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少量の血液を用いたダイオキシン類の分析

概要

 ダイオキシン類の人体への蓄積量(ばく露状況)調査については、血液中のダイオキシン類濃度を測ることで把握できますが、その多くは、廃棄物処理施設の作業員等が対象とされています。一方で、国等において一般住民等を対象とした大規模調査等も行われています。
 当社では、血液中のダイオキシン類等の残留性有機汚染物質(POPs)の分析を行っており、被験者の負担を軽減するため、少量の血液での分析が可能です。

廃棄物処理施設における従業員を対象とした調査

 廃棄物焼却施設の解体工事に伴う調査は「廃棄物焼却施設関連作業におけるダイオキシン類ばく露防止対策要綱(平成26 年1 月10 日基発0110第1号)」をもとに、解体工事における作業員や周辺地域への汚染リスクを回避し、工事を安全かつスムースに行うことを目的としています。
 この中では作業員へのばく露防止、健康管理の一環として必要に応じて血液中のダイオキシン類測定を行なうことが定められています。

  <廃棄物焼却施設解体工事に伴う調査> https://www.shimadzu-techno.co.jp/annai/env/k04.html

 

廃棄物焼却施設関連作業におけるダイオキシン類ばく露防止対策要綱

http://www.jaish.gr.jp/horei/hor1-42/hor1-42-9-1-2.html
 第3ばく露防止対策

(4)健康管理
 事故、保護具の破損等により当該労働者がダイオキシン類に著しく汚染され、又はこれを多量に吸入したおそれのある場合は、速やかに当該労働者に医師による診察又は処置を受けさせること。なお、この場合には、必要に応じて、当該労働者の血中ダイオキシン類濃度測定を行い、その結果を記録して30年間保存しておくこと。


 当社では、廃棄物処理施設作業残留性有機汚染物質POPsの分析を行っています。 ご要望によっては、対象者もしくは地域住民の皆様への説明会を含む、調査、立案から分析、対策等の総合的な対応も可能です。
 解体工事に伴う調査については、こちらもご参照下さい。

  <解体工事に伴うダイオキシン類の濃度測定> https://www.shimadzu-techno.co.jp/technical/env/kdxn.html

一般住民等を対象とした調査

 近年ダイオキシン類の人体への蓄積量(ばく露状況)調査の重要性が再認識され、環境省において平成14年度から「ダイオキシン類をはじめとする化学物質の人への蓄積量調査」、「人へのばく露調査」が実施されてきました。この調査では、日本人の体内中のダイオキシン類等の蓄積状況及び経年変化を把握すると共に、ダイオキシン類の摂取経路のうち、大きな割合を占めるとされる食事からのダイオキシン類の摂取量を把握することが大きな目的となっています。

 平成24年度 化学物質の人へのばく露モニタリング調査 結果報告書
  (環境省総合環境政策局 環境保健部環境安全課環境リスク評価室 平成25年9月)
  http://www.env.go.jp/chemi/report/h25-03/index.html [環境省HPへ]

 「日本人における化学物質のばく露量について」 環境省環境保健部環境リスク評価室作成パンフレット
  http://www.env.go.jp/chemi/dioxin/pamph/cd/index.html [環境省HPへ]

 また、平成23年からは、大規模な疫学調査「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」が開始されました。
 この調査では、日本中の10万組の子どもたちとその両親の参加の下、胎児期から13歳までの定期的な健康状態の確認により、環境要因と子どもたちの成長・発達影響の関係を明らかにするとされています。
 影響を与えるとされる環境要因として、残留性有機汚染物質POPs(ダイオキシン類、PCB、有機フッ素化合物、難燃剤等)、重金属(水銀、鉛、ヒ素、カドミウム等)、内分泌攪乱物質(ビスフェノールA等)、農薬、VOC(ベンゼン等)等のばく露調査が行われる予定です。当社もこの調査の一部に関わっています。

 「子どもの健康と環境に関する全国調査 エコチル調査」
  http://www.env.go.jp/chemi/ceh/2017.html [環境省HPへ]
 

少量血液法について

 血液中のダイオキシン類分析は、「血液中のダイオキシン類測定暫定マニュアル」厚生省生活衛生局生活化学安全対策室
(平成12年12月)に基づき実施されます。

<従来法>

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従来法:採血バッグ(1袋で約100mL)

 分析試料としての血液採取は100mL程度となっています。これは専門の医療機関での採血となり、医師による問診と合わせて一回あたり30分から一時間ほどかかります。

 先に述べた廃棄物焼却施設の解体工事に伴う調査等では、工事後のばく露影響評価、健康管理の点で工事が完了する度、 100mLの採血が実施されることもあります。工事現場を次々と移動される現場担当者の方々の中には年に何度も採血をしなくてはならないこともあり、 被験者への負担は決して小さくありません。
 また、エコチル調査では子どもも被験者となることから採血量を減らすことは緊急の課題となっています。

 こうした背景から当社では、被験者の負担を軽減するため、少量の血液でダイオキシン類の分析を行っています。

<少量血液法>

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少量血液法:採取キット(10mLの採血管1~3本)

 当社の分析法では、健康診断等で採血する場合と同程度の血液量(10mLの採血菅1~3本)で分析が可能です (試験に供する量は10mL採血管1本、約10gです。ただし保管など予備試料が必要な場合は採血量は約20~30mLです)。
  また、この量で、ダイオキシン類のみならず、残留性有機汚染物質POPs(ディルドリン、HCH等のPOPs農薬類、PCB、 有機フッ素化合物、難燃剤等)の分析対応も可能です。

クロマトグラムの例

 図は、実際の試料を10mL試験管1本、約10gの試料量で分析した際の2,3,7,8-TeCDDのクロマトグラム例です。
 実試料のピークは脂肪重あたりの定量下限値と同等の0.45pg/g-fatでありながら、良好なS/Nを示していることがわかります。

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図 少量血液分析におけるクロマトグラムの一例

 

特徴・用途

当社の精度管理については、ダイオキシン類の分析に関して、平成14年度に「ISO/IEC 17025」を認証取得、特定計量証明事業者認定制度(MLAP) で認定特定計量証明事業者として認定され、また、外部精度管理として、積極的に国内外のダイオキシン類やPOPs等の技能試験・ クロスチェックに継続して参加し、ほぼ中央値を維持した満足な成績を収めています。
生体試料(血液・臍帯等)を取り扱う際は、生命倫理や提供者の負荷軽減も含めた配慮が必要になります。当社は豊富な経験により、これらについても適正な配慮を行っています。

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