概要
錠剤に付着した黒色異物の分析
2011年02月04日更新
概要
異物解析において有機物の定性分析にFTIRは大変有用な分析方法ですが、黒色異物など試料形態によっては解析が困難な場合があります。
ラマン分光法は、単色光であるレーザー光を物質に照射し、散乱された光の中に入射された光の波長と異なる波長の光が含まれる現象を利用した分析手法です。散乱された光と入射光のエネルギー差は物質内の分子や結晶の振動準位や回転準位、もしくは電子準位のエネルギーに対応しているため、物質の同定などに用いられています。
カーボンブラック、グラファイト、ダイアモンドなどよく知られたものを始め、カーボンナノチューブ、フラーレン、DLCなどの炭素材料の構造分析にラマン分光法が有効です。
FTIRとラマン分光光度計を用いた黒色異物の解析例を紹介します。
分析・試験事例
■外観観察
光学顕微鏡による観察の結果、錠剤の表面が溶けている部分に光沢を帯びた焦げたものが付着、一部埋没しているように見えました。
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■FTIRによる定性分析
この黒色異物を採取し、FTIRによる測定を行いました。その結果、下図の赤外吸収スペクトルに示すように、錠剤の賦形剤成分であるラクトース(乳糖)の熱分解物と類似の吸収が見られました。
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■ラマン分光スペクトル
黒色異物について、ラマン分光光度計による測定を行いました。
下図に示すように、黒色異物のラマンスペクトルからは炭素材料に特有の二つのピーク(1363cm-1および1592cm-1)が確認されました。
以上の分析から錠剤表面の黒色異物は、賦形剤が炭化したものと推測されました。
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