概要
        
        毛髪中の水銀分析
2012年11月14日更新
概要
 水銀(Hg)は、毒性が強いため有害元素として各種法令で規制されていますが、他の有害元素に比べて沸点が低いため、ICP発光分光分析法などの多元素同時分析に適さないとされています。そのためHgの分析には、Hg蒸気を発生させて直接原子吸光セルに導入する、専用装置が用いられます。
 ここでは、加熱気化原子吸光分析法による毛髪試料中のHg測定事例を紹介します。
分析・試験方法
 Hg専用の分析装置には、還元気化原子吸光分析法と加熱気化原子吸光分析法の2つの方式があります。
 両者の模式図を図1および図2に示します。
			 
			図1 還元気化原子吸光分析 模式図  | 
			
			 
			図2 加熱気化原子吸光分析 模式図  | 
		
| (出典 JLS K0121:2006 原子吸光分析通則) | 
 還元気化原子吸光分析法は、装置内で試薬を添加して還元反応によりHg蒸気を発生させて測定する方法で、各種水質分析の公定法に指定されています。試料は還流冷却器つきの分解容器内で酸分解後、測定に適した酸化還元状態の水溶液にする必要があります。
 一方、加熱気化原子吸光法は、試料を加熱して発生するHg蒸気を捕集管に回収後、捕集管を加熱してHg蒸気を一気に原子吸光セルに導入する方法です。試料中のHgを捕集管に濃縮することが出来るため少量の試料(数mg~数100mg)で測定可能なこと、また、試料ボートに乗せられるものであれば固体・液体を問わず直接装置に導入可能なことが特長です。
 今回は、少量の試料を前処理なしで測定できる、加熱気化原子吸光分析法を採用しました(写真1)。
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			 写真1 加熱気化原子吸光分析装置(本体外観およびボートチェンジャー拡大)  | 
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分析・試験事例
 毛髪標準試料NIES CRM No.13中のHgを測定した結果を表1に、測定時の検量線を図3に示します。
 標準試料の測定結果は良好でした。
表1 Hg測定結果
| 元素 | 保証値 | 測定結果(n=3) | 
|---|---|---|
| Hg | 4.42±0.20 | 4.59±0.13 | 
(単位 μg/g)
図3 Hg検量線
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