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水銀圧入法によるリチウムイオン二次電池セパレータの気孔率測定

2015年08月25日更新

概要

 水銀圧入法は、固体表面の細孔もしくは間隙に水銀を圧入し、その時の圧力と圧入量から細孔分布を求める方法です。 この方法では、細孔分布のほかに、空セルの容積や試料の周りを満たした水銀量から、二次的に気孔率を得ることができます。
 しかし、試料体積が小さい場合や、細孔分布に試料間の空隙や圧縮等の疑似細孔が含まれる場合は、予想される気孔率と異なることがあります。
 リチウムイオン二次電池セパレータについて水銀圧入法で気孔率を測定し、外寸体積と真密度(ヘリウムガス置換法)から計算した気孔率を比較しました。

試料

 リチウムイオン二次電池セパレータ(厚さ20 μm)

分析・試験方法

図1. 水銀圧入法による細孔分布

図1. 水銀圧入法による細孔分布

■ヘリウムガス置換法による真密度測定

 試料を適当な大きさに裁断し、セルに採取しました。
 5回繰り返し測定を行い、その平均値を真密度としました。

■水銀圧入法による細孔分布測定

 試料を適当な大きさに裁断し、セルに採取し、細孔直径0.003~180μmの範囲で測定を行いました(n=3)

分析・試験結果

 外寸体積と真密度(ヘリウムガス置換法)から計算した気孔率は35%でした(表1)。
 図1に水銀圧入法n=3測定の重ね描きを示します。
 細孔直径約0.01~2μmの範囲が試料に存在する細孔分布であり、それ以外の分布は、試料間の空隙および圧縮による疑似細孔と推測します。

 表2に測定全範囲の気孔率を示します。
 この値は、試料間の空隙、圧縮を含みますので、試料の外寸と真密度から計算した気孔率と大きく異なります。

 表3に細孔直径2μmまで水銀が圧入した時の体積を、試料かさ体積とし、0.01~2μmを細孔容積として、気孔率を手動計算した結果を示します。
 この結果は、外寸体積と真密度から計算した結果とよく一致しました。また、試料体積の小さい薄膜試料であっても比較的良好な再現性を得ることができました。

 このように、得られた細孔分布から特定の範囲を抽出し、手動計算を行うことで、より適正な気孔率が得られます。

表1 外寸と真密度から計算した気孔率

外寸での密度 (g/cm3 真密度 (g/cm3 気孔率 (%)
0.588 0.911 35

表2 測定全範囲の気孔率

測定 気孔率 (%)
1回目 48
2回目 46
3回目 49

表3 特定範囲の気孔率計算結果

測定 細孔直径0.01~2μm
気孔率 (%)
1回目 36
2回目 35
3回目 38

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