技術情報
ご依頼の手順 TEL/FAXでのお問合せ メールでのお問合せ 分析依頼票のダウンロード
トップ > 技術情報 > 無機・元素分析 > 磁石中のレアアース分析
磁石中のレアアース分析
■はじめに
 レアアース(Rare Earth Elements、希土類元素)はレアメタルの一種であり、産業に重要な役割を果たす一方で、産出国が限られているため資源確保が国家的課題となっています。
 電気電子機器や自動車では、モータ駆動部やスピーカなどの様々な用途で永久磁石が使われていますが、近年は磁力が強いネオジム磁石など希土類磁石の使用が急増しています。このため、使用済み製品をレアアース資源として利用するための、調査分析手法の確立が急がれています。
業務案内の「レアメタル・レアアースの分析」をご覧ください。
 そこで今回は、磁石試料を対象に、主成分〜少量成分元素のスクリーニングに優れた蛍光X線分析法と、指定元素の精密定量に優れたICP質量分析法で、それぞれ分析した結果を報告します。

■蛍光X線分析法(スクリーニング法)
 試料にX線を照射し、発生する元素固有の蛍光X線を分離・検出することで元素分析を行います。磁石試料の場合は、強熱により脱磁するだけで測定が可能です。
 結果は11Na〜92Uまでの元素の合計質量に対する割合で示されます(FP法)。酸素・ほう素などを計算に含まないため、定量値とは異なることに注意が必要です。また、性質の類似したレアアース同士のピークが分離困難な場合があります。

図1 蛍光X線分析用試料   図2 レアアース含有試料の蛍光X線スペクトル(一部)
図1 蛍光X線分析用試料   図2 レアアース含有試料の蛍光X線スペクトル(一部)
 
■ICP質量分析法(精密分析法)
 イオン化源としての誘導結合プラズマ(ICP)に水溶液試料を霧化・導入し、プラズマ中でイオン化した元素を四重極質量分析計で分離・検出することで元素分析を行います。磁石試料の場合は、塩酸・硝酸などを用いて溶液化する必要があります。
図3 レアアース混合溶液のMSスペクトル(一例)
 
■分析結果
 フェライト磁石(SrFe12O19)およびネオジム磁石(Nd2Fe14B)を対象に、蛍光X線分析法およびICP質量分析法でそれぞれ分析を行った結果を示します(レアアースは着色セル)。
 蛍光X線分析法ではフェライト磁石とネオジム磁石を同定することが出来、ICP質量分析法では各レアアースの精密定量をすることが出来ました。


 表1 蛍光X線分析法による測定結果    表2 ICP質量分析法による測定結果
元素 単位 推定定量結果(FP法)
フェライト磁石 ネオジム磁石
Al N.D. 1
Si N.D. 0.38
S 0.05 0.05
Cl N.D. 0.3
K N.D. 0.26
Ca 0.49 N.D.
Mn 0.44 N.D.
Fe 86.3 77
Ni 0.01 0.15
Cu 0.04 0.26
Zn 0.07 N.D.
Sr 12.5 N.D.
Nb N.D. 0.02
Sn N.D. 0.02
Pr N.D. 3.3
Nd N.D. 17.3
 
元素 単位 定量分析結果
フェライト磁石 ネオジム磁石
B N.D. 1.5
Sc N.D. N.D.
Y N.D. 0.0006
La 0.0002 0.006
Ce 0.0002 0.014
Pr 0.0002 6.6
Nd 0.0015 21.9
Sm N.D. 0.0012
Eu 0.0002 N.D.
Gd 0.0003 0.75
Tb N.D. 0.73
Dy N.D. 0.14
Ho N.D. 0.029
Er N.D. 0.001
Tm N.D. N.D.
Yb N.D. 0.16
Lu N.D. 0.0004
    注 ICP発光分光分析法による

 蛍光X線分析では、多くの元素についての情報が迅速に得られるため、主成分元素のスクリーニングや、試料の種類の同定に力を発揮します。ただし、レアアース元素は性質が類似しているためピーク分離が悪く、ネオジム磁石に少量含まれるGdやTbなどを検出することは出来ませんでした。
 一方、ICP質量分析は少量〜微量の精密定量に強みがあります。二つの分析方法を組み合わせることで、さまざまな調査ニーズにお応えすることが可能です。