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残留溶媒試験

概要

 リスクアセスメントの観点からクラス1~3及びその他の溶媒として分類された残留溶媒試験について、当社では、GC、HS-GCあるいは乾燥減量により原薬、添加剤又は製剤の残留溶媒を、信頼性基準下/GMP準拠にて測定します。 また、残留溶媒含量を評価するための適切な手法を有していない場合は、分析手法開発、分析法バリデーション試験も実施可能です。

分析・試験項目

<クラス1の溶媒>

 医薬品製造において使用を避けるべき溶媒

溶媒 濃度限度値 (ppm) 理由
ベンゼン 2 発がん性
四塩化炭素 4 毒性及び環境への有害性
1,2-ジクロロエタン 5 毒性
1,1-ジクロロエテン 8 毒性
1,1,1-トリクロロエタン 1500 環境への有害性

ヒトにおける発がん性が知られている、あるいは強く疑われる溶媒及び環境に有害な影響を及ぼす溶媒
※クラス1の溶媒を同定し、定量する必要があります。

<クラス2の溶媒>

 医薬品中の残留量を規制すべき溶媒

溶媒 PDE (mg/day) 濃度限度値 (ppm) 溶媒 PDE (mg/day) 濃度限度値 (ppm)
アセトニトリル 4.1 410 ヘキサン 2.9 290
クロロベンゼン 3.6 360 メタノール 30.0 3000
クロロホルム 0.6 60 2-メトキシエタノール 0.5 50
クメン 0.7 70 メチルブチルケトン 0.5 50
シクロヘキサン 38.8 3880 メチルシクロヘキサン 11.8 1180
1,2-ジクロロエテン 18.7 1870 メチルイソブチルケトン 45 4500
ジクロロメタン 6.0 600 N-メチルピロリドン 5.3 530
1,2-ジメトキシエタン 1.0 100 ニトロメタン 0.5 50
N,N-ジメチルアセトアミド 10.9 1090 ピリジン 2.0 200
N,N-ジメチルホルムアミド 8.8 880 スルホラン 1.6 160
1,4-ジオキサン 3.8 380 テトラヒドロフラン 7.2 720
2-エトキシエタノール 1.6 160 テトラリン 1.0 100
エチレングリコール 6.2 620 トルエン 8.9 890
ホルムアミド 2.2 220 1,1,2-トリクロロエテン 0.8 80
      キシレン* 21.7 2170

*通常、60%のm-キシレン、14%のp-キシレン、9%のo-キシレン及び17%のエチルベンゼンの混合物

遺伝毒性は示さないが動物実験で発がん性を示した溶媒、神経毒性や催奇形性等発がん性以外の不可逆的な毒性を示した溶媒及びその他の重大ではあるが可逆的な毒性が疑われる溶媒
※クラス2の溶媒はオプション1の限度値未満であることが必要です。
(原薬又は医薬品添加物の供給業者は、残留しているクラス2の溶媒の名称を示す必要があります。)
※限度値を越えている場合は、それらの溶媒を同定・定量する必要があります。

オプション1

1日に服用される製剤の量を10 gと仮定し算出した医薬品中の濃度限度値
濃度限度値(ppm)=1000×PDE(mg/day)/服用量(g/day)
PDE(mg/day):医薬品中に残留する溶媒の1日当たりに摂取が許容される最大量
1日服用量が不明あるいは一定しない場合にオプション1が適用される。

オプション2

1日に服用される製剤量が10 gを超える場合、オプション2が適用される。
製剤の各成分中に存在する残留溶媒の量を加算し、1日当たり摂取する溶媒量の合計は、PDE値以下でなければならない。

 

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図1 GCクロマトグラム例
(ジクロロメタン:600 ppm、ヘキサン:300 ppm、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトン、2-プロパノール、酢酸エチルは各1000 ppm)

