特徴・用途
ネオニコチノイド系農薬の分析
2018年07月18日更新
特徴・用途
ネオニコチノイド系農薬は1990年代から使用され始めた殺虫剤で、水溶性、浸透性、残効性、低揮発性、熱安定性に優れていることから、稲・果樹・野菜等に幅広く使用されており、その使用量は近年増加傾向にあります(下記グラフ参照)。
ネオニコチノイド系農薬は神経伝達物質であるアセチルコリンの正常な働きを攪乱することが知られ、我が国をはじめ、世界各国で発生しているミツバチ大量死の原因物質と疑われています。
また、アセチルコリンは、昆虫のみならず、ヒトでも神経伝達物質として自律神経系、神経筋接合部、中枢神経系において作用していることから、ネオニコチノイド系農薬のヒトの脳への影響、とりわけ胎児・小児など脆弱な発達中の脳への影響を懸念する意見もあります。
対象化合物
■構造
ネオニコチノイド系農薬はニトログアニジン系、ニトロメチレン系及びピリジルメチルアミン系から成り、その名の示す通り、ニコチンに構造が類似しています。
物質名 | 構造式 | CAS No. |
---|---|---|
Imidacloprid |
|
105827-78-9 |
Thiacloprid |
|
111988-49-9 |
Nitenpyram |
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150824-47-8 |
Acetamiprid |
|
160430-64-8 |
Thiamethoxam |
|
153719-23-4 |
Clothianidin |
|
210880-92-5 |
Dinotefuran |
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165252-70-0 |
Nicotine |
|
54-11-5 |
法規制・規格
■各種規制
農薬取締法、食品衛生法及び毒劇物取締法(イミダクロプリド、チアクロプリド及びアセタミプリド)がありますが、残留農薬基準値は欧米と比較して、緩い値となっています(下表参照)。また、欧米は規制の方向へ向かっているのに対し、わが国では使用を推奨するような動き(次世代ネオニコチノイド系農薬(フルピラジフロンやスルホキサフロル)の新規登録や残留農薬基準値の緩和等)があります。
■海外の動向
年数 | 欧州 | 北米 |
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1999 | フランス、ヒマワリのイミダクロプリド(バイエル・商品名:ガウチョ)種子処理を予防的に一時禁止 | |
2000 | オランダ、イミダクロプリドの開放系栽培での使用禁止 | |
2003 | 6月)フランス農務省、イミダクロプリドの種子処理の危険性を警告 | 米国、クロチアニジン販売開始 |
2004 | フランス、ミツバチ大量死を原因としてフィプロニルを販売禁止 | |
2006 | フランス、イミダクロプリド使用禁止 | |
2008 | イタリア、イミダクロプリドとクロチアニジンの種子処理を禁止 ドイツ連邦消費者保護・安全局、イミダクロプリドとクロチアニジンの認可取り消し、ネオニコ系農薬7種の販売を禁止 |
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2010 | 7月)ダウ・アグロケミカル、米国などでネオニコ系農薬スルホキサフロル(sulfoxaflor)の登録申請 | |
2012 | 6月)フランス農業・水産省、クルーザOSR(チアメトキサム)の販売認可取消し | |
2013 | 4月)EU、13年12月から3種類のネオニコ系農薬(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)に2年間のモラトリアム 7月)EU、13年12月末からフィプロニルの使用制限 12月)欧州食品安全機関、胎児や幼児の発達中の脳や神経系に影響を与える可能性を考慮し、アセタミプリドとイミダクロプリドの摂取許容量の引き下げ提案 |
5月)環境保護庁、ダウ・アグロサイエンスの新たなネオニコ系農薬スルホキサフロル(sulfoxaflor)を登録 8月)環境保護庁、ネオニコ系4種類に使用制限表示を義務付け発表 9月)カナダ保健省、使用制限表義務付け |
2014 | 2月)フランス、2022年から農業以外での農薬使用禁止を決定 9月)フランス、農薬の空中散布を禁止 |
5月)カナダ・全国農民連合、ネオニコ系農薬の5年間モラトリアムを提言 7月)米国、野生保護区でのネオニコ系農薬全廃(16年1月まで) 9月)シアトル市議会、市有地でのネオニコ系農薬使用禁止を決議 11月)カナダ・オンタリオ州、ミツバチ保護を目的としたネオニコチノイド系農薬の使用削減規制を発表 |
2015 | 4月)ポートランド市、市有地でのネオニコ系農薬の使用を禁止 8月)EU、スルホキサフロル承認 9月)EU、フルピラジフロン承認 |
4月)環境保護庁、イミダクロプリドなど4種類のネニコチ系農薬の新規登録や変更を停止 11月)米国環境保護庁、スルホキサフロルを正式に登録取消 |
2016 | 3月)フランス議会、18年9月からのネオニコ系農薬禁止法案を可決 7月)フランス、原則18年9月からネオニコ系農薬を全面禁止 8月)EU委員会、浸透移行性農薬シアントラニリプロールを承認 |
3月)米国メリーランド州議会、18年からの家庭用ネオニコ系農薬購入禁止法案を可決 10月)米国環境保護庁、スルホキサフロルを再登録 11月)カナダ保健省、イミダクロプリドを3年で使用禁止の方針 |
2017 | 9月)フランス、スルホキサフロル製剤2品種を承認 9月)EUでフィプロニルが失効 |
4月)米国メリーランド州議会、送粉者保護を目的とし て同州が指定した区域における、ネオニコチノイド農薬などの使用禁止州法案を可決 |
2018 | 1月)欧州議会農業委員会、ネオニコ系農薬の禁止を含む養蜂問題に関する決議を賛成38、反対1で可決 | 2月)カナダ・ケベック州は3 種類のネオニコチノイド農薬(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)への規制を強化 |
出典:http://organic-newsclip.info/nouyaku/neonico-table.htmlより、一部抜粋
実績
■分析実績と確かな分析技術
当社は、尿のようなヒト生体試料中のネオニコチノイド系農薬に加え、その代謝物の分析実績があり、その成果を発表しています。また、ネオニコチノイド系農薬のみならず、フィプロニルやスルホキサフロル、エチプロールといった次世代の農薬にも対応できます。
分析は最高感度クラスのLC-MS/MSを用いて実施します。
・ | 渡邉清彦1、八十島誠1、高菅卓三1、原田浩二2、小泉昭夫2(1; 島津テクノリサーチ、2; 京都大・医) 「LC-MS/MSを用いたヒト尿中ネオニコチノイド系農薬およびその代謝物の高感度分析法の開発」 第24回環境化学討論会(札幌;2015) |
・ | 渡邉清彦、上田宏明、八十島誠、高菅卓三(島津テクノリサーチ) 「ヒト尿試料中のネオニコチノイド系農薬の高感度分析」第26回環境化学討論会(静岡;2017) |
・ | 環境省 平成29年度化学物質の人へのばく露量に係る生体試料調査委託業務 |
2018.07.12 195