)法に比べて高選択的に分析でき、夾雑成分の影響を受けにくいクロマトグラムが得られます。
*1)GC/MS異臭分析システム https://www.an.shimadzu.co.jp/gcms/off-flavor/index.htm (島津製作所HP)
分析・試験方法
- 市販の不織布マスク(1cm角に粗切)に2,4,6-トリクロロアニソール(カビ臭)の標準物質を100pg添加し、全量(3.3g)を100mL容バイアル瓶に入れて密栓しました。
- バイアル瓶を60℃で1時間加温後、バイアル瓶中の放散ガスをダイナミックヘッドスペース法で捕集管(TenaxTA)に濃縮しました。
- 捕集管をGC/MS異臭分析システムを用いて校正した加熱脱離-GC-MS/MSで分析しました。
① 試料調製工程 | ② ダイナミックヘッドスペース法(イメージ図) | ||||||||||
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③ 分析条件
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① 試料調製工程 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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② ダイナミックヘッドスペース法(イメージ図) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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③ 分析条件
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GCMS-TQ8030 | TD-20 |
分析・試験結果
図1に定性分析GC-MS(Scan)法のTICクロマトグラムを示します。マスク由来の夾雑成分が多種検出されており、2,4,6-トリクロロアニソールの溶出位置にも夾雑成分が認められます。
図2にGC-MS(SIM)法とGC-MS/MS(MRM)法のクロマトグラムの比較図を示します。GC-MS(SIM)法では夾雑成分の影響で検出・確認できなかった2,4,6-トリクロロアニソールが、GC-MS/MS(MRM)法では明確なピークとして高選択的に検出できました。
GC/MS異臭分析システムにより推定される2,4,6-トリクロロアニソール放散量は8.9pg(S/N=82)で、試料重量あたりの放散量は2.7ppt(pg/g)でした。

図1 GC-MS(Scan)法 TICクロマトグラム

図2 GC-MS(SIM)法とGC-MS/MS(MRM)法のクロマトグラムの比較図
GC/MS異臭分析システムを用いたGC-MS/MS(MRM)法は、従来のGC-MS(SIM)法と比べて高選択的に異臭原因物質を分析できます。夾雑成分の多い試料(環境・食品・各種材料など)を対象とした微量の異臭分析をお考えの際は、ぜひ当社にご相談ください。
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2022.02 428