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ダイナミック超微小硬度計による金属の硬度評価

2018年10月21日更新

概要

 ダイナミック超微小硬度計 DUH-211Sを用いて3種類の金属(銅、真鍮、アルミニウム)について試験を行い、マルテンス硬さおよびくぼみ読み取り硬さを算出した事例を紹介します。

分析・試験方法

図1 試料固定方法(概略図)

図1 試料固定方法(概略図)

試験機 ダイナミック超微小硬度計 DUH-211S
(島津製作所製)
試料 表面研磨された金属
(銅、真鍮、アルミニウム)
測定圧子 稜間角115°三角錐圧子
(ダイヤモンド製)
試験の種類 負荷・除荷試験
最大試験力[mN] 980.00
最小試験力[mN] 1.96
負荷速度[mN/sec] 46.7114
負荷保持時間[sec] 5
除荷保持時間[sec] 5
試験方法 試料を薄物用アタッチメント3形(図1)で固定し、=3で試験を行い、平均値で評価しました。

分析・試験結果

試験結果のまとめを表1に、「試験力-押し込み深さ」の重ね描きグラフを図2に示します。
硬度評価は、マルテンス硬さ(HMT115)とくぼみ読み取り硬さ(HT115)および換算ビッカース硬さ(HV*)にて行いました。

表1  試験結果(平均値)

試料名 Fmax hmax L HMT115 HT115 HV*
[mN] [μm] [μm] [N/mm2] [μm]
986.61 4.3010 28.749 1,210.43 191.357 143.329
真鍮 986.23 5.1366 34.269 848.286 134.806 94.329
アルミニウム 987.11 4.8855 31.741 937.996 156.962 108.606
elu
(注)表中の各記号の意味は、下記の通りです。
  Fmax 最大試験力
  hmax Fmaxにおける押し込み深さ
  L くぼみの高さ
  HMT115 115°三角錐圧子によるマルテンス硬さ
  HT115 くぼみ読み取り硬さ
  HV* 換算ビッカース硬さ

マルテンス硬さ(HMT115)は、次の式で計算しました。

HMT115= Fmax/(26.43×hmax2

HMT115は、装置の剛性などによるマシンコンプライアンス補正(Cf補正)と圧子先端の丸み等の 影響である面積関数補正(Ap補正)を含んだ値です。

くぼみ読み取り硬さ(HT115)は、次の式で計算しました。

HT115= 160.07×F/L2

くぼみの大きさが顕微鏡を用いて測定可能な場合、くぼみの高さから硬さを求めることができます。

(注2) マルテンス硬さ(HMT115)とくぼみ読み取り硬さ(HT115)について
マルテンス硬さ(HMT115)は、試験力を負荷している状態の押し込み深さから計算しますので、塑性変形と弾性変形を含んだ硬さ値となります。
一方、読み取り硬さ(HT115)は、試験力を取り除いた後のくぼみの大きさから計算しますので、塑性変形のみの硬さ値が求められます。
図2 試験力-深さグラフ

図2 試験力-深さグラフ

表1より、マルテンス硬さ(HMT115)、くぼみ読み取り硬さ(HT115)および換算ビッカース硬さ(HV*)の高い試料の順序は次の通りです。

マルテンス硬さ(HMT115) ・・・ 銅 > アルミニウム > 真鍮
くぼみ読み取り硬さ(HT115) ・・・ 銅 > アルミニウム > 真鍮
換算ビッカース硬さ(HV*) ・・・ 銅 > アルミニウム > 真鍮

■まとめ

ダイナミック超微小硬度計DUH-211Sを用いることで、押し込み深さから塑性変形と弾性変形を含んだマルテンス硬さ(HMT115)と、試験後のくぼみの高さから塑性変形のみによるくぼみ読み取り硬さ(HT115)の両方を算出することができ、また、くぼみ読み取り硬さから換算ビッカース硬さを推定することができることを示しました。

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