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反応熱分解-GC/MS法によるポリカーボネート(PC)の末端基の解析
 熱分解-GC/MSは、微量の樹脂試料を小型加熱炉内で加熱後、任意の温度画分の発生ガスをオンラインでGC/MS分析する手法です。 試料を連続的に昇温加熱することで、比較的低温域で発生する微量残留溶媒や各種添加剤の定性分析を行い、 高温域で発生する樹脂の熱分解物を分析することで、樹脂種の同定や試料間比較、異同判別など多面的な材料分析が可能です。
 今回は、熱分解-GC/MSによる食品用ラップの分析事例をご紹介します。
■分析試料
 食品用ラップ:ポリ塩化ビニリデン(PVDC)製、耐熱温度100℃

■分析結果
  発生ガス分析(EGA-MS)法
     試料を50℃から600℃に連続加熱後、発生ガスをオンラインでMSに導入して得られたEGAサーモグラムから、 各温度域での発生ガスの分布を確認しました(図1)。 黒字のサーモグラム(TIC)が発生ガスの総量、赤字のサーモグラム(m/z=36)が母材(PVDC)の分解物にあたる 塩化水素(HCl)の発生ガスを示しています。
 黒字のサーモグラムより、試料の耐熱温度にあたる100℃加熱までは発生ガスは観測されず(A画分)、 耐熱温度を超えた100℃以上の昇温加熱により、次第に発生ガスの生成が観測されました。 100〜240℃(B画分)の発生ガスは試料に含まれる添加剤由来、240〜600℃(C画分)の発生ガスは、 塩化水素の存在から、母材(PVDC)の分解物由来の発生ガスと推定されます。
  図1 EGAサーモグラム
                      図1 EGAサーモグラム

  ハートカット分析(EGA-GC/MS)法
     前項のEGA-MS分析より得られたEGAサーモグラムから、温度画分A〜Cの発生ガスを選択的に分取して GC/MSの分離カラムに導入し、発生ガスの詳細な定性分析を行いました(EGA-GC/MS法)。
 試料の耐熱温度100℃に相当するA画分からは、残留溶媒や添加剤などの有機物ピークは観測されず、 実際の使用環境において、発生ガスはきわめて軽微であるものと考えられます(図2)。
  図2 熱脱着クロマトグラム(A画分)
                         図2 熱脱着クロマトグラム(A画分)

     耐熱温度以上の、100〜240℃に相当するB画分からは、添加剤(可塑剤)として、アセチルクエン酸トリブチル、 アコニット酸トリブチルが主ピークとして観測されました(図3)。
  図3 熱脱着クロマトグラム(B画分)
                          図3 熱脱着クロマトグラム(B画分)

     耐熱温度よりかなり高い240℃以降のC画分では、添加剤(可塑剤)は減衰した一方で、母材(PVDC) の脱塩素による塩化水素(HCl)とともに、残留塩素とビニリデンの環化反応により生成したクロロベンゼン類が観測されました(図4)。
 

図4 熱分解パイログラム(C画分)

                          図4 熱分解パイログラム(C画分)

   以上の結果より、今回の食品用ラップでは、実際の使用環境に相当する耐熱温度において発生ガスは観測されず、 耐熱温度を超えた高い温度域で、添加剤(可塑剤)と母材由来の塩素系分解物の発生ガスが確認されました。
 熱分解-GC/MSを使用した材料分析において、EGA-MS法から試料全体の熱特性を把握後、EGA-GC/MS法により対象となる 温度画分の詳細分析を行うことで、揮発性成分から母材由来の分解物成分を含む多面的な材料分析が可能です。

2016.1.18