background image background image

第29回環境化学討論会 参加報告

2021年6月3日更新

学会発表・論文 学会参加報告 環境化学討論会

第29回環境化学討論会 参加報告

開催期間:2021年6月1日-3日
開催地:千里ライフサイエンスセンター(大阪府豊中市)

29回環境科学討論会ロゴ


 

<当社の研究成果発表内容>
 https://www.shimadzu-techno.co.jp/news/news210608.html
<第29回環境化学討論会の情報>
 http://www.j-ec.or.jp/conference/29th/index.html

6月1日-3日、千里ライフサイエンスセンターにおいて第29回環境化学討論会(主催:一般社団法人日本環境化学会)が開催されました。
昨年開催予定であった大阪大会が新型コロナウイルス感染症の影響で1年延期され、初の試みとして、ハイブリッド(Web参加と会場参加)で開催されました。当社は連名を含み、7題の研究成果を発表しました。討論会の概要や主な研究報告、講演の内容などをレポートします。

登録参加者は475名、そのうちWeb参加は357名、会場参加は118名と、多くの方がWebで参加されました。
発表演題数は、270(口頭 128:ポスター142)題、そのうちWeb発表は212題、会場発表は58題と、発表もWebが主となりました。

今回、新たな試みとして特定の分野に特化した内容で運営する特別公開セッション(3テーマ)が討論会初日に開催されました。

討論会の様子 (特別公開セッションB)

討論会の様子 (特別公開セッションB)

特別公開セッションA;

緊急災害・事故時における有害化学物質の対応・管理手法の実際及び今後の方向性
特別公開セッション B;
極微量物質の高精度分析技術における新たな展開
特別公開セッションC;
有害化学物質による生体シグナル応答を質量分析計でどう捉えるか?

 

特別公開セッション Bでは、(一社)日本環境測定分析協会・極微量物質研究会共催企画として当社の高菅 卓三より講演を行いました。

<主な発表内容>

討論会の様子 (ハイライトセッション)

討論会の様子 (ハイライトセッション)

 対象物質としては、既存の化学物質では、PCB・POPs関係や臭素系難燃材、有機フッ素化合物等の有機ハロゲン化合物の発表が多く(全体の4分の1以上)、炭化水素・PAH、農薬、VOC、PPCPs、紫外線吸収剤、生理活性物質、界面活性剤、化成品・添加剤・可塑剤、たばこ、大気浮遊粉じん・PM2.5、重金属・微量元素、放射性物質など、多くの対象物質について発表がありました。
 特に、2019年にPOPs条約の附属書に追加されたPFOAなどの有機フッ素化合物(PFC)に関する研究の発表数が増えており、関心の高まりが感じられました。

 発表内容(テーマ)としては、分析技術(網羅分析・機器分析・サンプリング・前処理)に関するものが全体の約4分の1を占め、浄化・処理技術・リサイクルに関するものが例年よりも発表数が増えていました。

 特徴として、プラスチックに関連する発表が約30件と例年より多く、特別セッションも企画されました。
 環境中や生物中のマイクロプラスチック汚染に関する発表や、プラスチックごみやマイクロプラスチック中に含まれる有害物質に関する発表などが多く、マイクロプラスチック問題への関心が非常に高いことが伺えました。


 特別講演は、「胎児期・小児期の環境汚染物質曝露による健康リスク影響及びその予防対策」と題し、国立環境研究所 エコチル調査コアセンターの中山 祥嗣 先生から子供の環境保健における化学の役割についてのお話が、千葉大学の森 千里 先生から環境汚染物質のヒト胎児期曝露による子供への影響のバイオマーカー検索についてのお話がありました。

 特別セッションは、「環境汚染物質に対する未来型の計測・毒性評価手法の開発とその導入による展開研究」、「マイクロプラスチックの計測手法と環境影響に関する現状と課題」と題したセッションが企画されました。 

<その他の企画内容>

 その他の企画としては、受賞講演(第30回環境化学功績賞 有薗幸司先生(熊本大学 薬学部)、第30回環境化学学術賞 大塚宜寿先生(埼玉県環境科学国際センター))、企業展示、ランチョンセミナー(緊急事態宣言の延長に伴い、残念ながら2社のランチョンセミナーは中止)、高校環境化学賞の発表(高校環境化学賞の受賞校によるWeb 形式のポスター発表)、環境化学賞授賞式、ハイライトセッションなどコロナ禍で制約のある中ではありましたが、盛りだくさんの企画がありました。

受付の様子

受付の様子

 今回、Web 口頭発表、Web ポスター発表及び会場ポスター発表もYouTube の動画配信で、討論会終了後1カ月間(後に7月19日まで延長)視聴可能となりました。
 質疑応答は YouTube のコメント欄で実施されました。

 動画は発表者が時間をかけて作成されたことが伺える質の高いものが多く、時間を気にせずに全ての発表を見ることができた点で、参加者からも好評でした。しかしながらリアルで対面での議論の重要性も再認識できた学会でした。

 ハイブリッド(Web参加と会場参加)方式での開催というコロナ禍における初の試みでしかも緊急事態宣言の延長に伴い、Web参加に急きょ変更された方が多くあったにも関わらず、実行委員会のご尽力のおかげで運営上も大きな問題はなく、今後の新しい討論会のあり方を示すことができたと、高い評価がされていました。


 来年の討論会は富山国際会議場で6月14日(火)~16日(木)に3学会(日本環境化学会、日本環境毒性学会、日本内分泌撹乱化学物質学会)による合同大会として開催予定です。

 日本環境化学会は、環境と化学物質との関わりについての情報交換と普及および学問、技術の進歩発展を目的として、機関誌 [環境化学] の発行、講演会の開催、研究発表の場としての環境化学討論会の開催を行うなど、産学官のバランスの取れた活動を行っています。

 当社はこの討論会に毎年、複数題の研究発表を行っています。 実行副委員長、実行委員として運営側にも関わっています。

 今後も分析機関の一員として、研究支援や分析技術の開発等を継続し、本学会への参加を通じて、環境化学研究のさらなる活性化に貢献していきたいと考えています。