概要


ICP質量分析法によるアルカリ性溶液中の金属元素分析
2015年02月17日更新
概要
ICP質量分析装置(ICP-MS)は、微量金属元素の測定に広く用いられています。
試料は酸分解等の前処理により硝酸酸性の溶液として測定するのが一般的ですが、分解が困難な試料や、操作中の測定対象元素の汚染、揮発や沈殿による測定対象元素のロスが問題になることがあります。
当社では、キシレン溶解試料を直接ICP-MSに導入する方法を検討し、有機溶剤等の酸分解が煩雑な試料を希釈のみで測定できる体制を整えています。
今回は、アルカリ性の水溶液をICP-MSにより測定する方法を検討しました。
分析・試験方法
ICP-MS用多元素混合標準液を、アルカリ性溶液と、希硝酸でそれぞれ希釈してICP-MSに導入し、検量線の作成と、最低濃度の繰り返し測定から検出限界(DL)を算出しました。
標準液 | : | USP 232 Element Impurities, Standard1(Sigma-Aldrich) バナジウム、ニッケル、銅、ヒ素、モリブデン、カドミウム、水銀、鉛 |
アルカリ性溶液 | : | 0.05%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)/0.1%ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル/0.1%テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)/2%ブタノール |
硝酸酸性溶液 | : | 硝酸(1+49) |
分析・試験結果
検量線は、測定した8元素ともアルカリ性溶液の方が数倍程度傾きが大きくなりました。
特にAsについては硝酸酸性では充分な感度が得られない濃度領域で、良好な直線性・安定性を得ました。
検出限界を比較すると、AsとHgでアルカリ性溶液が有利となり、NiとCuで硝酸酸性が有利となりました。
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図1 検量線例(As、Hg) |
元素 | 測定質量数 | 検出限界(DL) | |
---|---|---|---|
アルカリ性溶液 | 硝酸酸性溶液 | ||
V | 51 | 0.025 | 0.020 |
Ni | 60 | 0.12 | 0.062 |
Cu | 63 | 0.14 | 0.058 |
As | 75 | 0.006 | 0.010 |
Mo | 95 | 0.023 | 0.018 |
Cd | 111 | 0.015 | 0.013 |
Hg | 202 | 0.004 | 0.012 |
Pb | 208 | 0.001 | 0.001 |
表1 検出限界(DL)
今回用いたアルカリ性溶液は、血液や尿などの生体試料を凝固させることなく希釈することができ、生体試料の多検体処理、多元素同時測定に力を発揮するものと考えます。
2015.2.16
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