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LC-ICP/MS法によるクロムの価数別測定

2013年07月16日更新

概要

 クロム化合物は主に0価(金属)・三価・六価の形態で存在しますが、価数によって有害性が大きく異なることが知られています。特に六価クロム化合物(Cr(VI))は発がん性や急性毒性があるため、各種の法令等で規制されています。
 広く普及している分析方法では、全クロム化合物を測定する方法、Cr(VI)だけを測定する方法(鉄共沈分離法・ジフェニルカルバジド吸光光度法)はありますが、三価クロム化合物(Cr(III))とCr(VI)を同時に測定する方法はありません。
 ここでは、高速液体クロマト分離ICP質量分析法(LC-ICP/MS)による水溶液中のクロム化合物の価数別測定を紹介します。

分析・試験事例

■標準試料のクロマトグラムと検量線

図1 標準試料のクロマトグラム

図1 標準試料のクロマトグラム

図2 検量線

図2 検量線

表1 検出下限と定量下限

測定項目 検出下限(ng/mL) 検出上限(ng/mL)
Cr(III) 0.13 0.42
Cr(VI) 0.05 0.17

■実試料測定

  試料を移動相で10倍希釈し、直接LC-ICP/MSに導入しました。
 標準溶液10ng/ml相当を用いた添加試験の回収率は、いずれも95~105%と良好でした。

表2 実試料測定結果

測定項目 水道水 ミネラルウォーター
無添加(ng/mL) 添加(ng/mL) 回転率(%) 無添加(ng/mL) 添加(ng/mL) 回転率(%)
Cr(III) ND 10.2 102 ND 10.0 100
Cr(VI) ND 9.8 98 ND 10.3 103
図3 水道水 添加試料のクロマトグラム

図3 水道水 添加試料のクロマトグラム

  なお、低濃度のCr(VI)のみを測定する方法として、イオンクロマトポストカラム吸光光度法にも対応可能です。試料により最適な方法を提案します。

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