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表面・形態観察

概要

 表面の物性が広く工業製品に利用されている事は良く知られていますが、その物質表面の状態を解析する事は製品の研究開発のみならず、品質管理や故障解析においても重要な手段となっています。
 表面分析法には種々の手法がありますが、試料に励起源となるエネルギーを照射して、励起される事で試料から発生する各種信号をもとに解析を行います。その励起源には電子線・X線・イオン・レーザーなどが用いられます。また、物質表面の形態を拡大像で観察する顕微鏡としての機能も各種利用されており、スペクトルのみで解析する分析法と異なり、イメージングデータによって視覚的に表面状態を把握できるのも表面分析の特長と言えます。
 ここでは、表面分析の代表的な手法である電子線マイクロアナリシス法およびX線光電子分光法、ならびに観察手法として走査型プローブ顕微鏡、走査型共焦点レーザー顕微鏡、ナノサーチ顕微鏡の各分析についてご紹介します。

分析・試験装置

電子線マイクロアナライザー〔EPMA〕

試料(固体)の微小領域に電子線を照射して、試料中から発生する電子線によりSEM観察を行います。また、特性X線により試料の構成元素(定性分析)や含有量(定量分析)、試料内での分布(マッピング分析、線分析)などを調べることができます。

〔測定対象〕 金属、鉄鋼、鉱物、半導体、ガラス、セラミックス、高分子、生物、食品などの固体

 SEM観察

 
二次電子像や反射電子像のSEM観察を行ないます

 元素組成分析

 定性分析(全元素定性、半定量含む) 

B~Uまでの元素同定による定性半定量分析を行います。

定量分析

標準試料と未知試料を測定し、精密な定量分析を行います。

状態分析

特定元素の化学結合状態を解析します。

面分析(カラーマッピング)、線分析

拡散や偏析など濃度勾配による元素分布を線方向および面方向(二次元像)で得られます。

X線光電子分光分析装置〔XPS〕

 X線光電子分光法(XPS)はESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも呼ばれており、物質表面から約10nmまでの深さに存在する元素の定性、定量および化学結合状態の解析を行う手法です。

ESCA-3400HSE(島津製作所)

 使用機器

装置名 ESCA-3400HSE(島津製作所)
定性可能元素 Li~U
定量下限 0.1~1atom%
試料サイズ φ8mm、厚み5mm
分析対象 固体全般(金属、無機、有機材料)
X線源 Mg Kα非単色化線源
イオン銃 カウフマン型、Ar単原子イオン、加速電圧:200~800V

 

 元素定性

特性X線を試料に照射した際に表面の元素から放出される光電子のエネルギーから元素の種類を特定することが可能です。

 元素定量

試料に含まれる各元素のナロースペクトルを取得し、そのピーク面積から定量値を計算することが可能です。

 状態分析

光電子ピークのエネルギーシフトから化学結合状態に関する情報を得ることができます。

 深さ方向分析

Ar単原子イオンを試料に照射して表面をスパッタエッチングすることで深さ方向の分析も可能です。
 

事例1 PET樹脂構成元素の状態分析

PETの構造式

PETの構造式

PET樹脂構成元素の状態分析 グラフ

事例2 多層膜Si基板の深さ方向分析

多層膜Si基板の深さ方向分析

走査型プローブ顕微鏡〔SPM〕

試料表面を微小な探針で走査して形状や物理特性、電気特性をナノスケールで調べることができます。

〔測定対象〕 金属、鉄鋼、鉱物、半導体、ガラス、セラミックス、高分子、生物、食品などの固体

一般分析

大気中で試料表面形状の観察を行います

試験項目 表面形状観察

● 特殊観察・測定

 大気中で表面形状観察と同視野にて物理特性、電気特性の測定を行います

試験項目 位相・水平力・フォースモジュレーション・電流・表面電位・磁気力 I/V・フォースカーブ・フォースマッピング

 解析

 測定したデータに対して必要な解析を行います

解析項目     断面形状観察・線粗さ解析・形態解析・粒子解析

 測定雰囲気

 一般分析・特殊観察・特殊測定を雰囲気制御下にて行います

試験項目 液中(水)、(水以外)、(液温コントロール)
加温(100℃まで)、(100℃~300℃まで)
試料冷却(-20℃)
雰囲気(温度)~50℃まで
雰囲気(湿度)20%~80%
ガス置換(N2、Ar)

走査型共焦点レーザー顕微鏡〔OLS〕

波長405nmレーザーを照射し、大気中で倍率108~17280倍で試料の形状を観察します。

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共焦点レーザー顕微鏡

光学顕微鏡よりも高倍率、高分解能
  最大17,000倍以上の観察倍率 0.12μm線幅を明瞭に分解
電子顕微鏡よりも手軽
  資料は大気中で大型試料もOK
高さ・深さの測定も可能
  輝度像に加え三次元データが得られる
精密な表面粗さ測定が可能
  柔らかい試料・粘性のある試料に対応、触針式粗さ計との互換性あり
透明膜を通しての非破壊観察が可能
測定対象 金属・樹脂・鉱物など
試験項目 高さ像・輝度像・カラー像
解析項目 プロファイル・線粗さ・面粗さ・面積及び体積・段差・幾何・粒子解析

ナノサーチ顕微鏡〔SFT〕
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ナノサーチ顕微鏡

OLS観察とSPM観察が一台でできる顕微鏡です。

数十倍から百万倍の超ワイド領域
ミリからナノまでの観察・測定
光学顕微鏡、LSM、SPMの切り替え自在
多彩な観察方法
  大気中、三次元観察
明視野(カラー)、簡易偏向、微分干渉、レーザ、レーザ微分干渉
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ウエハ上異物観察例(倍率:200倍~10万倍)

卓上走査型電子顕微鏡〔SEM〕
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卓上走査型電子顕微鏡(SEM)

電子線を試料上で走査し、反射電子を検出して試料の組成像を得ることができます。
繊維、毛髪等の表面構造から、識別が可能。
また、深い焦点深度での観察を活かして複雑な構造を撮影できます。

光学顕微鏡よりさらに高い倍率、深い焦点深度で観察が可能
付属のEDS(エネルギー分散型X線分析装置)により、指定した領域の元素分析(対象元素:B~U)も可能
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セルロース系繊維(麻)

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セルロース系繊維(綿)

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獣毛(フェレット)の小皮紋理    

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毛髪の小皮紋理

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毛髪の断面

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セルロース系繊維(麻)

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セルロース系繊維(綿)

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獣毛(フェレット)の小皮紋理    

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毛髪の小皮紋理

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毛髪の断面

試料室を低真空モードにできるため、表面処理を行わず、そのまま観察・測定が可能

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アワビの断面(積層構造)

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虫の顔

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スポンジのカビ(菌糸)

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アワビの断面(積層構造)

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虫の顔

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スポンジのカビ(菌糸)

 試料状態によって、固定、脱脂、洗浄などの前処理や 導電性を持たせる表面処理が必要な場合があります

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