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第一話 ULの起源はシカゴ万国博覧会!?

2014年6月16日更新 | コラム | 合弁会社のパートナー“UL”ってどんな会社? |

コラム 合弁会社のパートナー“UL”ってどんな会社?

第一話 ULの起源はシカゴ万国博覧会!?

1894年3月24日、ウィリアム・ヘンリー・メリル(William Henry Merrill)という25才の電気技術者と2人の仲間が、彼らにとって初めてのお客様に対し試験を行い、彼らにとって最初となるレポートを発行しました。

 彼らが試験を行った場所は、シカゴの消防ステーションの上階にある小さな部屋、製品は不燃性絶縁材でした。
それは、入場者数が米国の人口の約半数に達したと言われるシカゴ万国博覧会が終了してから半年も経っていない時の事でした。

  • 最初の試験レポート

    最初の試験レポート

  • 初期の試験設備

    初期の試験設備

 電気実用化時代の幕開けを飾ったと言われるこの博覧会の会場には、電車や電気ボートが走り、動く歩道までありました。
しかしその半面、エジソンの研究所から運び出したばかりと言っても過言ではない白熱灯のイルミネーションや、エジソンも当時反対していた交流方式の照明が多用され、会場では建設中から火事が頻発していました。

 状況を憂慮したシカゴ当局は、ボストンから一人の電気技術者を招き、火災の原因を調査するよう依頼しました。
それがウィリアム・ヘンリー・メリルでした。

 メリルは、この博覧会での経験から、電気の安全な活用に貢献したいと決意。
ボストンには帰らずに、会場からほど近い場所に試験所を開設し、前述した初試験を行うに至ったのでした。

 そんなメリルの試験所は評判を呼び、スイッチ、ブレーカー、ヒューズ、コードなど様々な電気製品/部品の試験依頼が相次ぎました。
また、当時普及していたアセチレンランプも頻繁に持ち込まれていました。
ご存知の通り、アセチレンは大変不安定な物質です。爆発したら建物の屋根を吹き飛ばしかねないアセチレン発生器なども試験していたようですが、幸い、事故発生の記録はありません。

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    電球の試験風景

    電球の試験風景

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    メリル(真ん中)と創立メンバー

    メリル(真ん中)と創立メンバー

 その後、保険協会からの支援などもあり、取り扱い製品の数も種類も電気製品の枠を超えて増加。
メリルの試験所は拡大の一途をたどり、1901年には、Underwriters Laboratories Inc.という名称で法人化されました。
「UL」はその頭文字です。
そして1903年には、試験の判断基準の制定が必要と判断し、初のUL規格を発行するなど、今のULにつながる土台が形成されていきました。

 この頃からメリルが固く信じていたこと、それが、「試験により知り、事実を記す」ということです。
つまり、防火ドアの試験であれば、実際に製品を火にさらして、放水による衝撃も与える。
スイッチであれば実際に製品を過負荷状態に置く。
メリルはこのように実際の製品が置かれる可能性のある状況と同様の過酷な状況を作り出す試験を行って初めてその製品の安全性を確かめることができると考えました。

 そのため、1929年にはシカゴ郊外の人里離れた場所に試験所を建設し、金庫の爆破試験用にニトログリセリンまで手作りしていました!

 今ではもちろんこのような危険なことは行われていませんし、危険を伴う試験も十分な注意の下、制御された状態で行われていますが、ULのサービスの基本は現在も変わらず、製品の試験を行い、その結果を記録し、製品を評価/認証するということにあります。

 もう1つ、メリルが信じていたことに、「火に使われるのではなく、火を制すること」というのがあります。
ULが創立された時代は、不適切な配線などによる火事が頻発していた時代であったからですが、メリルにとって「火」は火災だけでなく、感電、傷害、盗難など生活に潜むあらゆる危険性を意味していました。
生命や財産を脅かす危険から人々を守りたい、人々のために安全な生活/職場環境を作りたい、それは、メリルが心底望んだことであり、彼の仕事を貫いた思いでした。
そしてそれは現在もULの唯一のミッションとして引き継がれています。

 メリルが初めて試験を行って以来、「より安全な世界を目指して(Working for a safer world)」活動してきたULは、今年、創立120周年を迎えました。
この120年の間に評価した製品は20,000品目を超え、40カ国に10,000名の従業員を擁する世界有数の第三者安全科学機関へと成長しました。

 次回は、このミッションに導かれたULが展開するサービスについてご紹介いたします。