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触媒中の貴金属分析

2015年09月17日更新

概要

 自動車触媒中の白金(Pt)、ロジウム(Rh)等の貴金属元素は、触媒性能の精密評価、および希少金属の有効利用の観点から、高精度の定量分析が要求されます。
 ここでは、使用済み自動車触媒標準物質NIST CRM 2557を用い、Pt, Rh, Pdを複数の方法で測定した事例を紹介します。

分析・試験事例

■蛍光X線分析法

 試料を強熱して付着した有機物を除去したあと、粉砕・プレスして測定します。
 検出される全ての元素の相対比を算出するファンダメンタルパラメータ(FP)法により、検量線なしで含有量の推定が可能です。

表1 蛍光X線分析結果(FP法) (単位:%)

元素 NIST CRM 2557
測定結果 認証値(参考値)
Al 28.18 (20)
Si 13.95 (18)
Mg 5.61 (6)
Pb 1.24 1.393
Ba 1.12 (0.29)
Fr 1.04 (1.5)
Ce 0.84 (1.3)
Ni 0.53 (0.5)
P 0.35 -
Ca 0.19 (0.2)
 
元素 NIST CRM 2557
測定結果 認証値(参考値)
Zn 0.18 (0.1)
K 0.14 -
Pt 0.12 0.113
Mn 0.06 -
La 0.05 (0.07)
Zr 0.04 (0.03)
Pb 0.02 0.0233
SrO 0.01 -
Rh < 0.01 0.0135
元素 NIST CRM 2557
測定結果 認証値(参考値)
Al 28.18 (20)
Si 13.95 (18)
Mg 5.61 (6)
Pb 1.24 1.393
Ba 1.12 (0.29)
Fr 1.04 (1.5)
Ce 0.84 (1.3)
Ni 0.53 (0.5)
P 0.35 -
Ca 0.19 (0.2)
Zn 0.18 (0.1)
K 0.14 -
Pt 0.12 0.113
Mn 0.06 -
La 0.05 (0.07)
Zr 0.04 (0.03)
Pb 0.02 0.0233
SrO 0.01 -
Rh < 0.01 0.0135

■ICP発光分光分析法

 粉砕した試料を溶液化して測定します。試料が完全に溶解する方法を選択することで、高精度で測定することができます。
 自動車触媒の場合は、図2のように主成分によるスペクトル干渉が認められるため、目的成分を抽出する操作が必要です。

図2 触媒中の貴金属 溶液化フロー

図1 触媒中の貴金属 溶液化フロー

図3 ICP発光スペクトルの一例(抽出なし検液)

図2 ICP発光スペクトルの一例(抽出なし検液)

■ICP質量分析法

 ICP発光分光分析法と同様に、試料を溶液化して測定します。高感度・高精度で定量できる一方で、灰分や有機物の多い溶液は希釈が必要です。
 自動車触媒の場合は、抽出なしの方法で良好な結果が得られました。

 

    表2 ICP発光分光分析法 および ICP質量分析法 定量分析結果    (単位:mg/kg)

元素 NIST CRM 2557
認証値
Pt 1131 ± 11
Rh 135.1 ± 1.9
Pd 233.2 ± 1.9
 
ICP発光分光分析法
(抽出あり)
n AV SD %
7 1116 7.9 98.7
7 132.1 4.1 97.8
5 224.7 3.3 96.4
 
ICP発光分光分析法
(抽出なし)
n AV SD %
2 1054 3.7 93.2
2 121.4 10.5 89.9
1 226.1 - 96.9
 
ICP質量分析法
(抽出なし)
n AV SD %
- - - -
2 122.3 1.5 90.6
2 231.7 4.3 99.4
元素 NIST CRM 2557
認証値
Pt 1131 ± 11
Rh 135.1 ± 1.9
Pd 233.2 ± 1.9
ICP発光分光分析法
(抽出あり)
n AV SD %
7 1116 7.9 98.7
7 132.1 4.1 97.8
5 224.7 3.3 96.4
ICP発光分光分析法
(抽出なし)
n AV SD %
2 1054 3.7 93.2
2 121.4 10.5 89.9
1 226.1 - 96.9
ICP質量分析法
(抽出なし)
n AV SD %
- - - -
2 122.3 1.5 90.6
2 231.7 4.3 99.4

■おわりに

 蛍光X線分析では、多くの元素についての情報が迅速に得られるため、主成分元素のスクリーニングや、試料の種類の同定に力を発揮します。
 一方、ICP発光分光分析法およびICP質量分析法は、最適な溶液化方法・分離方法と組み合わせることで、高精度分析が可能となります。

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