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熱物性測定

概要

熱分析は、日本産業規格(JIS)で「物質の温度を一定のプログラムで変化させながら、その物質のある物理的性質を温度の関数として測定する一連の技法の総称(ここで、物質とはその反応生成物も含む)」と定義されています。
当社で対応できる熱分析の手法には、下記のものがあります。

分析・試験装置

 

示差熱-熱重量同時測定装置〔TG-DTA〕

試料温度をプログラムに従って変化させながら、基準物質と試料の温度差(示差熱測定:DTA)と、熱重量(TG)を同時に測定できる。 
 

示差熱・熱重量(TG/DTA)同時測定装

示差熱-熱重量同時測定装置(TG/DTA)

測定温度: 室温 ~ 1400℃
測定項目: 重量変化、蒸発、分解、融解、ガスの吸・脱着、脱水
※TG測定単独の測定装置も設備しています。

事例1:PETのTG-DTA測定

PETのTG-DTA曲線を図1に示します。

図1. PETのTG-DTA測定

図1. PETのTG-DTA測定

試料からは、92℃付近にガラス転移、251℃付近に融解反応、437℃付近に熱分解反応がそれぞれ確認されました。

 

事例2:硫酸銅五水和物の測定

硫酸銅五水和物のTG-DTA曲線を図2に示します。

図2. 硫酸銅五水和物の測定

図2. 硫酸銅五水和物の測定

今回の試料からは、62℃, 97℃, 207℃付近に重量減少を伴う吸熱反応が確認されました。これらの吸熱反応は水の脱離と考えられ、次のような3段階の反応であることが知られています。
 

CuSO4・5H2O→ CuSO4・3H2O+2H2O
CuSO4・3H2O→ CuSO4・H2O+2H2O
CuSO4・H2O→ CuSO4+ H2O


また、重量減少率も概ね2:2:1となっています。

 

示差走査熱量計〔DSC〕

試料温度をプログラムに従って変化させながら、基準物質と試料の温度を測定し、その温度差から熱量を測定する。
 

示差走査熱量計

示差走査熱量計(DSC)

測定温度: 島津製     … -130 ~ 600℃
NETSCH製 … -170 ~ 600℃
測定項目: 融点、凝固点、ガラス転移、結晶化温度、結晶転移、硬化、酸化、比熱

事例1:樹脂の融点測定

ポリエチレンの測定結果を図1に示します。

図1. ポリエチレンの融点測定

図1. ポリエチレンの融点測定

今回の試料からは、122℃付近から融解反応とみられる吸熱反応が確認されました。

 

事例2:液体の凝固点測定

ヘキサンの測定結果を図2に示します。

図2. ヘキサンの凝固点測定

図2. ヘキサンの凝固点測定

試料からは、降温中の-110℃付近に凝固とみられる発熱反応、昇温中の-95℃付近に融解とみられる吸熱反応が確認されました。凝固反応が融解反応より低いのは、凝固点降下によるものと推察されます。
 

事例3:ABS樹脂の比熱測定

物体の温度を1K だけ上昇させるのに必要な熱量を熱容量といい、その単位質量あたりの熱容量を比熱容量といいます。
比熱は物質ごとに異なる固有の性質で、熱容量や熱伝導の理解に重要なパラメーターとなります。 測定は、空セル・試料・標準物質(α-アルミナ)をそれぞれ測定し、その結果から比熱容量を求めます。
ABS樹脂の室温付近の比熱測定結果を図3,4, 表1に示します。

図3. ABS樹脂のDSC曲線

図3. ABS樹脂のDSC曲線

図4. ABS樹脂の比熱曲線

図4. ABS樹脂の比熱曲線

 

  •  表1 比熱測定結果

      25℃
    ABS樹脂 1.358 J/g.K


比熱の値が大きいほど温まりにくく、冷めにくい性質を示します。鋼の比熱は約0.45J/g・Kですが、ABS樹脂はこれのおよそ3倍大きい値です。
したがって、鋼に比較して樹脂は温まりにくく、冷めにくい材料であることがわかります。

 

熱機械分析装置〔TMA〕

 

試料温度をプログラムに従って変化させながら、基準物質と試料の温度を測定し、その温度差から熱量を測定する。

各種部材の小型軽量化に伴い、微小な材料の僅かな挙動・変化を把握する必要性が高まっています。熱機械分析装置〔TMA〕では、微小な材料の僅かな挙動・変化などの機械的特性を評価できます。膨張、針入、引張り、三点曲げなどの豊富な測定モードや、多様なサンプルホルダーでお客様のさまざまなニーズに対応します。
当社では、世界最高水準の分解能を有するNETZSCH社のTMA 402 Hyperionを使い、ご要望にお応えします。

熱機械測定装置

TMA 402 Hyperion (NETZSCH社)

特長

最高分解能 0.125nm/digitを実現し、線膨張係数1×10-7/K以下の測定再現性
多彩な荷重モードを有し、精度の高いヤング率(E)の測定が可能
全自動真空置換ユニットにより、迅速な雰囲気置換と低酸素雰囲気下での測定が可能です

 

多様なサンプルホルダーでさまざまなニーズに対応


石英製・アルミナ製

測定仕様

サンプル

引張測定用チャック

測定温度範囲 -150 〜 1550 ℃
最⼩分解能 / 変位測定範囲 0.125 nm / 500 μmの場合  1.25 nm / 5000 μmの場合  
測定モード 膨張、針⼊、引張り、三点曲げ
サンプル形状(最⼤) バルク
フィルム
:30mmまでの円柱(φ12mm)、角柱(□12mm)
:30mm、幅8mm、厚さ1mmまで

 

関連情報