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第2回 環境化学物質 3 学会合同大会(第31回環境化学討論会他)参加報告

学会発表・論文 学会参加報告 環境化学討論会

第2回 環境化学物質 3 学会合同大会 参加報告
(第31回環境化学討論会/第27回日本環境毒性学会研究発表会/第25回環境ホルモン学会研究発表会)

会場看板

「領域を越えて環境化学物質問題を解決する─多様な視点からの新たな研究展開」

 

会 期:2023 年5 月30 日(火)- 6 月2 日(金)
    5 月29 日(月)に公開シンポジウムを開催
会 場:あわぎんホール(〒770-0835􀀃 徳島県徳島市藍場町2 丁目14 番地)
主 催:一般社団法人日本環境化学会、 日本内分泌撹乱物質学会(通称:環境ホルモン学会)、 日本環境毒性学会
共 催:一般社団法人セタックジャパン
大会長:田尾 博明(産業技術総合研究所)、宮崎 航(弘前大学)、宇野 誠一(鹿児島大学)

 

● 当社の研究成果発表内容      https://www.shimadzu-techno.co.jp/news/gakkai/news230619.html
● 環境化学物質3学会合同大会の情報 https://j-ec.smartcore.jp/M022/forum/touron31/
● 第31回環境化学討論会の情報    https://www.j-ec.or.jp/conference/31th/index.html

 

5月30日-6月2日、あわぎんホールにおいて、環境化学物質3学会合同大会が開催されました。
本大会は第31回環境化学討論会、第27回日本環境毒性学会研究発表会、第25回環境ホルモン学会研究発表会の合同大会で、環境汚染物質に関わる3学会が合同で開催する大会となりました。
 

会場

会場(あわぎんホール)

今年も引き続き、ハイブリッド形式(Web参加と会場参加)で開催され、昨年を上回る参加者で大変盛況な大会となりました。当社は連名も含め、5題の研究成果を発表しました。
大会の概要や主な研究報告、講演の内容などをレポートします。

総発表演題数は407題(特別講演、特別企画を除く)、口頭発表180題(Web発表はわずか3題)、ポスター発表227題、参加者数754名(うち学生133名)と、コロナ禍を経て最近では規模も大きく、対面参加の重要性を参加者が認識していました。

一般の口頭発表やポスター発表でも8つの重点テーマセッションに加え、特別講演と5つの特別企画も別途設定され、議論を重ねる形で開催されました。また、学会前日には公開シンポジウム、最終日には市民シンポジウムが開催され、広く開かれた学会でした。

特別講演:「ヒトと野生生物の共生のために:ポストコロナ時代における化学物質のリスク評価と生物多様性の保全」
講演者 :五箇 公一 博士(国立環境研究所)

 講演後、3学会の会長をパネリストに招き、ヒトと野生生物の共生や、環境化学物質のリスクと生物多様性について議論。

◇ 特別企画

1.    「質量分析と環境科学:革新を生む突破口はどこか?」
2.    「メタボロミクス、特にリピドミクスと疾患」
3.    「野外における生態毒性を捉える挑戦」
4.    「Human Biomonitoring による曝露評価」
5.    「有機フッ素科学からゼロポリューションを考える」

<主な発表内容>

対象物質としては、既存の化学物質としてダイオキシン類などのPOPs関係、臭素系難燃剤も継続した研究を実施されていました。昨年度も多く見られた有機フッ素化合物(PFC)の発表が53題、プラスチック関係(マイクロプラスチックを含む)が49題と更に増加し、全体の25%を占めました。
当社からも「生分解度測定法の高度化を目指した海洋生分解性プラスチックの生分解度指標となる分解生成物の探索」「生分解性プラスチックと汎用プラスチックの熱分解特性の評価」と題した発表を行いましたが、聴講者が多く、活発な質疑応答が行われるなど、3学会を通して関心の高さが伺えました。

また、世界的なヘリウム不足に対応した代替キャリアガス(ヘリウムや窒素)を用いた分析手法検討も複数報告されており、自由集会でも各機関の苦労が報告されるなど対策方法の検討が活発に議論されていました。ほかにも、炭化水素・PAHs、農薬、VOC、PPCPs、紫外線吸収剤、重金属・微量元素など、多くの対象物質について発表がありました。

テーマとしては分析技術(網羅分析・機器分析)が61件と最多で、特に網羅分析に関する発表が注目されていました。自由集会でもAIQS=自動同定定量システムに関するセッションが組まれており、一斉分析や未知化合物分析に対する関心の高まりが感じられました。また、毒性影響やリスク評価、生態影響など、合同大会ならではのテーマも数多く発表されていました。

 

<その他の企画内容>

大会に先立ち、5月29日に公開シンポジウムとして「環境研究総合推進費によるマイクロプラスチック問題の現状と研究について」を一般公開で開催されました。
マイクロプラスチックによる環境汚染とその生態系への影響についての現状認識を深めるとともに、マイクロプラスチック研究課題間の情報共有と連携を図る形で実施されました。
地元テレビ局の取材も入る中、参加者から活発な質問が出るなど注目度の高さがうかがえました。

懇親会にて(協力:徳島県阿波踊り協会所属 うきよ連)

懇親会にて(協力:徳島県阿波踊り協会所属 うきよ連)

6月2日には、市民シンポジウムとして「水都とくしまから市民による水辺づくりを考える」を一般公開で開催されました。吉野川の河口域にあって、138の河川が流れる「水都とくしま」から市民による水辺づくりを考える内容で実施されました。地域住民と地元企業、行政対応など様々な角度から見た内容の協議が行われました。また、「水都とくしま」に相応しく、会場から懇親会会場へは水上タクシーが運行されていました。

本大会を通じて、従来の環境化学研究だけでなく、環境毒性学や環境ホルモン研究など生体影響研究にも触れることができ、“多様な化学物質の複合曝露影響を、様々な要因を考慮して考えることの難しさと奥深さ”を知ることができました。こうした経験は3学会合同大会ならではと感じました。

 

来年2024年は広島市のJMSアステールプラザで7月2日(火)~5日(金)(予定)で環境化学物質2学会合同大会(日本環境化学会と日本環境毒性学会の2学会主催)として開催されます。
国内外の研究者や、他分野のスペシャリストとのネットワークも構築でき、分野横断的な情報交換を行うことができる場となると思います。

当社はこの討論会に毎年、複数題の研究発表を行っています。実行委員として運営側にも関わっています。
今後も本学会への参加を通じて、環境化学物質研究のさらなる活性化を目指して分析機関の一員として、研究・分析技術支援を継続し、社会貢献していきたいと考えています。