<クラス3の溶媒>

 GMP又はその他の品質基準により規制されるべき溶媒

酢酸 酢酸エチル メチルエチルケトン
アセトン ジエチルエーテル 2-メチル-1-プロパノール
アニソール ギ酸エチル ペンタン
1-ブタノール ギ酸 1-ペンタノール
2-ブタノール ヘプタン 1-プロパノール
酢酸 n-ブチル 酢酸イソブチル 2-プロパノール
t-ブチルメチルエーテル 酢酸イソプロピル 酢酸プロピル
ジメチルスルホキシド 酢酸メチル トリエチルアミン
エタノール 3-メチル-1-ブタノール  

クラス3には、通常医薬品中に含まれるレベルでヒトの健康に対して有害な影響を及ぼすことが
知られている溶媒は含まれず、残留量がPDE値:50mg/day以下であれば、その妥当性について
理由を示す必要はありません。

分析・試験方法

各試験内容(第18改正日本薬局方 <2.46>残留溶媒)

<クラス1およびクラス2※>

 GMP又はその他の品質基準により規制されるべき溶媒

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h10_ms7

ヘッドスペース
ガスクロマトグラフ装置
(GMP対応機器)

 

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h10_ms7

ヘッドスペース
ガスクロマトグラフ装置
(GMP対応機器)

 

※クラス2の溶媒のうち、2-エトキシエタノール、エチレングリコール、ホルムアミド、2-メトキシエタノール、 N-メチルピロリドン及びスルホランはヘッドスペース法では感度が低く分析が困難である為、 その他のバリデートされた方法で測定する必要がある。また、本試験法で溶媒として使用するN,N-ジメチルアセトアミド、 N,N-ジメチルホルムアミドは上記の6種の溶媒と共に、残留溶媒クラス2A標準品、残留溶媒クラス2B標準品、残留溶媒クラス2C標準品のいずれにも含まれていない為、 必要に応じて適切なバリデートされた方法で分析する必要がある。(第18改正日本薬局方 <2.46>残留溶媒より抜粋)

<クラス3およびその他の溶媒>

クラス3の溶媒のみが残留している場合
 → 乾燥減量試験の実施(GMP対応可能)
  0.5%以下である事を確認
クラス3の溶媒のみが残留している場合は、 乾燥減量試験法<2.41>を用いる事ができる。 ただし、乾燥減量値が0.5%を超える場合や、その他の溶媒が共存する場合には、本試験法又は他の適切な方法に従って同定し、 必要な場合には定量する(第18改正日本薬局方 残留溶媒より抜粋)

乾燥減量実施不可もしくは不適合等の場合
    GC/MSによるスクリーニング試験
 → クラス3の溶媒有無の確認

 

    対象成分の定量試験(GC・GC/MS)
 → 定量試験法の検討・最適化
  バリデーション試験の実施
  実試料測定

信頼性基準下での試験実施も可能です

ヘッドスペース    ガスクロマトグラフ質量分析装置

ヘッドスペース
ガスクロマトグラフ質量分析装置

<クラス3およびその他の溶媒>

クラス3の溶媒のみが残留している場合
 → 乾燥減量試験の実施(GMP対応可能)
  0.5%以下である事を確認

乾燥減量実施不可もしくは不適合等の場合
    GC/MSによるスクリーニング試験
 → クラス3の溶媒有無の確認

 

    対象成分の定量試験(GC・GC/MS)
 → 定量試験法の検討・最適化
  バリデーション試験の実施
  実試料測定

信頼性基準下での試験実施も可能です

クラス3の溶媒のみが残留している場合は、 乾燥減量試験法<2.41>を用いる事ができる。 ただし、乾燥減量値が0.5%を超える場合や、その他の溶媒が共存する場合には、本試験法又は他の適切な方法に従って同定し、 必要な場合には定量する(JP18 2.46残留溶媒より抜粋)
ヘッドスペース    ガスクロマトグラフ質量分析装置

ヘッドスペース
ガスクロマトグラフ質量分析装置

20180711