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ICH Q3Dガイドライン

法規制・規格

 日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)において、ICH Q3D:医薬品の元素不純物ガイドライン ステップ5がサインオフされました。本ガイドラインの概略を表1に示します。
 24種類の金属について、一日許容暴露量(PDE値)が合意されました。また、既に第十七改正日本薬局方第二追補の一般試験法に「元素不純物試験法」、参考情報に「製剤中の元素不純物の管理」が収載されており、第十八改正日本薬局方で統合され、ICHQ3Dを踏まえた管理規定になる旨が記載されることになりました。(表2参照)
 日米EU三極の医薬品中の金属元素不純物分析は、重金属試験法による全量評価からICP-MS あるいはICP-AESを用いた個別評価へと移行しています。
 当社では、長年培ってきた環境や製品中の元素分析の技術を生かし、医薬品中の元素分析についてGMP対応試験、信頼性の基準対応試験で、高感度、高精度の測定を実施します。

測定対象の剤型を限定することなく、さまざまなサンプルや目的の元素に合わせて試験法構築から対応可能
PDE値の30%以下レベルでの高感度測定が可能
一斉分析による元素スクリーニング評価も可能

表1 ICHQ3D医薬品の元素不純物ガイドライン 概略

【適用範囲】

  • 新製剤(ICH Q6A,Q6Bの定義に従うもの)と既存の原薬を用いた新規製剤
  • 既存薬へのICH Q3Dの適用は、ICHにより当該ガイドラインの発行後、36か月までは期待されない。
  • 精製されたタンパク質及びポリペプチド(遺伝子組換え又は非組換え基原から製造されるタンパク質やポリペプチドを含む)、それらの誘導体及びそれらが構成成分である製品(例えば、コンジュゲート)を含有する製剤は、合成により製造されたポリペプチド、ポリヌクレオチド及びオリゴサッカライドを含有する製剤と同様に、本ガイドラインの適用範囲に含まれる。

【適用外】

  • 生薬、放射性医薬品、ワクチン、細胞の代謝産物、DNA を構成成分とする医薬品、アレルゲン抽出物、細胞、全血、細胞性血液成分、血漿、血漿分画製剤、血液製剤、全身循環を意図しない透析液及び薬理作用を目的として製剤に添加された元素
  • 遺伝子(遺伝子治療)、細胞(細胞療法)及び組織(組織工学)を基本とした製品
  • 開発段階で臨床試験に用いられる製剤

【その他】

  • 市販製剤の製造工程が開発される段階では、新製剤中に含まれる元素不純物を評価する際にはこのガイドラインの考え方が有用

【対象元素】

  • 元素不純物は、毒性及び天然存在比により分類されている。
    クラス1 Cd,Pb,As,Hg 毒性が強く、意図的脂溶はあまりなく、鉱物性添加剤などに由来されることが想定され、リスクアセスメント評価が重要だが、必ず試験することを求めていない
    クラス2A Co,V,Ni 医薬品中に存在する可能性が高く、すべての投与経路で評価が必要なもの
    クラス2B TI,Au,Pd,Ir,Os,
    Rh,Ru,Se,Ag,Pt
    天然に存在する可能性が低く、意図的に添加された場合にのみ評価が必要なもの
    クラス3 Li,Sb,Ba,Mo,Cu
    ,Sn,Cr
    比較的毒性が低く、PDE値が500μg/day以上で、経口剤では評価を必要とされないが、注射剤、吸入剤では評価が必要なもの
    その他 Al,B,Ca,Fe,K,
    Mg,Mn,Na,W,Zn
    ガイドライン実施時に評価を実施し、毒性が低いためPDE値を設定しなかった元素で、他のガイドラインや各局の規制、最終製品の品質を考慮するもの

表2 元素不純物のPDE値

元素 クラス PDE値(μg/day) 
 経口製剤 注射剤* 吸入剤 
Cd
Pb
As
Hg
1
1
1
1
5
5
15
30
2
5
15
3
3
5
2
1
Co
V
Ni
2A
2A
2A
50
100
200
5
10
20
3
1
5
Tl
Au
Pd
Ir
Os
Rh
Ru
Se
Ag
Pt
2B
2B
2B
2B
2B
2B
2B
2B
2B
2B
8
100
100
100
100
100
100
150
150
100
8
100
10
10
10
10
10
80
10
10
8
1
1
1
1
1
1
130
7
1
Li
Sb
Ba
Mo
Cu
Sn
Cr
3
3
3
3
3
3
3
550
1200
1400
3000
3000
6000
11000
250
90
700
1500
300
600
1100
25
20
300
10
30
60
3

20210323