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抗体医薬品のMRMメソッド構築例

2019年12月13日更新

概要

■はじめに

skyline

 タンパク質をLC-MS/MSで測定する際、予想されるMRM条件の組み合わせ数は、
【消化断片ペプチドの数】×【価数分布の数】×【プロダクトイオンの数】×【コリジョンエネルギー(CE)の数】に相当し(図1)、最適なMRM条件を手動で探していくことは非常に時間と手間がかかり、相当の知識も必要になります。

 今回、定量プロテオミクス用分析支援ソフトウェアSkyline*を活用することで、比較的簡単に酵素消化された抗体医薬品(リツキシマブ)のMRMメソッド開発を行うことができたので、その例を紹介します。 

予想されるMRM条件の組み合わせ数

図1. 予想されるMRM条件の組み合わせ数

分析・試験方法

■方法

Skylineを用いたMRMメソッド開発フローを図2に示します。

1. リツキシマブのアミノ酸配列をSkylineにインポート
2. 消化ペプチドを予測し、LabSolitions**のメソッドを作成
3. サンプルを測定し、結果をSkylineにインポート
4. ピークが検出されてないトランジションの削除と保持時間等の確認
5. LabSolutionsにて再度測定し、測定結果をSkylineにインポート
6. 最終的に定量に用いるペプチドとプロダクトイオンを選択し、メソッド完成
Skylineを用いたMRMメソッド開発フロー

図2. Skylineを用いたMRMメソッド開発フロー

分析・試験結果

■結果と考察

Skylineを活用することで、リツキシマブ消化断片のMRMトランジションを簡単かつ短時間で見つけることができます(図3)。

Skylineを使用せず手動で条件を探す場合

1. 消化酵素からペプチド断片を予測
2. 各ペプチド断片についてプロダクトイオンを予測
3. プリカーサー及びプロダクトイオンの価数を考慮
4. コリジョンエネルギーの最適化を行う
5. 選択するトランジションはターゲットタンパク質に特異的な配列であることを確認

などの操作を個別に行う必要があり、手間と時間がかかる上、相当の知識も必要となります。
しかしSkylineを使用すれば、このほとんどを自動化することができ、短い時間で最適なMRM条件を見つけることが可能です。

分析データをSkylineへインポートした際の画面

分析データをSkylineへインポートした際の画面

■結論

Skylineソフトウェアを使用することで、ペプチド消化断片のMRMメソッドを比較的簡単に作成することができます。
このソフトウェアは無料で利用可能なため、コストが抑えることができ、かつ、ベンダーフリーのソフトウェアなので、使用装置にとらわれないメソッド作成が可能であると考えられます。
*    Skyline 米国ワシントン大学医学部 MacCoss Lab,
このソフトウェアについてのお問い合わせには対応いたしかねます。
詳しくはホームページ(https://skyline.ms/project/home/begin.view)をご参照ください。
**    LabSolitions 解析やデータ管理などを行う分析装置制御システム(島津製作所製)

2019.12.03 372